第43話 転移の護符
会場では、探索者達がダンジョン内を探索する様子が巨大スクリーンに映し出されていた。
1つのモニターに4つのウィンドウが常時表示されて、それぞれのドローンにリンクした映像が、代わる代わる映し出されていく。
「さぁー。各グループ一斉に魔法陣によってダンジョンに侵入しました。ダンジョン内では速くもモンスターとの熱いバトル、アイテム収集が始まっております。今回、実況席にはダンジョン解説歴10年の田辺さんがお越しいただいております。田辺さん、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「田辺さん、いよいよダンジョン・カップ始まりましたね」
「そうですね。今年もダンジョン探索業で腕を鳴らした強者達が揃って、どんな戦いを見せてくれるのかとても楽しみです」
「そんな中、今回、初参加のC・エクスプローラー(クロエ・エクスプローラーの別称)がバラバラの魔法陣でダンジョンに入りましたが、解説の田辺さん、この作戦についてどう見ますか?」
「素人にありがちなミスですね。ダンジョン・カップは短期決戦。いかに戦力を集中させるかが肝。それが探索スピードを速くしてひいては入賞条件を満たすことに繋がるのです」
「では、C・エクスプローラーにはもう入賞の芽はないと?」
「ないですね。入賞は今年もステータスを仕上げてきたリトル・ガーディアンか、Dライブ・ユニットか……」
「あーっとここで速くも入賞条件を満たした選手が現れたとの情報が来ました。入賞条件を満たしたのはー……、C・エクスプローラーの坂下選手です。特殊アイテム賞である〈オリハルコンの聖杯〉を手にしたとのことです」
「……」
「ダンジョンに入って20分。速い! 余りにも速い入賞条件の達成です。いきなり予想を覆す波乱の展開。解説の田辺さん。これをどう見ますか?」
「いやー。これがダンジョン・カップの難しいところですね。間違った戦術を取っても、スタート地点付近に運良く特殊アイテムが落ちていることがある。C・エクスプローラー、幸運でしたね」
「では、田辺さん的には坂下選手のこの入賞は偶然だと?」
「マグレですね。これ以降はシーエク(C・エクスプローラーの略称)厳しいと思います」
「さぁー。波乱の展開で幕開けしたダンジョン・カップ。今後、果たしてどうなるのでしょうか。目が離せません!」
榛名にマップ情報を送り終えた悟は、すぐさま真莉にもマップ情報を送り始めた。
(真莉の近くに運勢関連のアイテムは? ないか。じゃあ、入賞条件に関係のあるアイテムは? おっ、〈転移の護符〉があるじゃないか。これで最速到達賞を取ってもらうか)
悟は真莉のドローンに〈転移の護符〉とゴール付近にピンを落としたマップ情報を送信した。
そしてさらに予定ルート上及びその近辺のオブジェクト情報も送っておく。
真莉はなるべく遊びの余地を作っておいた方がいいタイプだ。
目標に必要な情報以外でも送っておけば、悟にも見えなかった可能性をマップ情報から見出してくれる可能性が高い。
真莉は周囲を警戒しながら、ダンジョンを歩いていた。
そしてやはりコメントに返答している。
「やっほー。ダンジョン・カップ始まったよー。えっ、速く進まなくていいのかって? いいの、いいの。どうせ最速到達は榛名が取るだろうし。私は
真莉はドローンに表示されたマップ情報の中に〈火薬花〉とリザードマンの密集している場所があることに着目した。
(〈火薬花〉で〈
それを思い付いた真莉は、早速行動に移した。
〈転移の護符〉の埋め込まれている岩壁を錬金術で変形させて、〈転移の護符〉を取り出すと、次の階層へと向かう(〈転移の護符〉は1階層しか進めない)。
そして、次の階層でも〈転移の護符〉を取り出して使い、さらに次の階層でも〈転移の護符〉を取得する。
そしてそこで一旦、寄り道して〈火薬花〉を手に入れると、次の階層ではリザードマンの群れの上方に転移する。
吹き抜け構造になった階下を見ると30匹以上のリザードマンが
まだほとんどの冒険者が3階層までしか辿り着けていない状態で、リザードマン達は自分達の頭上5階層に真莉がいることに気付かない。
真莉は〈火薬花〉から〈
そうして下に向かって投げる。
爆発が起き、リザードマンの群れは全滅した。
このダンジョン内にいるモンスターは200匹程。
ルート数は大まかに分けて10ほど。
1グループ20〜30のモンスターを倒すのがせいぜい。
そしてそれを4人で分けるので10匹もキルできればかなり多い方だった。
30匹以上キルした真莉が最多撃破賞に輝くのはほぼ確実となった。
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