人鳥菩薩の生涯
「そうなんだ。じゃあ僕たちは殺し合うしかなさそうだな」
ペンギンたちの言い分は分かった。故郷を失いこの地球を新たな故郷にしようとしている。フィクションで何百回も見たようなありがちな動機だ。
その動機を聞いている間に、僕たちは周囲を囲むペンギンから集中砲火を受けた。僕はまだまだ余裕だけど、大神さんは肉片になっている。肉片があーとかうーとか言っているが、大神さんはここからが強い。まあなんとかなるだろう。
菩薩の野郎、金縛り状態にして一方的に自分たちの主張を喋って気持ち良くなりつつ、囲んで殴るとは。人間の並みの耐久性しかない
「汝の戦友は肉片と化した。汝はどうする?抗うか?」
ついに菩薩も拳を振り上げ、僕の顔面を殴りにかかる。そろそろ殴り返すか。
「抗う?殲滅するんだよ菩薩野郎」
僕の身体に亀裂が走り、人間のガワから怪人の生体装甲に構造を入れ替える。人間態だと金縛りで動けないけど怪人態なら動ける。菩薩の金縛り(詳しい理屈は知らない)も僕が怪人態になったら破れる。だってこれ物理干渉っぽいし。サイコキネシスか?物理的に干渉してきているっぽいし単純な肉体性能の向上で破れるだろう。これで駄目だったら無差別放火でどうにかする。相手の耐火性を超えるだけの火力で全てを焼き尽くす。僕も無事じゃ済まないと思うけど。
「変身解除」
怪人である僕が人間の姿から怪人の姿に戻るならば、それは変身解除という表現が妥当なところだろう。僕の怪人態は、弐瓶勉先生の『ABARA』に出てくる黒ガウナというか本物チェンソーマンみたいな感じらしい。怪人態で鏡とか見ないからよくわからないけど。怪人態は全身を甲殻で覆われて寝癖も出来ようが無いし、化粧する肌も無い。だから鏡見ることが無い。
とにかく黒い甲殻類的な生体装甲に包まれた僕の拳が菩薩の拳を迎撃した。
菩薩の拳にひびが入る。筋力と硬度で菩薩を優越した。
そして次の手を打つ。
「地獄門、開門」
僕の周囲の地面が割れて、炎の柱が立ち昇る。僕に喰われた燃え滓たちが炎の中から這い出てくる。
「燃え滓たちよ、ペンギンを蹴散らせ」
燃える骸骨や燃えるバイクに
「ヒャッハー!!」
燃え滓たちとペンギンが戦闘を始める。ペンギンにペンギン殺させるのは僕も気の毒だと思うけど、これも僕の仕事だからね。
まあ雑兵の処置はこれで良し。僕は菩薩との殴り合いに集中しよう。
ボクシングじみた拳の応酬。僕の拳は軽く殴っても相手を砕いていくが、菩薩の拳は殴る度に砕けていく。硬度が違うんだよな。
菩薩の
「馬鹿な!!この菩薩が硬度の差で劣るだと!」
口では動揺している風の台詞を吐いているが、戦意は未だ衰えていない。諦めたら種族全体が終わりという重責を背負っているからだろう。
菩薩はすぐさま立ち上がり、僕に向かって間合いを詰めて来る。
「どうした?菩薩が僕のような怪人如きに負けるのか?迷えるペンギンたちの救い主なんだろ?」
煽っていたら、菩薩の拳の重さが増した。生体装甲を貫かれ腹に拳が突き刺さった。やっとダメージらしいダメージを受けた。菩薩の奴、サイコキネシスで拳の硬度を補強したのか。考えたな。
「第二ラウンドだ」
「僕ももう少しギアを上げよう。君は何処まで僕に手札を切らせることができるかな?」
それで終わるならその方が楽という理由で殴り合いしていたけど、それじゃあいけないか。
僕の視界の端、菩薩の後ろの方で大神さんの肉片が集合し、肉でできた八尺ほどの長さの剣になっていた。一旦神剣を経由して、軍神を降ろすんだろう。大神さん神剣
「虚空刀」
菩薩がサイコキネシスで空気を固めて振るってきた。間合いは分からないけど、直線的な攻撃だけど、致命傷にならない程度で受ける。上下に切断されて地面に倒れる。僕レベルの怪人なら上下半分にされても直ぐにくっつく。受けて問題無い攻撃だ。そして有利を確信し、菩薩は油断する。
「勝った!!殺人ペンギン星人の夜明けは近い!!」
案の定油断した菩薩は微塵切りにされた。意識外からの八連続斬撃だ。
大神さんは下半身四つ足の獣になって復帰してきた。その下半身は馬のようにも鹿のようにも見える。頭部からは鹿の角のようなものが飛び出して、肉を寄せ集めてできた八尺の神剣を持っている。
「寝言は寝て言え。木偶の棒はそこを退け」
菩薩の頭部を大神さんは踏み潰した。そして大神さんは僕の燃え滓とペンギンの戦いの中に居てなおも棒を押して回している細身の男に歩を進める。歩を進めるというか
「何故襲う!?ただここで棒を押しているだけで!?」
大神さんの
じゃあ僕は上半身と下半身をゆっくりくっつけているから観戦に回るよ。
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