黒呪の魔眼~転移後直ぐに呪われた俺の行く末
永史
第1話 スタンピードの中で
プロローグ
◆◆◆ 第1話 スタンピードの中で ◆◆◆
永井
年齢24歳、やせ型、身長173cm、黒髪黒目、最終学歴高校、年齢=童貞歴で彼女はいた事もない。
おまけに身体は弱く病弱。
現在倉庫の仕分けの仕事をしており、忙しいと思いきや結構暇な状態が続いていた。
何処かの会社の余った物を管理する倉庫業務。
たまにフォークリフトを使って物をトラックなどに運び出すが、力がいる事は殆ど無く、仕事仲間も此処には誰一人としていない。
給料は安いが身体が弱く、コミュ障の俺には向いている仕事だった。
身体が丈夫だったのなら
頭が凄く良かったなら
顔が良かったなら…………
全て他人任せなのは分かっているが、やるせない気持ちを抑え、今日も暇な倉庫内で一人細々と仕事をしながらネット小説を読んで時間を潰している。
最近の嵌っている小説は昔から変わっていない。
英雄が出て来る小説だ。
俺が英雄だったのなら。
俺に力があったのなら。
悪い奴らをぶっとばす。
そんな気持ちで妄想の中に入り、俺の出来ない事を代わりにやってくれる想像の中の主人公にあこがれを持って読みふけっていた。
ブブブッブブブッ
スマホのアラームが鳴り、倉庫の周りを一周確認、戸締りをして仕事は終わり。
室内に設置されたパソコンのタイムカードをクリックして倉庫を退出。
ネームプレートで鍵を掛け、締まっているか確認をして駅へと向かった。
毎日毎日同じ景色の繰り返し。
何も変化も刺激も無い仕事を繰り返す。
小学生の時は何になろうかと思っていたんだろうか。
お菓子屋、何かの社長、おもちゃ屋。
そんな事も出来る訳が無く、毎日変わらぬ退屈な生活を送っている。
この街並みが大自然だったのなら。
遥か向こうに見える山並みの果てに異国があったのなら。
人々が突然魔物に変わり、人を襲って来る存在だとしたら。
ある訳も無い妄想を胸に秘め、変わらない道を歩いていた。
そうだ、今日は定期的に購入している月間漫画の発売日だ。
俺は帰宅途中にあるコンビニへと寄り、本棚に並ぶつまらない本の中に並ぶ中から大きく書かれた漫画の雑誌名を発見し、レジに本を持って行く。
高校生か、大学生か、俺よりも年下の可愛い女子にレジを通され、少しドキッとする。
ああ、こんな女子が彼女だったのなら。
シャツの胸元から垣間見える胸の谷間を横目で覗き、細い腕と渡された本を握る細くしなやかな指にドキッとする。
ああ、ダメだ。
そんな風になる訳がない。
弁当が入ったデイバックに雑誌を入れ、俺は出入口に向かって歩き出した。
ウイイイイイイイイイイン!
突然、表の小さい駐車場から大きな車の音が聞こえた!
ドン!ガシャアアアアアアン!
タイヤ止めを乗り越え、車はガラスを突き破り店内へ!
危ない!
暴走車だ!!
横を見るとレジの可愛い女子が固まっていた!
此処はカッコ良く助けなきゃ!
だが、俺の足も接着剤が付いているように固まり動けなかった!
ガシャッ!ガシャガシャガシャアアアア!
陳列棚を弾き飛ばし、眼前に迫って来る高級車の証であるマークが迫って来る!
ドンッ! ガララララガシャーン!
俺はそのまま後ろへと弾き飛ばされ、ジュースのケースと後部バンパーに頭を挟まれていた!
いたいいたいいたいいたい!
声も出せずにメリメリと聞こえる何かが潰れる音と車のスキール音!
時に左の顔面が潰れそうだ!
その瞬間、フッと顔への圧力が消えた。
無事である右目で回りを見ると、車がゆっくりっと壊れた陳列棚を掻き分け前へと進んでいた。
店内から聞こえる悲鳴!
誰かが運転席のドアを叩き、何かを言っていた。
ああ、助かった。
英雄にはなれなかったが、命は無事らしい。
キュキュキュキュキュ!
再び眼前に迫って来る車のバンパー!
やめろ!
やめろやめろやめろ!止めてくれえええええ!
メキッ
同じ左の顔に衝撃と音が脳内で響き、意識が暗転した。
痛い
痛い
左目が痛い
「大丈夫か!死んで無いだろうな!」
簡単に死ぬかよ
いや、死んでたまるか。俺はまだ童貞なんだ。
って言うか死ぬかと思った。
頭を怪我したのか、視界は真っ暗だが、左目には暖かい液体が流れている事が分かった。
そして俺の上には何か重たい物が乗っかっている。
凄い圧迫感。
それも毛深くて暖かい。こえは無機物では無くイキモノ。
それが俺の上でまだ動いていた…………
毛深い?
何かが動いている?
曲がったままの右腕でソレを押して見た。
ズシュ ブシャアアアア!
「ギャオオオオオオオオオ!」
恐竜の声を再現したらこんな声なんだろうと想像している声の10倍は響く声がして、何か熱い液体が全身にブシャ!ブシャ!と掛かって来る!
何だコレは!
俺はコンビニにいて、暴走車に撥ねられたはずだ!
この毛深く異様なモノはいったい何なんだ!!
ずるっ
ずる ずるずる ずるずるずるずる
「マキシ!大金星だぞ!生きてるよな!」
誰だマキシって
夕方だったのに、そこは暗い世の中だった。
何かの液体を被ったのか、視界は真っ赤だった。
そして俺に声を掛けて来たのは数人いる中の一人の男。
ピピッ
脳内に電子音の様な音が響きヘッドアップディスプレーのように男の上に文字が重なった。
・ザルツ
・16歳
・レベル4
・冒険者
「は?」
頭が混乱する。ここは何処だ?病院?紛争地?
俺は何時の間に戦争に巻き込まれたのか?
いや、あのコンビニに何か打ち込まれたとでも言うのか?
男の服は皮で出来た防御する鎧の様な恰好だった。
しかもその手には長い剣をもっている。
「は、じゃねえだろ!腕は?足は?怪我は無いのか?動かしてみろ!」
俺は地面に横たわっていたらしい、ゆっくりと立ち上がると足を動かし、腰、背中、そして手に……
「うおっ!」
右手に持っていた中位の剣を持っていて、びっくりして放してしまった。
「大丈夫かマキシ。ほら顔が返り血で汚れてんぞ」
そのマーカーが付いているザルツと言う男は、俺の側まで寄り、腰に結んだタオルを解き、顔をグシャグシャと拭き始めた。
「ほらよ。これも戻しとけ」
ザルツは俺の落とした剣を俺の左腰にあった鞘に納め、タオルを首に掛けて来た。
「あ、ありがとう」
自分の声を聞いてびっくりした!
声が違う!
そして聞いた事の無い言葉を話していた!
「頭でも打ったか?大人しいじゃねえか。目は見えるか?首は?変な所はないか?」
少し身体を動かすが、変な所は……この文字が見える左目以外は無かった。
「少し目が変に見える」
俺は文字が見える事を隠して言った。
「どら、水で洗うか」
自分の水筒を俺の顔にぶっかけて来た。
冷たくて気持ちがいい。
今は夏だったか?
秋だったと思ったが。
何かがおかしい。
また俺のタオルで顔を拭くザルツ。
「ん?マキシの目は何色だった?」
「茶色だけど……」
知らない知らない!勝手に頭に浮かんで来たんだけど!
「こっちの目だけ黒になってるぞ。返り血のせいか?痛みは?他に変な事hないか?」
「あ、ああ、痛くは……無い。他は大丈夫だ」
「なら後で神父さんに見えてもらおう!良いか絶対に生きて帰るんだぞ!神父さんに生きて帰るって言ったんだろ!少し休んでろよな。直ぐ次が来るぜ」
そこで俺は漸く周りを見渡す余裕が出来た。
満月の月明りに照らされているレンガ造りの家が壊れ、瓦礫の中に変な動物が沢山倒れている。
そして俺の上に乗っていたであろう、モノは、人々が周りを囲み、日本語では無い言葉で話をしていた。
『これは何の魔物だ?』
『見た事ねえな』
『騎士団なら分かるんじゃねえか?』
意見を言い合いながら持っている剣で突いていた。
それは蝙蝠の様な羽を生やしているが、全身は真っ黒い毛が生えており、顔は牙を剥きだしにしたオニの様な顔、尻尾まで生えていた。
俺の身長よりも遥かにデカかったし、今見てもかなり大きく2.5mはあろうかと言う身長だった。
ピピッ
・名無し
・3歳
・レベル31
・上位悪魔幼体(死体)
おい!
悪魔って出てるぞ!
3歳でレベル31だって?しかもそれが幼体?
ゲームでは31と言うと大体中堅クラスだぞ。
それが3歳で幼体…………でも悪魔っているんだ。
俺はそこが何処なのか、俺は今何故ここにいるのかを放置して、目の前に横たわっている悪魔と言う存在に恐怖していた。
何人もの男どもが傷を付け、最終的に俺があの瞬間に止めを刺したんだろう。
さっき俺に話しかけて来たザルツもだが、回りで見物している戦士の様な男どもも見た目は日本人では無い。
どちらかと言うと白人なのだが、たいていの人は身体が大きく腕や足が太く見える。
それに比べて俺の体と来たら…………
俺は自分の細い腕を見てみた。
ピピッ
・マキシ
・15歳
・レベル10
・◆◆◆◆(呪い、進化中)
「え?」
俺の腕の上にマーカーが点灯し、名前などが出ていた。
名前も変わっているし、歳も若くなっている。
レベル10が強いのか弱いのかは分からないが、最後の◆はなんだ?
それに呪いに進化中とは?
その事を考えようとしていた時、突然笛のような音が聞こえて来た!
ピ――――
ピ――――
ピ――――
ピ――――
何処からか笛の音が聞こえだし、それが次々に場所を変えて警笛が近くまで鳴り出していた。
そして次の瞬間、微かな地震のような振動を感じだし、回りが一気に慌てだす!
「来るぞ!スタンピードだ! 迎え撃て!!」
地鳴りの様な振動とドラムの様な音を感じ、俺は今、異世界へときている事に、この時初めて感じていたのだった。
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