聖霊勇者学院の魔剣勇者

アイズカノン

第1話  廃城に眠りし姫勇者

 ⬛︎⬛︎⬛︎歴2023年。

突如として出現したある廃城に一台の車が入っていく。

 《『ここは前兆もなく突然現れた元年前の古代文明のものだ。慎重に調査しろよ。』》

 「はい。」

 「了解!。」

 車から降りた2人の少女。

1人は白っぽい桃色に銀色の瞳を持つ少女。彼女の名は【レティシア=ユーテシア】。

 もう1人は金色のツインテールと長い髪、翠色の瞳を持つ少女。名を【エミリー=ノルア】。

 2人とも白と水色のブラウスシャツにスカート、胸を強調するようなコルセットベスト、前止めしないボレロを身にまとっている。

さながら学生の制服のよう。


 そんな2人は突然現れた廃城に入っていく。

この廃城は見た目こそ廃城なものの、城全体に纏っている魔力に劣化の特徴がなく、調査することになっていて、彼女たちがその調査として今、現地に着いたところである。

 「行くわよ……。」

 「えぇ……。」

 中に入ると外観に似合わず綺麗に整っている。

所々崩壊しているものの、それ以外はいたって綺麗で。さながら作り物の廃墟のよう。

2人は歩を進めると建物2階分に相当する巨大な扉が現れた。

 「なんでー昔の建物ってこんな巨大な建物があるのでしょうね。」

 「あはは……、そうだね。うちの大聖堂もこんな感じの扉あったね。」

 そんな談笑をしながら2人は協力して扉を開いた。

その巨体に似合わず、身体強化しているとはいえ大きな扉を動かすのは一苦労する。

にも関わらず扉を動かすのはそこまで苦労しなかった。

 「この扉、なにか魔術的な細工されてるみたい。」

 「自動扉みたいな。」

 「そうそれ。さすが古代文明。魔術回路を使わずにこんなの作れるだからヤバいよねー。」

 「そうだね……。」

 扉に頬をスリスリしているエミリーを置いてレティシアは奥へと向かう。

奥には王座と思われる椅子と、床にひし形状の古代魔法陣、そして少女が閉じ込められてる結晶の柱。

 「内部を確認。魔法による効果で形状がされているみたい。見た目に反して特に目立った劣化は見られません。」

 《『了解。あとは適当なサンプルと魔法陣の画像を撮ってくれれば後でこっちで確認するから。』》

 「わかりました。」

 レティシアは部屋を板状の携帯端末で撮影する。

ここは魔法の影響で魔術的障害が発生して、通話以外の通信手段が使えないため、後で持ち帰って解析班にまわすようになっている。

 パシャ……。

 「なんでこんなところに女の子が……?。」

 そう疑問に思うのもつかの間。

地震に似た振動が建物を襲う。

 「ここにもいるの。エミリー。」

 『あいよー。今こっちでティアメントの襲撃にあってるけど、ここ特有の防壁が時間稼ぎになってるみたいだけど、早く移動した方がいいよ。』

 「わかった。私は結晶に囚われた少女を助けてから脱出する。」

 『ちょっと。囚われ少女って何?。それよりk―。』

 ブツンと通信が切れた。

どうやら聖霊深度が上がって通信が切れたらしく、回線が回復する様子はない。

 「なら。」

 時間が無いと判断したレティシアは銃のような魔道具を用いて結晶にダメージを与えるが、魔法の防壁なのか、結晶の特性なのか、魔力の弾丸が跳弾して建物に被害を与えるだけになった。


 ドンッ!という衝撃の後に壁が勢いよく崩れ去り、六つ目の模様がある白い仮面と黒いフードを纏った赤い天使の輪を持つ少女と5体の天使級ティアメントが内部に侵入する。

 〈[そこにいる非聖霊契約者に勧告する。直ちにこの場から離れろ。]〉

 「どうしてですか……?。」

 〈[君が知る必要は無い。知らない方がいい時もある。]〉

 「『嫌だ。』って言ったら……?。」

 〈[武力によって{執行}するまで。]〉

 仮面の少女は腕を{分解}、大砲のような形態に{再構築}した。

 ドンッ!

 〈[これは{警告}。直ちにここを離れなさい。]〉

 「くっ……。」

 レティシアは悟った。

今自分では勝てないと。

頬を掠めた魔力の閃光がそれを『理解』させた。

 「どうしたら……。」

 (「⬛︎⬛︎⬛︎。」)

 「えっ……?。」

 レティシアは何かに導かれるように結晶に触れる。

一瞬の立ちくらみの後に、魔法陣は解かれ、結晶は光の粒子となって{分解}された。

 「ノア……?。」

 レティシアは結晶から解放された半透明の黒髪の少女を抱えながら、文献と伝承にしか残ってない神代の本来存在しないはずの【勇者】の名を口にする。


 グサッ!

と仮面の少女はレティシアに剣に{再構築}した腕を胸に突き刺した。

 〈[遅かったか……。だけど{執行完了}。すみませんマザー。封印が……はい……はい……。わかりました。〔コード:ノア〕を{回収}した後に該当施設の{破壊}を{実行}致します。]〉

 仮面の少女はマザーの指示の元、ノアといわれる少女を連れて戻ろうした直後。

 〈[聖霊深度:5層突破……。これは……。]〉

ノアが眩い光に包まれると周囲の聖霊が同調、拡散、膨張、繁殖、増大し、仮面の少女と天使級ティアメントを一時的に怯ませた。

 〈[あれは……。まさか、【勇者ノア】。]〉

 それまで半透明だった黒髪が白く発光し、青く発光する瞳、青白い天使の輪と縦に伸びる光の翼、そしてドレスのような白い衣に機械でできた光の聖剣。

勇者ノアがこの世に顕現した。

それはあまりに美しく、恐ろしく。

 〈[くっ。緊急事態だ。リリト。コード:ノアを直ちに{緊急停止}させろ。]〉

 仮面の少女の命令を受けた5体の天使級ティアメント【リリト】は急いで勇者ノアに突撃した。

だが、勇者ノアとのすれ違いざまに1体を消失。

続けて背後から攻撃するも手にした聖剣にいなされ、振り向きざまに一撃。これで2体目も消失。

向かってくる3体目は目を向けただけで怯ませ、左からきた4体目を蹴りで退けて、右からくる5体目を斬撃派で消失。

体制を取り戻した3体目、4体目を斬撃で一掃した後に仮面の少女に向かう。

 〈[くぅ……。]〉

 両腕を剣へと{再構築}した仮面の少女は勇者ノアの聖剣の斬撃を受け止めて、弾く。

一瞬、怯んだ隙を狙って仮面の少女は赤く光斬撃をコマのように回転しながら勇者ノアに攻撃する。

しかし青白い炎を纏った勇者ノアに縦回転で避けれる様はまさに舞台のダンスのよう。

 〈[っ……!。]〉

 攻撃動作が終わった直後に勇者ノアから炎の斬撃で視界を覆われ、追撃してくる斬撃に上手く対処出来ずに剣となった腕は砕かれた。

 〈[しまった……。ここまでか。]〉

 仮面の少女は両目から赤い閃光を勇者ノアに向かって浴びせる。

それは撤退のための目眩し。

これ以上の戦闘は不可能と判断した仮面の少女は直ちにこの場から離れた。

 〈[あれがコード:ノア。かつて世界を救った勇者か……。]〉

 仮面の少女はマザーに見せられた{記録}を振り返りながら廃城を去った。

 「……。」

 ドサッ……と勇者ノアは倒れる。

白く発光した髪は半透明の黒髪に戻り、青い瞳は半透明の黒い瞳へと変わる。

機能を停止するように……。

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