百人のヒロインがいる乙女ゲーム世界に転生してしまった

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 俺は思った。

 目の前の美女づくめの景色を。


 あっちにもこっちにも美女な景色を見て。


 ーーこのゲーム世界、ヒロイン多すぎ!


 






 俺はどうやら乙女ゲームの世界に転生してしまったらしい。

 けれどそこは。

 普通の乙女ゲームのとこじゃなかった。


 なぜかヒロインが百人くらいいる。

 そんなとんでもゲームの世界だった。


 びっくりしたさ。

 誰がそんなゲームつくったんだよって。


 前世で話を聞いた時は、眉唾ものだったけど。


 男友達と共に「あるわけないって」なんて笑ってたけど。


 本当に実在してたんだな。


 えーと。


 なんだっけ。


 タイトル。


「サウザンド・ヒロイン」とかいう名前だっけ。


 まんまじゃねーか。


 そんなツッコミどころの多い世界だけど、転生してしまったからには生きていかなければならない。


 でも、俺モブだから、ちゃんと生きていけるんかな?








 結論。


 無理っぽそう。


 あらためて、周囲の状況を確認した俺はそう思った。


 だって。


 だってさ。


 ヒロインが百人だよ。


 ヒロインって大抵、こう。


 なんかすごい才能持ってたり、人徳があったり、ものすごく特別な感じがしたりするじゃん。


 そんなのが周りに百人いるんだよ。


 俺の存在埋もれちゃうよ。


 俺、必要?


 って毎回なるもん。








 乙女ゲームの舞台、三千人くらいの学生がかよっている超マンモス魔法学校。


 俺はそこに通ってるんだけどさ。


 ことあるごとに、俺必要?


 ってなるよ。


 俺じゃなくても「私、必要?」みたいな感じになるよ。


 だって。


 学園祭とか青春イベントが起きても、ヒロインズと、あと攻略対象達が全部やっちゃうし。


 文化祭とかも、ヒロインズ以下省略が全部活躍しちゃうし。


 体育祭も、以下省略だし。


 工作が得意な重要キャラ達が、トンカンやってれれば屋台とか出店がすぐできちゃう。


 見た目が麗しい重要キャラ達が、派手な舞台に立てばそれだけで人目を引いちゃう。


 運動神経抜群な重要キャラ達が、トラックを走ればワールド〇ップ並の惨状になっちゃう。


 モブたちは毎回裏方よ!


 こういうのって、モブが秘められた才能をみつけて、喜ぶ!


 みたいなのが青春のセオリーじゃん!


 もしくは、地味だけど地道に頑張って、地味なりに何とか成果を上げてイベントを盛り上げる!


 みたいなのが青春の1ページじゃん!


 それなのに。


 それなのに!


 まったく気配がねぇ!


 ねぇ。俺必要?


 もう全部あいつらだけでいいんじゃないかな。


 俺らみたいなのいなくても、あいつらだけで、全部こなせるじゃん。


 特に女性に色々出番持っていかれる男子って、ものすごくあれというか。


 肩身が狭いとうか。


 情けなくなるよね!


 張り合えるのは、攻略対象くらいだろ!








 あとは、こう絵面がね。


 残念なんよ。


 俺の目がね。


 風景がね。


 まぶしい。


 美形美女ばっかりだから。


 なんていうかこう。


 テレビCMとか広告でしかお目にかかれない光景に満ち溢れてるっていうか。


 だからこそ、なんていうの?


 現実味がないんだよね。


 体育の授業で、プールに入っている美女達。


 確かに美しい。


 図書館で静かに読書する美女。


 確かに神聖。


 トラックを一生懸命走る美女。


 確かに愛らしい。


 目の保養になるんだけどさ、綺麗なものがたくさんありすぎると現実味がなくなるっていうか。


 豪華フルコースに憧れていたけど、いざそれが日常的にお出しされると、慣れちゃって味の良さが分からなくなる感じ。


 一周回って、損してる気分になるよね。






 俺の親族とかにも、何人かヒロインがいるけど。


 とても可愛らしいんだけど。


「お兄ちゃん!」


 とか


「ぼうや」


 とか


「あにき!」


 とか言ってくれる。


 年下ヒロインとか、年上ヒロインとか、やんちゃっこヒロインとかいるけど。


 慣れちゃってるから、な。


 美人なお姉さんがいたら自慢するんだ!


 みたいな夢が前世からひそかにあったけど、慣れちゃってるし、周りも美人ばっかりだからな。


 一周回って、色々残念な事に。


 はぁ。


 一体誰がこんな乙女ゲームをつくったんだろうな。


 顔見れる機会があったら、ぜったい問い詰めちゃる。







 私、神。


 偉い人。


 でも。


 とっても暇。


 だから、色んな世界をのぞいて、面白そうだな~と思った事を片っ端からやってみる事にしたの。


 その中でも、乙女ゲームっていうものが面白そうだったから。


 自分でも作ってみたのよ。


 それで、こっそりとある世界で、神様的なパワーを使って、売り出してみたんだけど。


 まったく売れなかったわぁ!


 一体どういう事よ。


 それどころか、ネットでクソみたいなレビューを書かれまくる始末。


「わろす」


「草」


「百人とかあたおか」


「製作者の狂気を感じる」


 ですって。


 何よ。きいいいい!


 乙女ゲームってかわいいヒロインがいればいいんじゃないの!?


 だから、色々たくさん詰め込んでみたのに!


 こうなったら、もっといいゲームつくって、ぎゃふんと言わせてやるんだから。


 そのためには研究が必要よ。


 誰か手ごろな人間を、あの世界に転生させて、反応を見てみましょ!


 あっ、ちょうどいい所にモブっぽい男がいるわ。


 利用しちゃいましょ!


 これからじっくり観察して、何がおかしいのか見極めなくちゃね。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

百人のヒロインがいる乙女ゲーム世界に転生してしまった 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ