どこの言葉か分かりません

第1話

ごきげんよう、臨月の妊婦です。

私、なんと、風邪をひいてしまいました。

あーこんな時になんておバカなんでしょう。

薬も飲めず、ひたすら寝ております。

赤ちゃんまで苦しがるのですから、何としても早く治さなくては。

昔、幼い私が風邪を引くと、母が桃の缶詰を食べさせてくれたものです。

風邪＝桃缶

って刷り込みが出来上がっておりますので、夫に頼み、桃缶を買ってきてもらいました。

ただね、度が過ぎるんですのよ、うちの夫。

10個も買わんでええわい！

「どれが良い？」

と目を輝かせて聞くので、白桃のを選び、開けてもらいました。

ぜーぜーハーハー言いながらやっと食べ終わった途端に

「どう？」

と聞くので

「うん美味しかったよ」

と答えましたが、そんな桃缶を食べたからって風邪が一瞬で治る訳ねえだろ！

まあいいや。

「早く寝なよ」

と言うので好意を無にすまいと思い寝ておりますが、

とにかく身が重いのです。

早く産みたい。

身軽になりたい。

赤ちゃんや、桃缶、君も美味しかったかい？

どげんしたら熱、下がりまっしゃろ。

きつうてかなわんけん、どぎゃんしたら楽でっしゃろ。

んん、どこの言葉か分かりません。

あーまだクラクラする。

誰か、なんとかして。

あーもーアカン。

ういおぶー。

助けてくれ〜い。