第7話 大切なもの
「わっ、壁なんかも作れるんだ!!これは色んな使い道があるよ!」
「うん、土魔法はいろいろ作れるよ。」
「んー、石作りの道具を作ったりもできるのかな」
「石の形を変えたりもできるよ。」
「ある物の形を変えたりできる・・・それなら、例えば鉱石の形を変えたりもできるのかな?」
「変えてある形の物を変えられるかは、わからない、ためしてみる?」
「それなら、加工品から試してみようか?」
「うん、やってみる。」
トーヤがカバンから、ちいさいナイフを出してる。
水筒をだしてた時も見たけど、すごい。いろいろ、それにたくさん出てくる。
でも、なんだかカバンがなんだか前と違うような・・・?
「あ、このカバン気になる?」
「うん、きになる。そんなに大きくないのにたくさん入ってるの、不思議。」
「あはは、そう思うよね。」
「うん。」
「これはね、魔法の収納カバンなんだ。」
「魔法がかかってるの?」
「うん、カバン自体にも沢山入るように魔法が掛かってるんだけどね。もう一つすごい所があるんだよ。」
「たくさん入るだけでもすごいのに、まだあるの?」
「そう!このカバンにはとても大きな竜の魔石が入っていてね。その魔石に竜の魔法がかかっているんだ。」
「竜っ!?すごい、見たことない・・・っ」
「僕も見たことないんだけどね!すっごい強い竜らしかったんだ。人里に現れては家畜を食べたり、人を襲ったりする悪い竜だったんだって。」
「うんっ、うんっ。」
「でね、その竜には双子が居て、2匹は魔力で繋がっていたんだって。双子の竜は、魔力の繋がりを介して魔法で空間を繋げて互いが居る所にある物を引き寄せたり出来てたみたいなんだ。その力で獲物を分け合ったりしてたみたい。」
「わ、わ、すごいねっ。」
「でしょう!竜の力がやどってる魔石を応用して、実は僕の家の屋敷につなげてるんだ。屋敷にある物なら何でも取り出せるんだよ。」
「ふわぁ・・・。べんり・・・!」
「ものすっっっっごい高いらしいんだけどね。父さんが困った時は使えって持たせてくれたんだ。」
「トーヤのおうち、すごいんだねっ。」
「うん!父さんはすごいんだ。」
家族の事を話してるトーヤ、とてもうれしそう。
わたし、母さまは探し物があるって、いなくなっちゃったし、父さまはわたしが小さい頃にしんじゃったって母さまが言ってた。
母さまはたまに帰ってきてくれるけど、いつも一緒に居てくれるのはミーリャねーちゃだけだから、たまにさびしい。
わたしも、家族をつくればさびしくなくなるのかな。
「トーヤはすごいね。わたしもそういう魔法とか、使ってみたい。」
「あはは、僕自身がすごいわけじゃないんだけどね。父さんがすごいだけだし、僕自身は料理くらいしかできないからなぁ。」
「トーヤの料理はおいしい。すっごい。かみさま。」
作ってくれたウルフ肉のシチューを思い出して、口のはしからよだれが出てきちゃいそう。
一生わすれられないあじ。
「あはは、褒めすぎだよ。でも、ありがとうね。」
「いっしょう、トーヤの料理が食べたい。」
「一生かぁ、フィノはおいしそうに食べてくれるから、それもいいかも。」
「っ!!やったぁ!」
「フィノ、僕のご飯の話で元気になりすぎ。」
「あぅ・・・。だって、おいしいんだもん。」
「今日も楽しみにしててね。」
「うんっ!トーヤがお料理をがんばってくれるから、わたしは、魔法をがんばるっ。」
「ありがとう。生活に使える魔法なんかが使えるとすごく便利そうだね!」
「う?生活。どんなのがいい?」
「そうだなぁ、例えば火が出せればすぐに焚き火ができるし、水は言わずもがなだし、氷なんかがあると食糧の保存にも使えそうな気がするよ。」
「わたし、迷子の時にいっぱいひとりで考えたけど、あんまり思いつかなかった。トーヤ、すごい。」
「ううん、フィノは小さいのだし、あまり里から出る機会もなかったんじゃない?僕も住んでる町から出かけたりした時に父さんから教わった事だからね。」
「そうなの?うん、わたし、里から出たこと、ない」
「うん、そうだと思った。そういえば、聞いてもいいかな・・・?フィノはどうして迷子になったの?」
「うん。精霊と、追いかけっこしてたら里の外の森に入っちゃって・・・。」
あの時の事はよくおぼえてる。
精霊といつもの広場で追いかけっこをして、お話したりしてた。
はしゃぎまわって、かくれんぼをして、気づけばまわりはしらない場所で・・・。
しらない内に、ひとりきりになってた。声をかけても、誰も、いなくなってた。
不安になった。こわくなった。すぐにかえりたくなって、走りだした・・・それなのに。
いくら走ってもしってる所に出なくって。つかれて、木のそばにすわって。
・・・きづいたら、空が、くらくなって・・・。まじゅうの大きな声が聞こえてきて、こわくて・・・でもひとりで・・・。
わたし、すごく泣いてしまった。かなしくて、こわくて、さびしくって。
思い出したら、こころが、またからっぽになりそうになった。
「ごめん、フィノ・・・辛い事、思い出しちゃったよね・・・。」
「あぅ・・・。」
なみだがにじんでくる。はやく、かえりたい。
「こっち、おいで。」
「・・・うん。」
抱きついたら、頭をなでてくれる。
(トーヤ、あったかい。優しい。・・・やっぱりくっついてたい。)
森でまよった時に思ったこと。
走っても走っても、しらない場所。
まじゅうの大きな声が聞こえる度に、体がふるえる。
こわい、こわい・・・そう思っても、誰もたすけてくれる人がいない。
夜がきて、くらくて、まわりが見えなくなって・・・目の前の草のかげから何がが出てくるんじゃないかって。
なみだが、たくさんたくさん、ながれて、助けてほしいのに、誰かにいてほしいのに、誰も、いない。
走ってつかれても、おなかがへって力がはいらなくなっても。
誰も、いなかった。
座りこんで、なにもない、からっぽになった。
右を見ても、草と木があるだけ。左を見ても、こけの生えた石や岩があるだけ。
何回みても、かわらなかった。その時、思った。
これが、今なんだって。
ほんの少し前のわたしには、いつも笑いかけてくれるミーリャねーちゃが居て、おなかがへったら、おいしくってあったかいごはんを作ってくれた。
さむい夜には、いっしょのお布団で寝ようって、ぎゅって、抱きしめてくれた。
さびしい時にはいつだって、誰かがわたしのそばに、いてくれた。
その時、わかった。
大事な誰かが、やさしい人がそばに居てくれる事が、どれだけ しあわせ なのかって。
しあわせの後ろがわにはいくらだって不幸や悲しみあるんだってこと。
大事にもっておかないと、とてもかんたんに失くしてしまう事。
だから、思った。
トーヤが今、そばにいてくれること、とてもとても、しあわせな事だって。
わたしからも大事にしたいって思った。
(ありがとう・・・っ。)
くっついていたら、なみだは止まってた。
トーヤのにおい、安心する。ずっと一緒がいい。
・・・トーヤとなら、家族になったっていい。
「・・・落ち着いた?」
「・・・うん。ありがとう、トーヤ。」
「ううん、僕の方こそ、ごめんね。・・・もう大丈夫?」
「うん、トーヤがいるから、大丈夫になった。」
「そう・・・?それなら良かった。じゃあ続きを話そうか。」
「うん、話す。魔法だけじゃなくってトーヤのことも、しりたい。」
「うん、僕もフィノの事を知りたいな。」
「うんっ。」
そこからはいろいろな事を話した。
魔法だけじゃない、いろいろな感じた事、わかった事やわからない事を、聞いたり話したりした。
まじゅうと初めて会ってこわかった事や、まじゅうを殺したこと、たくさん流れるまじゅうの血に、今度は自分のしてることがこわくなった事。
まもののお肉を食べようと、苦労してお肉を用意したのに、焼いた時に焦げてしまって、お肉がにがにがになってしまった事。
しゃべる魔獣と会って、口げんかをして食べられそうになった事。
里の精霊とちがって、外の精霊はなんだかいじわるだったりする事とか。
ミーリャねーちゃが怒ったらとってもこわい事。
トーヤは生まれて13年だって事や、わたしが9さいな事、妹がいるって事も。
トーヤのお父さんはきびしいけど、やさしい事。
しらないトーヤの事をしられてうれしかった。
わたしの事をしってもらえてうれしかった。
・・・・・・でも、妹の話をする時のトーヤ、とてもうれしそうで、なんだか、ちょっと・・・むぅってなった。
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