雷鬼と炎龍
快魅琥珀
第1話 希望の光
この世界には不思議な危険生物が存在する。
『厄災』と呼ばれる者共だ。
多種多様な様相を持つ彼らは、人を含めた生物に友好的なものもいれば、全ての事象に対して攻撃的なものもいる。
人型もいれば獣型もいて、固体のものもいれば、液体や気体の者もいるし、生き物として存在しているものもいれば、事象や現象そのものであったりもする。
なかなか知覚するのが難しく、危険性もそれぞれで、人類は対処に追われる日々をおくっていた。
そしてその『厄災』が生まれ始めた年から二十年後、ある記念すべき年に、ある人類が生まれる。
『厄災』と同じような異能力を持ち、それでいて人間。
そして不定期に生まれる彼らをまとめあげた団体が、『厄災』対策のために活躍を始めた。
『厄災』が増えれば増えるほど、その異能力を持つ人類、『異能人』が増える。
そしてある時、後に人類最強となる『異能人』が生まれる。
~~~~~~~~~~~~~~~
「あっちぅ!?あっちぅ!?あっちぅ!?」
小さな夜の公園で、燃える服を脱ぎ捨て蛇口に駆け寄る小さな少年がいた。
全身に軽度の火傷があり、寒い冬でも裸で走り回るほどの元気がある。そんな少年は冷たい水を浴びてから、湯気が上がる体を大の字に広げて公園に寝転んだ。
「ふはー!!あっちぅねー!!」
まだ幼い少年は疲れた笑みで夜空を見上げた。
頭に作られたげんこつを撫で、大きなため息をついて、帰る場所もなくただ疲れた少年はここで眠ってしまおうかと考える。
目の前の光を見るまで。
「んぁ?あれは……」
それは夜空を駆ける光。何者にも囚われず、広く自由な空を縦横無尽に走り回る。
流星かと思われたそれは、どちらかといえば稲妻だった。
直角に進行方向を変え、夜空を照らす光は向かう方向を決めていないようだった。
『厄災』かと思われたが、よく見てみるとそれは湯気の上がる少年と同じくらいの少年だった。
その少年が、先程止まらぬ炎に焦っていた自分と同じような気がした。
「こ、こっち!!ここなら誰もいないよ!!」
必死に叫ぶ湯気少年。しかし空の上を駆ける少年には届かない。そもそも、音の速さがその少年に届かない。
光の速さで飛ぶ彼に届きうるのはそう、灯りだけ。
「ん、えい!!」
忌み嫌われた自分の力を、湯気少年は精一杯炎を上へ吹き上げた。制限の効かない炎が天高く登り上がり、そしてそれは、あの光の走る空にまで。
そしてその瞬間、とてつもない速度で公園に雷が落ちた。
「わぁあ!?」
どんと音が轟いて、湯気少年が転がった。砂煙が上がる中、風に吹かれて煙がなくなると、咳き込みながら1人の少年が、湯気少年に手を差し伸べた。
「けほけほ、ごめん、ありがとう……助かったよ……」
湯気少年は驚いた。
手を差し伸べられたのに驚いたのではなかった。
ただこの、偏見によって忌み嫌われた『異能人』であるこの雷の少年が楽しそうにしているのが、とても不思議だったのだ。
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