第62話 ネコ抱いちゃった

 獣人三人娘と……否、四人娘と一緒に激しく交わる一夜が明けた。

 夜が明けて冷静になった彼らはようやく、そこに横たわった異変に目を向ける。


「……で、コレって誰なの?」


 朝になって、ようやく冷静になったヴァンが疑問を呈する。

 ヴァンの目の前には、完全に脱力して横たわっている女が一人。

 全身の汗やら何やらの液体まみれになって、ヒクヒクと小刻みに痙攣している。


「彼女は……『爪の一族』の姫だぞ」


「確か……ユラと言ったかしらね、この娘は」


 ルーガとヴァナが疑問に答える。

 二人もヴァンに抱かれたばかりだが……すでに何度目かになるため、慣れから耐えることができていた。

 しかし、初体験のユラはそうはいかない。

 全身のありとあらゆる場所を性感帯として開発され、一晩で百度近い絶頂を味わわされてしまったのだ。


「正直、生きているのが不思議なくらいだな……まあ、その辺りが殿の精妙さなのだろうが……」


 リザーがブルリと身体を震わせる。

 ヴァンは絶倫のテクニシャン、夜に負け無しであったが……女性を比喩でなく昇天させてしまったことはない。

 ギリギリの……底無しの快楽は与えるが命までは奪わない、本当にギリギリのラインを見極めて責めてくるのだ。


「サ……チュ……」


「おそらく、旦那様の暗殺を企んで侵入してきたのでしょうけど……闇夜の暗殺者も形無しですわね」


 ユラはすっかりメロメロのヘロヘロのグデングデンになっている。

 潤んだ瞳にはハートマークが浮かんでおり、ヴァンに抵抗する意思は完全に消えているように見えた。


「これは……俺の勝ちなのか?」


「そうだぞ、王者の勝ちだぞ!」


「ユラさんはもう抵抗できませんわね……とはいえ、『爪の一族』全体が屈服したわけではありません」


「然り。姫を堕としたことは良いにしても、やはり敵の一族は屈服させねばなりませぬ」


 ルーガ、ヴァナ、リザーがそれぞれ言う。


「それじゃあ、彼女の一族の村にも挨拶に行こう」


「ええ……コレまでの三つの村と同じように、『歓迎』をしてもらえばよろしいですわ」


 ヴァナがどこか痛快そうな表情で笑った。

 自分達の一族の宿敵である『爪の一族』……彼らがヴァンによって蹂躙され、屈服されるのはさぞや愉快な光景だろう。


「善は急げですわ。さっそく、参りましょうか」


「ああ、わかった」


「これはどうする? 殺すか?」


「……えつ…………」


 ルーガが倒れているユラを指で突きながら、訊ねた。


 ユラはヴァンのことを殺そうとした。

 仮に、このままトドメを刺してしまったとしても、誰にも文句は言われる筋合いはないのだろうが……。


「連れていこう。国に持ち帰る」


 しかし、ヴァンはもちろん首を振った。

 敵に対して容赦のないヴァンであったが……女性に対しては意外と寛容である。

 特に抱いた女性に対しては甘い。

 不可抗力というか、他の三人のついでに抱いてしまった形であるが……ユラはもはやヴァンの女。ヴァンの身内である。


「いいぞ、王者が好きにしてくれ!」


「旦那様のお望みのまま」


「殿の思うとおりにしてくだされ」


「わかった」


 獣人三人娘の許可を得て……ヴァンがユラの身体を肩に担いだ。

 全裸で色々な体液に塗れた女を荷物のように運搬して、『鱗の一族』の集落から出ていく。


「おい、アレって……」


「『爪』の姫ではないか?」


「何故、裸なのだ?」


「それよりも……雌の匂いがすごいぞ」


『鱗』の住人達が全裸で運ばれていく女に唖然とした目を向けてくる。


「これは……哀れですね」


 そんな姿に、ヴァナが顔を引きつらせる。

 こんな醜態をさらしてしまえば……ヴァナであれば、二度と表を歩けない。


「『爪』は嫌いですけど……さすがに、同情しますわね。本当に」


 ヴァナは憐れむような目を宿敵の姫に向けて、「これからは優しくしてやろう」と心に誓うのであった。

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