第20話 北部の洞窟へ ~ソフィアサイド~
「いててて……」
頭がガンガンするぞ。
風の水晶を作った翌日に北の洞窟へ向かっているのじゃが……
どうにもこうにも頭が痛くてたまらん。
「そりゃ、あれだけ酒を飲むんだから」
「翌日に二日酔いにもなるよ」
分かり切ったという顔であやつが話しかけてきた。
「いいや、これぐらいの量、前はなんともなかったぞ」
「それだけ年をとったってこと……」
なんと失礼な物言いじゃ。
ワシを何だと思っている。
「おぬし、その言い方はなんじゃー!」
「ワシは年などとっておらぬぞ」
「ごめんごめん」
「長いこと封印されていた影響でもあるんじゃない?」
そうじゃ、そうじゃとも。
ワシがこんなんになるのは、それ以外考えられぬわ。
「フーインってなんのこと?」
そういえば小娘の娘が一緒におったんだったわ。
「なっ……何でもないよ、フォルトナ」
「それより北の洞窟はあとどのくらいかかる?」
あやつ、うまくごまかして話をそらしおった。
これぐらい剣も上手くなってくるといいのじゃがのぅ。
「うーん」
「まだまだ先かな」
「それに、まださっき村を出たばかりじゃん」
「そう早くは着かないよ」
「それはそうだね……」
「は……はははは……」
話は上手くそらせたけど、詰めが甘いのぅ。
振った話がそれじゃ、話も続かんじゃろ。
「小娘の娘、この騒ぎが起きてから、北の洞窟には行ったのか?」
「だから、小娘の娘って言い方は止めてよ」
「ボクはフォルトナという名前があるんだから」
「小娘の子供だから、小娘の娘と言って何が悪いんじゃ」
「間違いじゃないけどさ」
「人を呼ぶときは名前があるんだから、名前を呼ぼうよ」
「ね、お・つ・き・の・ひ・と」
小娘の娘はわざとらしい笑顔をこちらに向けてきた。
腹立たしい。
「お前だって名前で呼んでいないぞ」
「だってわざとだもーん」
「こっちも名前で呼ばれるまでは意地でも呼んであげない」
雰囲気が悪くなってきたのを感じてか、あやつが割り込んでくる。
「まぁ、まぁ」
「お互い意地にならずにさ」
「呼び方なんてあまり気にせず仲良くいこうよ」
ワシは仲が良い悪いはホントどうでもいいことじゃ。
ワシはワシの呼びたいように呼ぶだけじゃ。
「おぬしもどうでもいいことに入りこまんでもいいわ」
「それよりかとっとと歩け」
「時間がもったいないぞ」
「はいはい」
あやつたちの歩くスピードが上がり始める。
普段なら、歩くのも飛ぶのも面倒なので、剣の中で休んでおったが、今回は小娘の娘がおるからのぅ。
剣の中で休むわけにもいかず、実体化してついていくしかないのじゃ。
それもそれで面倒で、余計に頭が痛くなる。
「んーーーー」
「それにしても頭、頭が痛いのじゃ」
「どうにかしてくれ」
頭が痛くて注意力が散漫になっていく。
「そろそろ休ませてくれんか?」
「おぬしも、小娘の娘も疲れたじゃろ」
「なっ、なっ」
「まだ村を出てそんなに出ていないけど、ゾルダがそれでは仕方ない」
「フォルトナ、少し休もうか」
「えーーーーっ」
「ボクは平気だよ」
「先を急ごうよ」
「おつきの人は置いてさ」
まだ根に持っているのか。
心が狭い奴じゃのぅ……
「まぁ、まぁ……」
「ゾルダは大切な相棒だし、しっかり回復してから、そこからスピードアップすればいいよ」
「うーん」
「仕方ないなぁ」
おっ、さすがじゃ、おぬし。
小娘の娘を言いくるめてくれたわ。
おかげで休むことが出来た。
ここで休んでおれば少しは回復するじゃろ。
「そういえば、さっきの話の続きだけど」
「フォルトナは北の洞窟には行ったの?」
「こうなる前には行ったことあるけど」
「魔物が出てからは、まだ行ってない」
「さすがに、これだけ強い気配がするから、一人じゃ行けないよ」
「じゃ、どんな魔物がいるかはわからないね」
「そうだね~」
「でも、サーペントもグリズリーも北の洞窟から出てきているのは見てるよ」
やはりそうか。
となると……
あいつが洞窟におるのが有力じゃな。
名前が思い出せんがのぅ。
横になりながら、あやつと小娘の娘の話を確認していく。
「そうか……」
「北の洞窟にはやっぱり何かいるってことだね」
「かもしれないねー」
「洞窟の入り口近くでも、ただものではない感じがしたしね」
「近づく時には気をつけないと」
「あと、中はどうなっている?」
「基本的には一本道だよ」
「分かれていてもすぐ行き止まりのところしかないし」
「気づかれずに入ってくのは難しいかもしれないね」
「へぇ……」
「どう進入していけないいかな……」
考えるほど方法があるわけじゃないぞ。
もう真っ向勝負でいいじゃろ。
「おぬし、何を悩んでおる」
「ここは正面突破しかないぞ」
「ゾルダはそれ以外考えないだろ」
「なんだ、その言い方は……」
「何も考えてないような言い方じゃ」
「そっ……そんなことは……」
「考えていないわけじゃないぞ」
「奇襲も難しいなら、正面突破しかないじゃろ」
「まぁ、確かにワシであれば、奇襲出来る状態じゃろうが、関係ないがのぅ」
「どっちにしたって同じ結論だろ、ゾルダは」
「まぁ、それしかないのかもしれないけど、体力の消耗は避けたい」
「道中、出来るだけ俺も強くなって、ゾルダの力は最後に残せるようにしていくしかない」
「そうじゃな」
「道中は任せるぞ」
「最後にはこの頭が痛いのも治っておるはずじゃからのぅ」
「はいはい」
戦闘の事を考え始めたせいか、気持ちの高ぶりもあり、頭痛も少し和らいできた。
この調子なら、洞窟におるなんとかもあっという間に倒せるじゃろ。
ワシとおぬしのやり取りを不思議そうな顔をして見ていた小娘の娘が話し出した。
「なぁ、アグリ」
「この、ゾルダってそんなに強いのか」
「昨日の夜を見ていても、単に酒好きのねーちゃんにしか見えないよ」
小娘の娘は何をほざいておる。
ワシの強さを目の当たりにしていないから、わからんだけじゃ。
ちょっとカチンときたので、話に割り込もうとしたその時に、アグリが応え始めた。
「昨日の夜だけ見ていればね」
「でも、村までの道中も、北西部の森も、北東部の丘も」
「ゾルダ無しではこんなに簡単に成果はだせなかったよ」
「そういう意味では、かなり強いと思うよ」
「ふーん」
「そうなんだね」
おぬしもわかっておるのぅ。
さすがワシを選んだ男じゃ。
褒めてつかわす。
ただ今はもう少しだけ休ませてくれ。
洞窟へ入ったら本気出すからのぅ。
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