第6話 話し合い

「え・・・?」




トーヤが驚いた顔してる。


わたし、変なこと言ったかな・・・?


人間は、エルフを殺したり傷つけたりする。


村の誰もが知ってるし、本当に傷つけられた人も知ってる。


ミーリャねーちゃは人だけど優しい、でも村では嫌ってる人のがたくさん。


ミーリャねーちゃ自身も、怖い人間はたくさん居るって言ってた。




「え、でも・・・僕は人間だけど普通に話してるよね。もしかして、誰かに傷つけられたりしたの・・・?」


「んーん。わたしが何かされたことはないよ。というか、ミーリャねーちゃ以外の人間とお話するの、初めて。」


「なら、僕とも話すの怖いはずだよね?もしかして・・・怖いの、我慢してる?」


「ぜんぜん。なんか・・・トーヤは違うの。」


「違う?」


「うん、なんかね、ミーリャねーちゃといっしょなかんじ。」


「一緒・・・?よく分からないよ。」


「わたしも。でも、初めてなのに、くっつきたくなる。」




わたしはそのまま、トーヤをぎゅってする。


良いにおい、安心する。まるでミーリャねーちゃにぎゅーされてるみたい。


トーヤの手がわたしの頭をなでる。


もっとしてほしい。




「フィノ、確かにエルフにひどい事をする人型人種も居るって聞くけど、皆が皆、エルフにひどい事をする訳じゃ無いよ?例えば僕の父さんにはエルフの親友が居るし。エルフと仲良しの人間も沢山居るよ。逆に人間と仲良しのエルフも居るんだよ。」


「・・・そうなの?」




トーヤの目はなんだか悲しそう。


でも、里のおとな達は人間の話をする時、とてもこわい顔をしてた。




「うん、だから・・・フィノの里の人達は人間にひどい事をされた人が居たんじゃないかな。」


「・・・。」




トーヤは悲しそうな顔をして、頭をなでてくれてる。


わたしはうれしいけど、トーヤが悲しそうだから、うれしいのに悲しくなった。


下を向いていると、トーヤがしゃがんで、ぎゅーをしてくれた。




「フィノは人間と関わりたくない?ゆっくりで良いよ。考えてみて?」


「わたし・・・は。」




トーヤが優しく言ってくれる。


(わたしは・・・)


トーヤは人間だけどやさしい。


ミーリャねーちゃも、人間だけどやさしい。


やさしいのに、里の大人たちはねーちゃが嫌い。


ミーリャねーちゃは、母さまが居なくなった時、ずっとそばに居てくれた。


村の大人たちが母さまとたくさん喧嘩をした時、泣いてる私を朝になるまで抱きしめてくれた。




(わたしは・・・!)




どきどきする。とてもこわい顔をしてた里の大人たちを思い出して体がふるえてしまうけど・・・。


トーヤにぎゅってして、口に出す。




「なかよくしたい・・・っ」





「わっ・・・!?」




急に、体がぎゅってされたと思ったら、今度はふわってなった。




「なら、実際に話してみたり関わってみて、フィノ自身がどう感じるか、知ってみよう!」




トーヤがわたしを抱っこしてた。


さっきとは違って、とてもうれしそうな顔でわたしを持ち上げて。


何だかとてもなつかしい感じがして、体といっしょで心もふわふわした。




「フィノが仲良くしたいって言ってくれて、嬉しいよっ」


「・・・うんっ」




トーヤの、すてきな笑いがおをみて、ぼーっとして、その後にうれしくなった。








「よし、じゃあ次はフィノのできる事を教えてもらってもいい?」


「うん」




わたしの出来る事・・・えっと、まほう?と、何ができるんだろう。


里に居た時も、家の事はミーリャねーちゃがしてくれたし・・・あとは精霊のお話を聞くくらい?


迷子になってる間も、魔法をつかう事以外はほとんど何もできなかった。


まじゅうのお肉も、うまく焼けなくってまっくろくろになっちゃったし・・・。




「えっと・・・魔法?」


「そうだね、森ウルフも簡単に吹き飛ばしてたし、フィノの魔法はすごいと思う。」




わくわくした顔でトーヤが言う。




「普通、魔法は詠唱が必要だったりとか、杖なんかが必要だって聞くけど、フィノは素手のまま使ってたよね。」


「うん、使おうと思ったら、手から出る」


「そうなの!?詳しい事は知らないからわからないけど、思ったら出るってすごい事の様な・・・。」


「んーん。里のみんな、手からなんでも出せるよ。みんなできるから、すごくない。」


「えぇ・・・?何でもってすごいとしか言えないと思うんだけど・・・。」


「わたしもわからない。」




わたしは気づいたらできる様になってた。


なんでかは知らないけど、里のみんなはできる。


でもミーリャねーちゃはできないって言ってた。




「うーん、理屈はわからないけど、とりあえず出来るって事はわかった。何でもってことはあの時使ってた風意外の魔法も使えるの?」


「うん、何でも出せるよ。」


「石でも?」


「うん」


「水とかも?」


「うん、だせる」




なんだか、トーヤの目がきらきらしてる。きれい。




「じゃあ・・・例えば、木とかも出せる?」


「んー・・・やったことない」


「なら、今ここで試したりもできるかな?」


「うん、いいよ。」




わたしは立ち上がると、何もない地面に向けて、手をかざす。


そうしたら、ぴょこんと、地面の上に芽がでた。




「おおおぉ!?す、すごい・・・木は出なかったけど、何もない地面に急に芽が生えるなんて・・・!!」


「なんか、でた。」


「何の植物の芽なんだろう・・・。でもすごいね!」




トーヤはすっごく感心してる。なんだか、嬉しくなってほっぺたがゆるんじゃう。




「あはは、フィノ。すごく自慢そうな顔してるよ。」


「そ、そんなことない。こんなの、ふつう。」


「あははははは。」


「えへへ・・・。」




トーヤが笑うと、わたしもうれしい。




「他にはどんな物が出せたりするのかな?色々試してみよう!」


「うんっ。」




(次回へ)

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