殺人ペンギンの聖戦
「長くないですかこの階段?」
「ああ。相当深いな」
馬鹿みたいに長い階段を下りて、やっと地下室にたどり着いた。
鉄の扉を蹴り開ける。
そこは地下室というには巨大過ぎた。建造途中の建造物が幾つも建ち並ぶ地下都市とでも言うべきものだった。
扉から出てすぐ目の前には工事中の大通りがあった。人影もペンギンも見当たらない。
所々が未舗装の大通りを歩いていく。一般的に工事現場で使用されている建機や機材が置いてある。どうやって搬入したんだ?僕たちは階段から下りてきたけど、別のところに機材搬入用エレベーターでもあったのか?
「そういえば大神さんって酸素が無くても活動できますか?」
「ある程度は可能だ……と思う」
ペンギンどもに火は効かないし、この地下都市燃やすのはペンギン殲滅してからにするか。
数百メートルほど歩くと、何らかの装置から突き出た棒を押して回している者がみえた。見た目は腰布を巻いただけの細身の男に見える。だけど、この気配は……
「紅世、私が先に行く」
大神さんは拳銃を構えて慎重に近づいていく。僕も大神さんの後をついていく。
「貴様。その棒から離れて両手を頭の後ろで組め。変な動きをすれば殺す」
大神さんは拳銃の安全装置を外して細身の男に銃口を向ける。緊張するなあ。神と遭遇するのは暗殺六課の刑事になってから片手の指で数えるくらいだ。僕は相手の神格とか分からないから強さを測れない。大神さんの感覚頼りだ。
というかペンギンたち、神を捕まえて強制労働させていたのか。怖いもの知らずだな。僕たちもペンギンのこと言えるほどマトモではないか。
「ん?汝らは余を助けに来たニンゲンではないのか?」
大神さんの命令を無視して、男は棒を押して回し続けている。助けが来たと思ったらその強制労働止めるものでは?
「目が腐っているのか?」
大神さんの語気が強くなっている。これだけ敵意を剝き出しにしても直ぐに暴力に走らないのが大神さんの善良さだと思う。神相手にすぐさま敵意を剝き出しにするなとは言わない。普段は僕の方が狂犬なので。
突然、空気が変わった。奇襲だ。
建設途中の建物の上から何かが飛び降りてきた。
男と僕たちの間にそれは着地する。
「我は
ペンギンの頭部がくっついた仏像みたいな奴が出てきた。僕たちの身長の倍くらい背がデカい。あとコイツ日本語を喋っているんじゃなくて脳内に直接意思を伝えてきているのか?身体が金縛りにあったみたいに動かなくて自称菩薩を黙らせられない。
「聞け。我らの物語を」
人鳥菩薩は語る。そして僕らの周囲を何処から集まってきたペンギンが包囲していた。絶対絶命だ。大神さんも動けなさそうだし、ここは反撃の機会が来るまで耐えるしかないか。
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