第11話 初夜
なんだかお風呂から変な感じだった。これはお湯が熱いからだ。そのせいだと何度思っても変に色っぽく見える。
待て待て、向こうは中学生だ。まだ子どもだ。意識する方が変態だ。ここは主導権を持って、体を触ろうとしたらガードされた。なぜっとサーシャを見ると。
「そういうのは部屋に戻ってからです」
「う、うん」
待て、なんのうんだ。
「あ、忘れていました。着替え」
「先に脱衣所入った時に上から持ってきた」
「ありがとうございます。先に上がって待ってますね」
これはお風呂を先に上がって待ってるという単純な事だ。向こうもまだ
普通にお風呂を上がって、体を拭いて、いつもの行為が何か意味を持っているかのように感じて、緊張している。
寝巻きを着て、戸締りを確認して上に上がった。
中は電気が付いていて、枕元には本が積んであった。
「お待ちしておりました」
正座のまま礼をされた。あれ? なんか思っていたのと違う。
「初夜ということで勉強して準備をして参りました。まずはキスを」
「ちょっと待った」
「嫌ですか?」
「嫌では無いし、その覚悟もしているけど、思っていたのと違う」
「参考図書によると」
一冊取ってみた。
題名は『くノ一の拙者男として育てられ女主人をお守りしているうちに主人を意識してしまう。これは切腹物。実は主人も拙者を』と。
「長い、題名が長い。もっと短いの無いの?」
「これを読めた多幸感で他は」
みんな時代物の百合物。
「その藍を主人に見立てて、あくまで配下として初めてをいただく所存で」
「あのね、サーシャは私のことをどう思っているの?」
「愛しています」
「それが全てでそれが大事だよ。私もサーシャが好き」
サーシャの顔が明るくなった。
「いっぱい抱きしめてあげる」
「それ以上がいいです」
「それ以上はサーシャがいつか日本に戻ってきてからの楽しみにしよ。私は待っているから、ずっと」
一晩中、サーシャを抱きしめながら色々な話をした。
寮の管理の先生がマッチングアプリで男漁っていたこと、隣のクラスで女の子同士ですんごい事をしていた。
やってみたいと言われ体を触られているうちに体が冷えてきた。
でも、私の知識ではそこから先が分からなかった。
湯冷めした私たちは沸かしなおしたお風呂で初めてのちゃんと好きだと言いあって、大切なキスをした。
「藍は私の初恋です。遠くにいても忘れません。私の心は貴女と共にあります」
「私もいつでも想っているよ、サーシャ」
「嬉しい。貴女を愛しています」
送別会でサーシャは流暢にお礼を言い、みんなを驚かせた。何故か私は鼻が高かった。
本当のお別れは私の家だった。
一瞬立ち寄った私の家、抱きしめたのは礼儀では無く、それ以上。
「元気でね」
「藍も」
今年、二十歳になった。成人式も終わりお酒やタバコが合法になった。大きな街の空港から鉄道に乗り継ぐらしい。ここは確かに少し不便だ。
私の大切が改札からやってくる。
背も高くなった私の彼女。
「藍、ただいま」
「おかえりサーシャ」
背が低くキスが出来ない。「仕方ないですね」と言って、屈んだサーシャにキスをした。
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