シバ

第三十九話 殺気立った目

仕事始めて数日で目つきが変わったとジュリに言われた。

案外過酷な職場で笑うことも忘れてしまうほどである。

しばらくはジュリとは会えないのだが夜寝る前の自由時間にジュリとオンラインで思い出させてくれる、笑うことを。

ありがとう。

ジュリ、君だって無理して笑ってるのはわかってるよ。

ごめんな。


※※※

『そうそう、あの2人にお祝い送っておいたから』

「……ん、ああ」

『忘れてたでしょ?』

「ん。うん、忘れてたけど……ありがとな」

『時間ないのもわかるけど連絡してるの?』

……湊音とはちゃんとしっかり話さずにだったからな。

誕生日くらい祝ってやるべきか。


にしてもジュリはいいのか。自分よりも愛人のほうに気を遣えって。


『はいはい、その目をほぐしましょ』

「わかった……これだろ?」

目尻に俺は人差し指を置いてぐるぐる狐目、たぬき目をする。


『はい、じゃあおやすみね。シバ』

「おう、おやすみ」

『……愛してる』

いつもの決まりの挨拶だが……俺は他に誰もいないのを確認して……って誰も来ないところだが。

「んっ、愛してる」

『ふふふ』


ジュリの笑顔で画面は切れた。

その笑顔見て少しニヤついてしまう。


「冬月さん」

!!

誰かいたのか……。


「冬月さん、そんな顔するんすね」

一緒に指導することになった現役の警察官の磯田だ。

2個下で名前は知ってたが彼も剣道の腕前がすごい。事件でうつ病を患い現場から離れて警察学校に務めることになったらしい。

「るっせぇわ。いつから聞いとった」

「ん? 先週くらいからここで冬月さん夜な夜な来て何か話してるんでタバコ吸うついでにたまにコソッと」

「くそぉおおお、磯田っ!!!」

「へへへ、鬼の冬月が顔真っ赤にしてらぁ、その目が怖いー!!」


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