第72話 オークのブレゼ(3)
カチカチと作業をするお姉さん。
数分もしないうちに一枚の画像が表示される。
:はっえぇ~
:ものすげぇ~
:仕事できるお姉さんでしたか
:分かりやすいな。
「出~来たっと♪ さてさて、大まかなポジションは今表示されてる画像の四つだよ♪」
表には以下のように表示されている。
武術や格闘術などの近距離攻撃担当【アタッカー】
魔術や飛び道具の遠距離攻撃担当【シューター】
回復、バフやデバフの後方支援担当【サポーター】
相手の攻撃の防御、ヘイト管理担当【タンク】
「もっと細かく分けられるけど、今はこんな感じかな」
:へぇ~こうなってるのか(今更)
:まぁ、基本的にタヌポンソロだしな
:分からないのもしゃ~なし
:訓練所でも習う所だから初心者のためになるにゃ~
:ためになる配信だ~(棒読)
:では、この配信での出来事を真似すればいいんですね
:絶対にやめとけ(真顔)
:化け物を量産するな
:全部イレギュラーなタヌポンが悪い
:結論、タヌポンが悪い
「なんでだよ!?」
「あはは、まぁタヌポンちゃんの動きは異次元だけど、若い世代だとポジションを兼任するってこと自体は別に変なことじゃないんだけどね?」
:えっ?
:マジで!?
:タヌポンの動きが正解……だと……
:ポジション兼任って普通じゃないの?
:今普通だよね?
:あれれ? 可笑しいと思ってるのおじさん達だけ?
:う~ん、新世代はそういう感じっては聞いたことある
:旧世代のわいには無理な芸当でふ~
:新世代? 旧世代?
:ま~た知らない単語だよ
:またぴねだ! またぴねだよ!!
「そうそう、コメントにもあったけどタヌポンちゃんや宇佐美ちゃんみたいな新世代の探索者は、スキル構成がポジション兼任が出来るマルチスキルなのが特徴的なの、ポジション特化なスキル構成なのは旧世代って言われてるね。お姉さんもギリギリ新世代だよ~」
:新世代って確か三十前半まで……
:あっ……年齢……
:何か……ごめん
:大丈夫、だよ? おじさん、もっと生きてるし?
:年齢ほぼ晒し状態、ドンマイ♪
「謝られると余計心に来るんだけど!?」
「若作り……」
「ねぇ、今とっても失礼なこと言わなかった!? 宇佐美ちゃんだって、見た目小学生なのに実年齢は、にじゅうn――」
ビシャン! という音が響くと虎のお姉さんが無言になる。
音だけの情報だけで判断すると水の弾丸を撃って、虎のお姉さんを黙らせたようだ。
「あら、手が滑ってしまいましたわ、ごめんなさい? ――それで、今何か、おっしゃいましたか?」
「……いえ、何でもありませんです」
「そう、それならいいんですわ」
:お姉様、こわぁ~い♪
:女性に実年齢聞くのはNG
:聞いたっていうか、言ったっていうか……
:言ったのも女の子じゃろがい!
:女の……子?
:やめてやれよwww
「もう、ここの視聴者達嫌い……お姉さんおうち帰る~!」
「まぁまぁ、ここはお姉さんとして大人の余裕を……」
「誰がアラサー行き遅れ女よ!」
「言ってませんが!?」
:もう、ほぼ条件反射で言ってて草
:気にしてるじゃないか
:少々いじりすぎたかな?
:タヌポンみたいな特殊な訓練受けてないんだからさ
:初心者に優しくしろとあれほど……
:教えはどうなってるんだ教えは!
慰めようとしたYさんにも当たるお姉さん。
面倒くさくなったのか、はぁ……と宇佐美は深いため息をつく。
「今度合コンセッティングしてあげますから、機嫌を直して下さいまし」
「本当♪」
「えぇ、セッティングしますわよ――タヌキさんが」
:草
:タヌポンにしわ寄せいっとるwww
:未成年に合コンのセッティング頼むなよ
:というか、タヌポン男友達いるのだろうか?
:最後ボソッと言ってるのが悪意ある
「おい……何で俺が、友達少ないの知ってるだ――」
「だから、さっさと説明に戻ってくださいまし」
「あいあいさー♪」
「人の話を聞けよ!?」
:やっぱこの配信はこうでないと
:タヌポンいじりがないと盛り上がりに欠けるしな
:案の定男友達少ないのか
:むしろ多い要素どこ?
:コラボ者全員身内の女性、ネット交流不得手
:そして、女性が集まるなら、男性からのヘイトは多い
:つまり男が寄り付かなくなる
:証明完了!
:会社でしか出会いがないのに多いわけないだろ!
タヌポンの言葉を遮って、強引に話が進む。
「さて、いよいよタンクが少ない理由だけど、単純にダンジョンでのモンスター退治が効率化しちゃった影響なんだよね~ダメージを受ける機会も少なくなっちゃてね」
:あぁね?
:つまり?
:攻撃パターンがマニュアル化されてるからってこと
:攻撃が分かってるのに避けない奴もおらんだろ?
:ならわざわざ受け止める理由もないってことだな
:未知のエリアの探索なら重宝するけど
:既存のエリアだと微妙ってことね
「そういうこと~他にも探索者の低所得化が進んじゃって探索者人口の減少、歩合制の導入が止めを刺しっちゃったのが要因だね」
「攻撃手段が少ないサポーターも同様ですね。私は、シューターとサポーター両方のスキル構成なのでいいんですが……」
「タヌポンちゃんのスキル構成って、ほぼタンク特化だし、弱点看破は一応サポーター系とも言えなくないけど、どちらにしてもタンクとサポーターの混合ポジは不人気なんだよね~」
:タヌポンのスキルで今分かってるのって?
:鉄壁、挑発、弱点看破、全耐性
:う~ん、改めて見ても攻撃系スキルなしはやばい
:あのレッドドラゴン戦のスキルは?
:多分鉄壁の応用的なのじゃね?
:そうなの?
:攻撃あったら先に使ってるでしょ
:あのタイミングでスキル獲得って主人公かよ
:そんな奇跡ないよな
:なら、ステータスのゴリ押しか?
:考察はスレでやってくれ
「まぁ、でも彼は努力家だったからね。努力し続けた結果、最弱スキルのオンパレード達で、今や二つ名レベルの実力者になったんだからすごいよね」
:すごいレベルが天上天下唯我独尊なんだが?
:一人だけドラ○ンボールの世界なんだよなぁ
:ステータスを鍛えたら最強になっていた!
:どこのなろう系?
「まぁ、結論としてはスキルが弱かろうと努力すれば探索者にはなれるってことだ。俺なんてライセンス貰ってすぐにダンジョン潜ってたら、一ヶ月くらいでB級になれたんだし、攻撃スキルある奴はもっと早くいけるいける」
:そうなの?
:いや、ちょっと待て!
:一ヶ月でB級なったって言ったか!?
:普通早くても一年がかりでなるんですが!?
:うん、真面目にそのスキル構成でどうやったの?
:ステータス元々高めだった?
「セーフゾーン以外で、ずっとソロでモンスターと隣り合う危険な状態を過ごし、約一ヶ月近くをダンジョンで暮らした、頭おかの発言ですから、絶対に真似しないでくださいましね?」
:はい?
:今、なんて?
:セーフゾーン入らずに一ヶ月!?
:眠るのままならなくない!!?
:いや、それ以前にほぼ休みなしだよ!?
「タヌキさんも、それを人に勧めるのはやめてくださいまし、下手したら死人が出ますわよ?」
「……? ダンジョンは命を懸ける場所だろ? これくらいの命懸けは普通じゃないか?」
「「……」」
:お兄様、常識が……
:おかしいのは強さじゃなく頭でした
:考え方がダンジョン開拓時代の人のそれ
:命懸けのサバイバルでの強さならある意味納得
:他人に優しく、自分に厳しくは聞くけど
:やりすぎですよお兄様!?
:優しさしか知らない化け物
:努力の化身だろ?
:うん、強さ以前に中身が狂人!
:自分にストイックすぎね?
:タヌポンは精神の方がヤバい奴だった
:ドエムもここまで来ると怖い……
:いくら俺達でもそれはやらねぇよ!?
:悲報、ドエムにすら頭おか認定される
「はいはい、いつものいじりな。それより、ようやく解体も終わったし、料理を始めようぜ? これじゃ料理配信なのかダンジョン講座配信なのか分からん」
:い ま さ ら
:でもためになったよ
:ありがとう虎のお姉さん
「……お礼言われると、次に何か言われるんじゃないかと構えてしまうわね」
「分かる。配信みてる視聴者は上げて落とすの好きだからな。いつもそう」
:ひどい言われよう……
:失礼な!
:俺達だっていじる相手くらい選ぶ権利がある
:そうだそうだ
:ただ、いじられる推しがみたいだけだ!
「「お前ら(あなた達)の愛情表現歪みすぎだろ(でしょ)!?」」
コメントとそんなやりとりを、セーフゾーンまで雑談しながら移動した。
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