第31話 激突!ヴェディタル平野
戦場に
鎮圧軍と反乱軍の指揮は共に最高潮に達していた。理由は言わずもがな、それぞれの指揮官にして最高戦力が集い激突しているからだ。
「
身の丈にも匹敵する巨大な
「ヌゥン!!」
巧みに回避し、地面を砕き即席の防壁を作り上げ、時には手にした短剣を縦横無尽に振るい迫り来る蒼炎を突破していくスパルタクス。だが、ほんの僅かな隙─迫る蒼炎の鞭に意識を取られた瞬間、スパルタクスの横面に隕石をも思わせる衝撃が突如として襲う。
「どっせいやぁああ!!!」
それはカルグの盾による殴打だった。スパルタクスにも並び得る巨体と、それに相応しい2つの巨大なタワーシールドが齎す一撃は正に必殺の域にまで到達していた。常人なら頭蓋が粉砕しても何らおかしくないそれを、スパルタクスは受けて尚戦闘行動を継続していく。
「素晴らしき一撃、だがそれでは私は倒せんぞ!!」
「やかましい反乱軍め、さっさとお縄につきやがれ!!
反撃の一撃を加えんとしたスパルタクスだったが、それは叶わなかった。即座に腹、太腿、脇腹、腕──あらゆる部位に向けカルグは盾の乱打を開始する。思考を排除し、本能のみで攻撃を行う
「逃がさないわ、漸く…捕まえたッ」
蒼炎の鞭は遂に獲物を捕らえた。スパルタクスの四肢に絡みつき拘束する。よって、衝撃を後ろに逃すことも出来ずに諸に喰らい続けることとなったスパルタクス。
「オオオオォォォォォォォォッッッ!!!」
そしてその瞬間をカルグは見逃さない。タワーシールドによるシールドバッシュを幾度となくスパルタクスの肉体に叩き込んでいく。重々しい衝撃音と共に血が周囲に飛び散っていく。
「ま、だまだァァァァ!!!」
だが、その程度で仕留められる程第
「なっ!?」
如何に強力な一撃であろうと、懐に潜り込まれては気軽に放てるものではない。そして、スパルタクスの攻撃はまだ始まってもいない。
「オオオオォォォォ!!トラキアンスープレックスゥゥゥ!!!」
放たれるのはフロントスープレックス、自身に匹敵し得る重量を持つカルグを持ち上げ、そのまま背筋にモノを言わせて後方の地面に勢いよく叩き付ける。その衝撃だけで地面にクレーターが出来る程だが、もう1人─カレンもまたその隙を見逃さない。
「
周囲に無数の蒼炎の塊を現出させ、武器に形成していく。それは両刃の槍だった。数十の蒼炎の槍が雨霰と降り注いでいく。
「ヌゥ!!」
「うぉぉぉ!?!?」
スパルタクスは即座に態勢を整えて後方に跳躍し、
「フハハハハハ!!!恐ろしいな、蒼炎の乙女よ。だが貴様らが支配の轍のひとつであることが更に確証を持てたわ」
戦術爆撃にも等しい破壊の奔流を見てスパルタクスは呵呵と嗤う。
「支配の轍?一体何の話を…」
「うぉい!!その前にカレン、テメェ俺を殺す気か!?」
カレンはスパルタクスの発言を問い詰めようとするが、それに被せるようにカルグからの必死の追求を受ける。先の攻撃は下手をすれば死んでもおかしくない程の火力であった。カルグの防御が間に合っていなければ、確実に彼はこうして立っていることは出来なかっただろう。
「アンタなら大丈夫でしょ、死んでも死にそうにないもの」
「よーし後で飯奢りな」
絶対高級店で奢らせてやる、そう決意したカルグは改めてスパルタクスに向き直り盾を構える。カレンも彼と同様、
「「「オオオオォォォォ!!!」」」
再び激突する最高戦力達、凄まじい衝撃を伴いながら激しい剣戟を繰り返していく。
「さあ、支配の轍共よ!その傲慢なる魂を
「だから!その支配の轍って何なのよ!!」
地面を砕き、その破片を弾丸として短剣で撃ち放ちながら叫ぶスパルタクスに、蒼炎を盾としながら防ぎつつ叫び返すカレン。だがその防御を突破せんと、スパルタクスは轟音を伴いながら短剣を振るい、そして叫ぶ。
「お前達には分かるまい。明日をも知らぬ、望めぬ、そんな昏き絶望を!!」
骨まで燃えるような超高温の防御をぶち抜く。その結果、カレンの左腕に短剣が刺さり、次瞬柄を握る拳がそのまま彼女を後方に殴り飛ばす。
「オオオオ!!!」
その横っ面を全力で盾で殴り飛ばすカルグだが、
「チッ…ああ、もう!さっきから何の話をしてるのよアンタは!」
「クソがぁ…!俺達はテメェらの引き起こした反乱をだな─」
「笑止!我等の進撃、その根幹を知らぬと吐かすか!!」
意味のわからないことをベラベラ喋るスパルタクスにイラつく2人だったが、続くスパルタクスの言葉に思考が一瞬停止してしまう。
「それこそが、支配の轍の罪!この国に蔓延る悪意の走狗よ、数十年に渡る罪の黙従の咎を清算する時が来たぞ!!さあ征こう我が
「「…は?」」
数十年、一体何の話だ?もしや、ヴィシュヴァー辺境伯は、それ程の年月の間帝国の中央を謀っていたと?
そんな思考を続ける2人だが、スパルタクスの身体から放たれる濃密な
「カルグ、アイツはここで捕える!使うよ!」
「おっしゃあ!!」
同時に2人もまた己の
「「「ここに我が竜銘を刻まん」」」
──究極の武が、顕現を果たす。
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