プロローグ第二話
次にルイスが目を覚ますと、彼女は冷たい牢獄に寝かされていた。
「う……。」
彼女が目を覚ましたのを確認した牢の守衛は、無言で目の前から姿を消すと、ある人物を連れて彼女の前に戻ってきた。
「目覚めたようねルイス。」
「ママ?何でルイスはここに入れられてるの?寒いよ。」
「ルイス貴女は王家にいてはいけない存在よ。娘が吸血鬼なんて王家の恥だわ。処刑されないだけ恩赦を受けたと思いなさい。」
「吸血鬼?ママ、何言ってるの?」
「生き残った兵士が貴女があの人の生き血を啜っていたのを見ていたのよ。」
その言葉でルイスは全てを思い出した。
狂人に父親であるアンリ4世を殺され、自分はめった刺しにされた。しかしなぜか自分は生きていた。そして父親の血液が美味しそうに見え、それを口にした瞬間溢れ出してきた力であの狂人を殺したことを。
「で、でも……。」
「新たな玉座には貴女の兄であるルイが座ります。だから貴女は何も心配せず、そこで朽ち果てなさい……
「……っ。」
悪魔という言葉がルイスの胸に突き刺さる。
そしてその言葉を残し、ルイスの母親であるマリーは二度と彼女の前に現れることはなかった。
それから2年の月日が流れたが、出される最低限の食事とは呼べないそれを食べつなぎルイスはまだ牢屋の中で生きながらえていた。
その最中にも彼女の体にはまた異変が起こっていた。異常に成長したその体に合わせて知能が急速に発達していたのだ。
とっくに大人をも凌駕するほどの天才的な知能を手に入れた彼女は牢屋の中でふと思う。
(ルイスがここにいる意味は……なに?パパは死んだ、ママとルイには見放されてる。)
そう思いながら成長してしまった自分の体に目を向ける。
(パパの血を飲んでから体は成長した……。それにあの狂人を殺した変な力も、血を飲んでから現れた。でもこれを検証するには……誰かの血を飲んでみるしかない。)
なにか機会はないか……と彼女が考えを巡らせていると、いつものように守衛がご飯を運んできた。下卑た笑みを浮かべながら。
(これだ。)
守衛の男はルイスが何も抵抗しないのを良いことに、ご飯を運んだあと、ベタベタと彼女の体を触る。それが日課になっているのだ。
そして今日も、それが始まった。
「あぁ、ルイス様今日もお体の様子を確認しますよ?」
そう言って鼻の下を伸ばしながら男はルイスの服をはだけさせる。発育の良い胸が露わになるがルイスは眉一つ動かさない。とっくに彼女はこのおぞましい行為に慣れてしまっていたのだ。
「美しい……おや、汗をかいていますね。」
そして胸を伝っていた汗を、あろうことか男が舐め取ろうと顔を近づけたその瞬間……。ルイスの口角がニヤリと吊り上がる。
「そうやって近づいてくるのを待ってた。」
「へ?……がっ!?!?」
ルイスはぬけぬけと近づいて来た男の首に噛みつくと、噛み付いた皮膚ごと食い千切った。
「ギャアァァァッ!!」
口元を鮮血でべっとりと濡らしながら、ルイスは口の中に広がる血液の味に顔をしかめる。
「………………美味しくない。」
ペッと男の首の皮膚を地面に吐き出すと地面で喚く男の顔をルイスは踏みつけた。
「パパの血は美味しかったよ?」
「ひっ、ひぃ……あ、悪……マ゛ッ!?」
ルイスは無表情で男の頭蓋骨を踏み砕くと、自分の体に起きている変化に一つ頷いた。
「美味しくなくても血を飲んだら力が強くなった。」
一つの仮説を立証すると、彼女はすぐに2つ目の仮説を確かめるべく、血溜まりへと向かって右手を翳した。
すると、血液が独りでに蠢き、彼女の右手に集まった。脳内で剣の形をイメージすると、それは剣の形に変わり、彼女のイメージ通りに形が変わることもわかった。
そして血の剣を握りしめたルイスは牢屋の鉄格子を全て切り刻むと、2年越しに牢屋からその身を乗り出した。
「アハハッ……やっと出れた。」
ニコリと彼女は笑うと牢獄の出口へと向かって歩いていく。
牢獄の入り口では二人の兵士が警戒心のかけらもなく雑談をしていた。
「アイツ、またルイス様と戯れてんのか?」
「多分な、吸血鬼だろうがなんだろうが、女の体なら何でもいいんじゃねぇの?」
「でも今日はちょっと長い気がしないか?」
「あぁ、そう言われるとそうだ………………な。」
雑談していた二人の兵士の首が文字通り飛ぶ。頭を失ってふらつくその体を押しのけルイスが現れた。
二人の体から溢れたその血液はルイスの背中に羽のようなものを象る。光が射し込む天井のガラス張りの窓を眺めたルイスはクスリと笑った。
「
そう言って背中にできた羽のようなものを羽ばたかせると、彼女はガラス張りの天井窓を突き破り、大空へと羽ばたいていったのだった。
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