全州安全保障会議
第27話
『連絡船ペンキ爆弾事件』から始まった一連の連続テロ事件は、『アビレーシティプラザビル爆破事件』の後も猛威を振るうこととなる。
4日後の夕刻、トニー賞作家マコト・カイの新作のフェルタ初演で賑わう劇場が爆破された。アビレー社交界を代表する人々――皮肉にもフライ市長の呼びかけに応じ、敢えてこの不穏な
ラフ・サンデルスの姉も劇場に居合わせていた。幸い、彼女は最初の幕間でホールを後にしていて惨禍を避けていたのだったが、彼女を送り出した母はすっかり
『ピカデリー劇場爆破事件』では61名が死亡し、355名の重軽傷者が出たが、その2日後には更なる恐怖が市民を襲う。富裕層の街区〈トリックディストリクト〉にある名門私立小学校に男が押し入り、13人の児童を人質に教室に立て籠ったのだ。やはり犯人は爆弾を持ち込んでいた――。
その危険極まりない男は
市警のSWATとともにビデオスコープで室内の様子を窺っていた
トゥイガーが〝
その時、スコープ先端の
ベアタは、現場に築かれた即席の
両開きの開き扉に肩口から身体ごと体当たりし、押し開けた扉の先の床の上でくるり回転して身を起こす。床に座らされていた児童の向こうに居た犯人に向け、9ミリ拳銃弾を正面から4発、胸と肩と腹とに叩き込んだ。犯人は、手の中の
そうして事が終わると、ベアタは先ずラッピンに〝
誰に言われるまでもなく、自身の〝暴走〟――控えめに言ってその表現が妥当だろう…――を自覚していたベアタが、消沈した
「――…お疲れ」
言って、ヘーゼルナッツ&ミルクのカップを差し出す。ベアタの好きなフレーバーだ。
ベアタは素直にそれに手を伸ばした。
「……怒られました。独断専行だって」
「あたりまえだ――」
サンデルスは肩をすくめると、硬い声にならないよう気を使っている感じに応じた。
声音は気を使ったものだったが、やはり微かに怒気を感じた。
それは仕方がない。
一歩間違えれば、13人の児童らを巻き込んで大惨事を引き起こしていたかもしれない行いだった。今回は
いまは只、人質となっていた児童に死傷者が出なかったことに感謝するばかりだった。
「――…次に〝動く〟ときには、対番にはサインをくれ」
サンデルスはそれだけ言うと、今日はこれまでとばかりに離れていったのだった。
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