第15話 初めての朝とご飯
「誰だ、お前はーー!」
「す、すいませーーん!」
「いいからさっさと布団から降りろ!」
「お、降りられないんです!」
「降りられないわけないだろ!布団がお前を掴んでいるとでもいうのか!」
「は、半分正解です〜!」
そんな声が聞こえて、私は目を覚ました。
両腕の中で何か細くて硬いものが暴れており、それがフランだと気づくのには時間がかからなかった。
そして、もちろん私のせいで動けなくなっていたフランに対して、色々いっていたのはカスミちゃんだった。
手には短剣を持っていてフランに突き出しており、それにフランはブルブルと震えている状態だった。
私は布団からモゾモゾと顔を出した。
「おはよぉ」
「た、助けてください。早速殺されそうなんですが」
私が抱き枕にしていたフランは涙目になって私の方を見てきた。
起きたら目の前に短剣を持った人が立っていて怒鳴ってくるのだ、恐怖以外の何者でもないだろう。
「な、なんでここにいる!あんさ、むぐっ!」
私のことを確認したカスミちゃんはかなり驚いており、このままだと余計なことまで口を滑らしそうだなと思った。
そこで私はフランに「少しお話ししてくるからそこで待っててね!」といって、布団から飛び出しカスミちゃんの口を押さえ寝室から引っ張り出した。
私は暗殺の依頼をやっていてフランに両親や兄弟を殺したことを言っていないというか、まだ言うつもりはない。
だからこそ、カスミちゃんの話をフランが聞かないように寝室から連れ出したのだ。
「もちろん、終わったから戻ってきたんだよ」
「ば、バカな。確か、あの中には伯爵家も含まれていたはずだ」
「もちろん、終わらせてきたよ。ちなみにさっきの子はその伯爵家の子供で私の最初の仲間」
「な、な、」
この情報にカスミちゃんはかなり驚いている様子だ。カスミちゃんが言葉にならない言葉をはっしていると、相変わらず書類を処理していたレオンが口を出した。
「おいおい、朝から騒がしいな。もう少し大人しくしてもらっていいか?」
「はーい!」
「だ、だって」
「カスミ」
「……!」
そのレオンの言葉に納得がいかなかった言葉を続けようとしていたカスミちゃんはレオンに名前を呼ばれるとすぐに黙った。
おおすごいなぁと思って感心していると今度は私の方を向いてきた。
「あと、お前もあまり情報をペラペラ話しすぎるな。仮にもあの子は暗殺対象だ。バレたら殺される可能性があるぞ」
「はい……」
確かによく考えてみればそうだ。
何も考えていなかった。
やっぱり、最初にここに帰ってきたのは正解だったな。
あのままだと色々言いふらしていた可能性がある。
「まぁいい。カスミ、今日は4人分朝ご飯お願いしてもいいか?」
「は?なんでよ」
レオンが多分私とフランに気を遣ってそういってくれたのだが、カスミちゃんはあまり乗る気ではない。
「あ、そうだ。フランは多分あんま重たいのは食べない方がいいと思うから、軽めでお願いしてもいい?」
「は?なんでレオンの言うことならともかく、あなたの言うことまで聞かないといけないのよ」
「カスミ、悪いがお願いしてもいいか?」
「はぁ、わかった」
それから、カスミちゃんは文句を言いながらもしっかりと4人前を作ってくれた。
フランにはなんとか取り繕うことに成功し、カスミちゃんはびっくりしすぎただけと言うふうに収まった。
かなり無理があったと思うのだが…
そこは多少気を利かせてくれたのかもしれないし、ただのバカだったのかもしれない。
しかし、それがわかるのはフランだけだ。
そのあと、カスミちゃんが作った朝食を4人で取り囲んで一緒に食べた。
「うん!すごくおいしいよ!」
「はい、すごく美味しいです」
「そう…」
「あ、照れてる」
「照れてない!」
そう言う、カスミちゃんの顔は赤くなっており、照れているながわかる。
わかりやすいやつである。
「あ、そうだ。今日、冒険ギルドに行って登録しようと思っているけど、大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
ある程度、ご飯も食べ終わりに差し掛かった時、私は昨日の今日でフランが疲れていないか気になり、そんなことを聞いたが、フランは落ち着いた声色でそう答えた。
「それからはどうするか考えてないけど、ダンジョンと森、どっちで狩りをする方がいいのかな?」
「それなら、ダンジョンに行った方がいい。ダンジョンなら魔物の死体は発生しないからへんに解体作業とかしなくてよくて楽だぞ。それになんかあった時人がいるから助けを呼びやすいしな」
なるほど、森で買った時は死体が残っていてめんどくさかったが、ダンジョンだとそれをする必要がないと言うことか。
それなら、かなり楽に敵を倒せると言うことだ。
「へぇ〜、それならダンジョンにしようかな。それでも大丈夫?」
「……」
「フラン、どうかした?」
そう問いかけ、フランの方を見ると目が涙目になっていた。
私はついに仲間とちゃんとした冒険ができるとワクワクしていたのだが、フランはそうではないのかと心配していると、
「……!いえ、すみません、こうやって食卓を取り囲んで食べるのは久しぶりだったのでなんか新鮮で」
フランは目をゴシゴシと擦って、そう答えた。
「それならこの地にいる間はここに泊まろうか。そしたら毎日一緒に朝ごはん食べられるからね」
「うん!」
「え?聞いてないんだけど」
「て言うことでカスミちゃんよろしくね」
「はぁ、わかったわよ。作ればいいんでしょ!」
「ありがとうございます」
そんな感じでこの世界初めての朝ごはんは仲間と一緒に楽しくご飯を食べたのだった。
「じゃあ、そろそろ向かう?」
「はい、いつでも大丈夫です」
食器も片付け終えた私は髪を整えたりして、準備が終わり次第、フランにそういいフランもやる気満々の顔でうなづいて答えた。
「あ、そうだ。レオン」
「どうかしたのか?」
「カスミちゃんのでも大丈夫だから、冒険者がつけててもおかしくない防具とかない?」
「どうかしたのか?」
「うん、私がつけるから」
「あるから、とってくる」
私はあることを思い出して、レオンにお願い出したが、なんのことかわかっていない様子でフランとカスミちゃんはポカンとしている。
レオンは早歩きで部屋から出て行って、防具を持って帰ってきた。
「これだ」とて渡された防具はストーカーされた時にカスミちゃんがつけていた防具だった。
「ありがとう」
「じゃあ、はいこのローブはフランがつけて」
その防具を受け取った私は自分のローブを脱いで、フランに渡そうとすると3人とも私の方を向いて固まっていた。
「お前、そんな見た目だったのか」
「かわいい」
「フランの方が可愛いと思うよ?」
「そんなことはないです!」
そうやって否定するフランにローブを着せてあげて、私は防具を取り付けた。
「まぁ、それは置いといて、フランの髪が白くて、目が赤い理由には心当たりがあるんだけど、それは直射日光に当たると良くない病気だから、このローブをつけた方がいいかなと思って。それに見た目でどうのこうの言われる心配もいらないし」
「え?心当たりあるんですか?」
「あるけど、あまり知られていないし、確証がないから色々調べてから教えるね」
私はフランの髪と目についてアルビノか隔世遺伝だと思っている。
しかし、もしアルビノだったら場合、直射日光を浴びるのはあまり良くない。
そう思った私は自分のローブは少し大きめのためフランに着せようと思ったのだ。
「わかりました。ありがとうございます」
そのローブを着たフランは少し嬉しそうにそう答えるのだった。
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