零細ソシャゲの雑魚に転生しました。主人公を倒してしまったので、代わりにクセ強美少女たちとセルラン1位を目指します

麦茶ブラスター

死因:詐欺広告


『おにーさんのために、水餃子を作ってきたの……ふーふーしてあげるね……』


「ああ、10連勤の体に水餃子が染み渡るぜ……」


『ふーふー……ふーふー……』


『ビビッドテイルロイヤルウォーズ!!!!!!!』


「うわあああ耳がああああああああああああ!!!」


 動画サイトでASなMRでも聴いて癒されようと思ったら、クソ広告で台無しだ。


『ビビッドテイルロイヤルウォーズ』は何処にでも現れる無駄にバリエーションに富んだクソ広告のお陰で、【テロ】の愛称で憎まれている。


いわゆる広告詐欺ソシャゲというやつだ。


『ここはレベル10以下立ち入り禁止です!帰宅!』

『そう。なら、私はどうでしょう?』

『ええ、レベル150!お入りください!』

『今すぐダウンロードで、最高レアを獲得!233連ガチャを取得してください!』


 格闘少女ランレイ、機装妃ティアラなど……めちゃくちゃイラストだけは可愛い女の子たちがクソ寸劇を演じる、15秒のスキップできないクソ広告を見終わった。


 疲れ切った俺はもう「5つ星シェフの妹があなただけにつくる水餃子ASMR」を聞く気力も無くなっていた。


「イラストは良いのに……俺の方が絶対マシなゲーム作れるって……」


 もうコンビニ弁当食って、さっさと寝てしまうか……


『それ、ホントですか!?』


 するとどこからか可愛い女の子の声が聞こえてきた。幻聴か。いくらなんでも疲れすぎている。


「ああ、それどころか神ゲーにだってできるね」


『やったぁ!では、お願いします!』


「え?」


 幻聴が返事をしたと思った瞬間、スマホがふわふわと浮き上がり、窓の方へ飛んでいく。


「ちょ、ちょっと待てよ!俺のスマホ!」


 なんでスマホが飛ぶとか、そんなことはどうでもいい。

 それがないと生きていけないんだ。


 ベランダから飛び立とうとするスマホを両手でひしと掴み、なんとか抑えた。


「はあ、はあ。なんなんだよ、一体……あっ」


 あっ。


 地面が、ない。



「う……ここは?」


 目が覚めた俺の目の前には、暗闇。

 ただの暗闇だ。


 どこを見渡しても、ひたすら黒。

 そんな空間を、俺は落下し続けていた。


 20秒、40秒、1分……


「なんだこれ、【テロ】のローディング画面かよ……」


 正直に言うと、俺は一度だけ【テロ】をダウンロードしたことがある。


 うざい広告のゲームを、クソゲーと知りながらダウンロードしてしまう、そういう経験がある人は多いと思うが、俺も見事にその一人になってしまった。


そして【テロ】のローディング画面は、キャラが映ったりもしない、なんと暗闇なのだ…手抜きにも程がある。


『あーあー、テステス、聞こえますかー。返事してー』


 暗闇を見つめて5分ほど経ったその時、気の抜けた声が耳に流れてきた。


「聞こえてますよ!誰ですか?」


『あ、良かった。えっとですね。私女神です。あなたは世界異常ワールドバグに巻き込まれました。なので、ちょっと転生先がおかしくなっちゃうんですよね』


「な、なんですかそれ!?転生って、俺死んだんですか!?」


『死にましたよ、マンションのベランダから、どーん。即死です。本来なら異世界に転生するんですが、世界異常ワールドバグで……いやあ、ごしゅうしょうさまです』


「いや、だからなんですかその世界異常って」


『私どもも原因を調べているんですが、まだわからなくて……とにかく、あなたはゲームの中に転生します。異世界は我々が管理しているのですが、ゲームは人間の管理下なので……』


「管理下なので……?」


『ちょっとあれです、あの。えーとですね……大変申し上げにくいのですが……』


 もったいぶるなあ。


『えっと、あなたの転生先は『ビビッドテイル……』名前なっが……とにかく、ソシャゲです。しかも、相当不人気のやつ。サ終したら、あなたは存在ごと消えて、転生し直すことも出来ません。なのでそのう……頑張ってください!』


「え?」


 サ終したら存在ごと消える?


 ぶつんと声が消えて、俺はそのまま暗闇の中へ吸い込まれていった。

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