第五十話 引っ越し

 両親が引っ越し先に着いたと電話連絡をもらった。先日僕らも手伝った。

 そういえば引っ越ししてないなぁ、僕ら2人になってから。まぁ必要ないし、とくに他のところに行こうとか思わないが。

 だけど互いの心がどこかに引っ越さないようにしないとね。

 それが心配で僕は李仁に抱きつくと抱き返してくれた。


 ※※※

 父さんたちは母さんの故郷に引っ越した。


 せっかく利便性のあるこの街に住んでいたのにわざわざ越してしまったのだろうか。


 僕らは李仁が前から住んでいたマンションにずっといる。もう所有のものだし。

 まぁ売ってどこかに越してもいいとかは前話してたけどここから離れてどこか行くあてがあるの? となればないんだけどね。


「思ったけどミナくんの実家のマンションに越してもよかったかもね」

「あ、それもあったかも。そこそこ広かったし」

「そうよね、あそこの台所広かったからいいなぁと」

「そう! グリルもめっちゃ高機能……」

 とやはり僕らは料理が好きだからそっちに話題がいってしまった。それで2人目を合わせて笑っちゃった。


「でも引っ越し大変だしね、まぁここでも十分よね」

「うんうん。引っ越し作業してる時間あったら李仁とこうしてぎゅーっとしてたい」

「そーぉ? 作業してる時もお父さんたち見てない時にキスしてきたのは誰?」

「だって、あの時の前日ラブラブできなかったから……」

 チュッチュとこれはもうイチャイチャスイッチ入っちゃってる僕ら。

「バレてたかな? 流石にキス止まりだったけどさ」

「……さあ。てかあの家でラブラブしたの久しぶりすぎて」


 そうだ、数回李仁が僕の実家に来た時があって。

 他の部屋に親たちがいたのに李仁がイチャイチャしてきて……声を出さないようにするのがすごくやばくていつも以上に興奮したんだっけ?

 李仁も……僕よりも興奮して鼻息荒くて。


 やばい、思い出しただけで……。

 李仁が押し倒してきた。シャツを互いに脱いで……李仁も体が熱くなってる。


「ミナくん、私から離れないでね」

「わかってる……」


 どうやらしばらくは引っ越すこともなさそうだ。場所も、心も。

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