第四十七話 エイプリルフール
いつも元気な李仁が元気がない。
特に病気や怪我がなければ朝から陽気、昼も夜も陽気な人なのだが。
「どうしたの?」
僕が声をかけると僕が見てるのを分かってか苦笑いしつつもさっきよりも元気を戻して
「ん、ちょっとね」
と言う。
ちょっとねどころの感じではなさそう。
どちらかといえば僕がネガティヴだからその代わりといっちゃなんだけど李仁が凄く明るく振る舞っている気もする。
かと言って李仁が元気なかったら僕は彼みたいに陽気に振る舞えるのだろうか。
「ちょっとどころじゃないでしょ」
って一応言ってみた。
すると李仁はすんなりと頷いた。
「んー、そのね……」
「その?」
なんかモゴモゴした言い方をするときは李仁、やましいことがあるとき。僕が傷ついてネガティヴになるのが嫌だから良い言い方がないか考えてる時である。
もう10年以上いるから僕にでもわかるよ。そりゃネガティヴな僕だから彼には色々苦労かけてるけどさ……。
「たたないのよ」
「は?!」
「勃たないの、あそこが」
「はい?!」
ようやく出た言葉がそれですか。嘘?
「今日はエイプリルフールだ! 4月1日!」
だが李仁は首を横に振る。
「エイプリルフールじゃないよ。本当なの……見る?」
「いや、いいけど……てか、あんなに朝から晩まで発情する李仁がだよ?!」
「そ、そうなのよ」
この顔は本当にそれっぽい。
……勃たないだなんて。てかここ最近も普通にしてたし。
「……しばらくね、薬に頼っていた」
と出したのは海外製のラベルが貼ってある瓶。
薬……よりによって海外製?!
「なんでっ……、どうしてそこまでして」
まぁ僕らも45歳だし。……僕も勃たなくなった時にダイニングバーしていた李仁と出会って美味しいご飯食べさせてもらって改善されて。
今も毎日のように美味しいご飯のお陰で……なのに李仁……。
まさか李仁からだなんて。
「だって、ミナくんと……いつまでもラブラブでいたいじゃん」
そ、そ、それもわかるけどさ。それにあの時だって僕としたいがためにバランス良い食事を作ってくれて……。その理由も僕としたいからって。
「でも、しなくてもラブラブでいられるし、李仁が勃たなくても僕のはまだまだ元気に……ん?」
あれ、僕の……も……?
うあああああぉああっ!!!
と目覚めた。
夢だったのか。これは夢なのか。
ベッドの上にいた。横にはまだ寝ている李仁がいた。
慌てて布団をまくり、李仁のズボンを下ろした。
……李仁のは朝から元気だ……!
「さっむ! てかなにしてんのよぉ」
「ご、ごめん……」
よかった、夢で。って、もしかしたらこれも薬を飲んでいての効果かもしれない。
「李仁、なんかお薬飲んでない?」
「は? なに、お薬って……てかこんなことさせて……」
やば、李仁が僕を見てる。
ちょっと待って。今日は朝から会議が……。李仁は午後から仕事だけどさぁ……!!!
「ん? ミナくん……」
「……あれっ」
僕のが、勃っていない。嘘だ! ふとカレンダーを見ると4月1日。
嘘だと言ってくれ……。
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