第70話 オークのブレゼ(1)

 ビーストダンジョン


 滋賀県と京都府間にある比叡山近辺のダンジョンで、獣型のモンスターが多く出現し、難易度も手頃で初心者向きで、知る人ぞ知る隠れた大規模ダンジョン。


 そんな、ビーストダンジョンの90層の光景がタヌポンの配信に流れる。


「皆さんお久しぶりです!」


 タヌポンが挨拶するとコメント欄が流れ出す。


:待ちくたびれた~

:地方イベント参加してない勢には超久しぶりだわ

:イベント楽しかった!

:最後の料理が衝撃強すぎ~

:あっ、都心の人には分からないか♪

:唐突なマウンティングw

:俺じゃなきゃ見逃しちゃうね


「はいはい、喧嘩しないでくれよ。でも、イベントに来てくれた人達もありがとう」


[シュガー]:【¥5000】イベント参加は義務だお


:出たわね、シュガーニキネキ

:安定の投げ銭ぶりでw

:イベント会場で荒ぶってそう(小並感)

:バーサーカーさんの目撃情報あった?

:いや、特にそれっぽい人はいなかったな

:バーサーカーさんwww

:それで分かる俺達も俺達だよ(草)

:悲報、シュガーニキ狂戦士呼びされる

:そりゃあ(あれだけ高額投銭してたら)そうでしょう

:投銭狂戦士、字面だけならかっこいい

:絶対ルビ振りされてるだろw

:スローマネーバーサーカー

:アンリミテッドマネーワークス

:体はお金で出来てそう。

:くそだせぇwww

:ほんで、結局のところどうなの?


[シュガー]:普通にイベントを見ておりましたお?

[シュガー]:推しに迷惑かけるなど、オタク失格だお

[シュガー]:皆さんもしっかりマナーは守ろうだお


:まぁ、確かにそれはそう

:口調意外は真面目

:正論ではあるんだけどなぁ~

:何か納得いかない

:それな

:(シュガーニキ)スン……

:うわぁ~! 急に冷静になるな!?


[シュガー]:あんたら、超失礼何だお!!



 タヌポンも記憶を思い起こすように、腕を組む。


「確かにシュガーさんっぽい人は見かけなかったなぁ。認識出来なくごめんな。でも、楽しんで貰えたなら良かったよ」


 タヌポンが手を合わせて感謝を伝える。


[シュガー]:くっ! 顔面にお金投げたい!


:恒例のタヌポンよいしょw

:抑えるんだシュガーニキ!

:というか、それはもはやいじめでは?

:限界オタク! 今こそ、ここに極まれり!

:時おじたんは特撮世界に帰ってもろて


 視聴者とそんな会話をしていると、タヌポンの肩を画面外から手が出てきて叩く。

 タヌポンがその方向を向くと、肩が少し下がり嫌々そうに向き直る。


「えぇ……はい、お話はここまで、今日は配信タイトルにある通り、久しぶりのコラボということで……素敵な(笑)ゲストを紹介したいと……思います。はぁ……」


:めっちゃタヌポン不服そうw

:タヌポン嫌がり過ぎでしょ(草)

:そりゃあ……ねぇ……

:相手が相手だから

:視聴者に優しいタヌポンを怒らせる唯一の人

:もう天敵レベルw

:料理のジャンル違い、初手の煽り

:だが美少女!

:そこがいい!!


 タヌポンが画面外に出ると、兎の仮面をした小柄な少女が出てくる。


「皆さんお久しぶりでしてよ♪ ラビットムーン店長、宇佐美ですわ~♪」


 宇佐美はゴスロリのスカートの端をつまみ、一例する。


:きたぁぁぁぁぁ!!!

:美少女キタコレ!!

:幼女! 幼女!

:ツルペ……

:おいこらやめろ

:バンされるぞwww

:というか、物理的にもバンされる!

:この方、二つ名持ちでしてよ!

:一瞬で塵にされましたてよ~

:お掃除の時間ですわ~♪

:口調が移ってましてよw

:お前もな~

:ちょっとは自重しろよコメ欄


「うわぁ……」


 画面外からぼそりとそんな声が漏れる。


:ほら、今画面外からタヌポンが呆れてるぞ!

:許して下さい兄貴

:安心して、俺はコンちゃん一筋だから!

:こんな美少女に負けたりなんて絶対しない!!

:即落ちしそw

:姫騎士かよwww


「あらあら、ごめんなさいね? タヌキさんの視聴者をわたくしが奪ってしまったみたいですわね♪」


 クスクスと画面外のタヌポンを笑う、宇佐美。


:顔は見えないけど完全にメスガキムーブ

:メスガキに……なんて……

:もう既に負けとるやんけwww

:折れるな! 戦え!


「はい、次はスタッフの紹介だな」


:淡々としていらっしゃいますわね!?

:もう、視聴者の寝取られは慣れてるんでしょ

:頭を既に破壊されてる……だと……

:壊されると思って先に壊しておきました♪

:強すぎんだろwww

:ドエムでも寝取られはNG

:やっぱつれぇわ……

:つれぇわニキは過去に何があったんだ……


 コメントがそんな事を言ってる間に、画面には龍の仮面をした大人しい少女、虎の仮面のお姉さんが元気よく登場した。


「やぁやぁ初めまして、カメラマン担当、虎のお姉さんだぞぉ~」


「えっと……カメラアシスタント匿名希望のYです」


 ガォ~と手をわしわしする虎のお姉さん。

 その様子を一歩引いて見ている、Yさん。


:虎のお姉さん元気いいっすね

:虎のお姉さん――スタイルいいし絶対美人なはず

:だけど、何でだろう……

:近づいてはいけない地雷臭がかなりするんだ

:というか完全にYさん陽子ちゃんで草

:陽子はん、何してはるんですか!?

:コラボのご予定ありましたっけ!!?

:いや、だからこそ匿名何じゃね?

:途中で偶然あったからオフコラボ的な?

:あくまで二人のコラボだから邪魔したくないのでは?

:にゃるほどな~


「えっと……大体理由はそういうことなので、あくまでYってことでお願いします」


:りょ

:りょぴ

:了解でござる

:今、忍者がいたぞ!?

:古のオタクかもしれないだろぉ~!!?

:今時いねぇよあんな口調って言おうと思ったけど

:シュガーニキがいたわwww

:案外、身近でした


「さて、紹介も終わったし、そろそろタイトルコールを……」


「今回は、これですわ!」


 タヌポンが言い終わる前に画面のテロップが表示される。


「オークのブレゼ、ですわ♪」


:オークか……

:さっきの姫騎士伏線でした?

:俺は預言者だった……だと……

:まさかの伏線回収

:というかブレゼって?

:フランス料理の一つ

:簡単に言えば、蒸し煮ですわね

:食材と水を密閉状態で容器に入れて

:オーブンで加熱する手法ですわ♪

:お料理系詳しい一般令嬢いるの草

:ネットではよくあることよ

:あってたまるかwww


「おま、勝手に! まだそっちにするなんて――」


「早い者勝ちですわ~♪」


 宇佐美が画面外に消え、タヌポンと言い合いをしている。


:明らかにタヌポン動揺してて草

:もしかして、さっきまで料理案二人で争ってました?

:二人とも料理の方向性違うしね

:あり得る……

:早い者勝ちですわ~は子供感あって好き

:この人もう成人してんだけどなぁ……

:見た目がロリなら歳は関係ない!

:歳がどうこう言ってるロリコンは二流よ!!

:なんだぁ……てめぇ……

:真のロリコン、キレル!

:いや、どっちにしろダメ人間だよね!?

:何、この変態VS変態の絵面

:カオス?

:イエスロリータノータッチって言葉知ってます?


「え~と……とりあえず移動しますね?」


「レッツゴー♪」


 画面がしばらくお待ち下さいの表示がされ、タヌポン達は移動する。

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