ボッチ高校生ゲーマーがチンピラに絡まている女の子を助けたら、友達宣言されて毎日のように家に来きてはゲームするようになった件
柊オレオン
第1話 ボッチ高校生ゲーマーがチンピラに絡まている女の子を助けた
小学4年生の時、少し離れた街のゲーセンに入った。
昔からいろんなゲームをプレイしていたが、その中でも特に格闘ゲームに自信があった俺は道場破りならぬ、他の街に行ったら格闘ゲをするために他のプレイヤーに挑む日々を送っていた。
それは中学二年生まで続いて、そんなある日に俺の心は打ちのめされた。
「私の勝ち!」
口数の少ない帽子を目深く被った同い年の奴に負けた。
それも圧倒的に!!!
これまでの自信が崩れ去るのを感じて、俺は名前も聞かないで家に帰った。
家に帰ってから、あの子に負けた悔しさを胸にさらにゲームに没頭するのだが、受験生になってしまった俺は、勉強せざる負えなくなった。
最初はゲームがしたくて勉強をさぼろうとしたが親がそれを許さず、そのまま一年が過ぎて、俺は実家からは遠い名門高校、篠崎高等学校に合格した。
親はそれを喜んでくれて、これでやっとゲームができる。そう思ったのだが、その時にはすでにプロゲーマーになる夢もあの時の悔しさもぽっかり穴が開いたように虚しくなくなっていた。
□■□
「久しぶりにやってみるか?」
それはふとしたきっかけだった。
入学して間もないころ、高校からの帰り道、家の近くのゲーセンを見つけて入ってみた。
意外にも昔と同じように格ゲーには人が集まっていて、タイミングよく席が空いたので座った。
久しぶりに、座ったはずなのにジョイスティックレバーは俺の手に馴染んで、一人目を撃破した。
(面白いかも)
続いて、二人目が入ってきて夢中でゲームに没頭した。
(ハァ〜やっぱり俺。ゲームが好きだ)
気づけば、週4でゲーセンに通うようになって……。
「よし!俺の勝ちだな」
「くそ!これで5敗だぁぁぁぁ!!」
高校に入学して2ヶ月、今日も格闘ゲーで無双していた。
敗北した男が悔しそうに声を上げる。
「ほら、次に回せよ」
「わかってるよ」
そのまま席を立ち、後ろに並んでいる次の対戦相手と交代した。
次の対戦相手は屈強なおっさんで、見た目はゲームをしなさそうな感じだった。
椅子に座れば猛者であることが手つきでわかる。
「次こそ勝つぜ!」
「かかってこい」
対戦は接戦!かと思いきや、徐々に屈強な男の顔色が青ざめていく。
そして、「フィニッシュ!」とゲーム音と共に屈強の男はドンっ!と、台パンした。
「くそ!負けた!お前、チート使ってんじゃねぇのか!」
「使ってねぇよ、なんなら確認するか?まぁここはゲーセンだし、チートなんて使用できないけどな」
「くぅ、覚えとけよ!」
そう言い残して席を立ち、走り去っていった。
「…………はぁ、ほら、次こいよ」
こうして、負けることなく次々と対戦を繰り返すうちに俺はこのゲーセンの有名人になっていた。
そして、今日も気が付けば、最後の一人になっていた。
(次で最後か、調子がいいな)
やっぱり格ゲーは面白い。
週4ぐらいでこのゲーセンに通っているが、ここまで無双できるとは思ってもみなかった。FPSやRPGもやるのもいいが、ゲーセンの格ゲーは対面してゲームの強い人や個性的な人と対戦できて刺激的だ。
(でも、さすがに少し飽きてきたかもな)
さすがに2か月間もずっと格ゲーをしていれば飽きもくるし、無敗というのも味気ない。それこそ、あの時みたいな悔しさを体験できたら――――。
そう思っていると。
「さぁ、最後の一人は」
最後の対戦相手は黒パーカーに黒キャップを深くかぶる少し小柄な女の子だった。
(女の子だろうが、手加減はしてやらん!)
席の前に立ち、座るのかと思いきや、その子は俺のほうへと手を伸ばした。
「対戦、よろしく」
「あ、ああ、よろしく」
俺は慌てて、伸ばされた手を軽く握り、握手を交わした。
(焦ったぁ…………この子礼儀正しいな。今まであったことないタイプだ)
今までの対戦相手とは、一風変わった雰囲気に少し緊張したのか汗が手ににじむ。
そんな緊張感の中、「ファイト!」と、開始音が鳴り、対戦が始まった。
(この子、かなり強い)
最初は俺が優勢だったのに、気が付けば逆転されて一本取られた。
洗練された動き、誘導、コンボを見て間違いなく、このゲームをやりこんでいるガチゲーマーだと確信した。
(くっ! この感覚、あのときに似ている)
中学2年生の頃に感じた、敗北が近づいてくる感覚に。
「負けたくねぇ!!!」
吠えた!!! 俺の声に周りの人たちは盛り上がった。
「おい、吠えたぞ!」
「もしかして、ついに無敗記録が破られるのか!」
(こいつ、こんな小技もできるのかよ。…………下手をしたらプロレベルじゃねぇか?!)
俺は一切、油断なんてせず、今日一の集中力を発揮する。
全力で対戦しているのに、一切の余裕はない。
「どうだっ!!!!」
一勝を取り返した。
白熱した対戦に笑みが自然にこぼれる。
(これは、余計に勝ちたくなるじゃねぇか!!)
楽しくてたまらない対戦は盛り上がり、ついにファイナルラウンドへ。
ちょっとした動きのミスも許されない!
相手の隙を伺いながらの戦い。
お互いに一歩も引かない状態でついに決着がつく。
「よっし!」
「ま、負けた」
「おお!勝ったぞ!」
「無敗記録!またもや更新だぞ!」
周りの観客は大きく盛り上がる。
この対戦、勝ったのは俺だ。
「ふぅ…………ちょっと疲れた」
深く椅子に腰かけ、気が抜けた声が漏れた。
久しぶりに集中してプレイしたからか、両手が震えている。
(ゲームってこんなに楽しかったけ? いや、この子が強かったからか)
「うん?」
「いい勝負だった…………握手」
「あ、ああ、こちらこそ」
差し伸べられる手を握り、握手を交わした。
「それじゃあ」
「あ、ああ」
冷たく、何もなかったかのように背を向き、手を振り去っていく姿に俺は何とも言えない気持ちを抱いた。
「ちょっと、かっこいいな」
去っていく女の子を俺はかっこいいと思った。
中学2年生の頃に、同じように思えていたら、ブランクを作らないで今でもプロを目指していたのだろうか、と昔を懐かしんだ。
(ハァ〜ちょっと休憩してから帰るか……)
気分転換に缶コーヒーを飲んで、クレーンゲームで戦利品をゲットする。
「今日は一個だけか」
不細工な豚のキーホルダー一つをポケットに入れてゲーセンを出ると、路地裏から声が聞こえる。
「おいおい、こんな時間に一人かよ。俺といい事しようぜ」
最近、たちの悪いナンパ野郎がいると聞いたが、どうやらさっきの黒いフードの少女が絡まれているようだ。
普段の俺なら、絶対に助けない。
「なんですか、あなた達」
「そう冷たい目すんなって」
「ちょっ!?」
汚い手で黒キャップの子に手を伸ばすナンパ野郎。
熱い対戦に水が差されたような気がして、声を上げていた。
「おい! 嫌がってるだろ!」
「なんだお前!」
ナンパ野郎が、こちらを振り向いた瞬間、黒フードの子がナンパ野郎の股間を蹴り上げた。
「うわ〜」
「逃げるよ」
俺の手を掴んで、黒フードの子が走り出す。
「おっおい! 待て、くっ!」
暗かったこともあり、ナンパ野郎には顔を見られていないはずだ。
だけど、しばらく走って女の子と逃げ切った。
「あ、ありがとう。おかげで助かったよ」
黒キャップを深くかぶりながら、顔をそらした。
何とも言えない気まずい雰囲気が流れる。
(この状況、なんて声をかければいいんだよ。あっそういえば、漫画だとこんなセリフを吐いて、去っていくシーンがあったな。よし、これでいこう)
何を血迷ったのか、少し前に読んだ少女漫画のシーンを思い浮かべながら俺は口を開いた。
「それじゃあ、俺は帰るから。夜道には気を付けなよ」
「あ、うん」
俺はそのまま背を向けて、家に帰ろうとした。
その時だった。
「ちょっと待って!」
「うん?」
黒キャップの子が大きな声を上げた。
「なに?」
「そ、その…………名前、教えてよ」
「な、名前?…………
「千斗?…………苗字は?」
「
「柊千斗、…………千斗くん。うん、覚えた。助けてくれありがとう。また!」
「あ、ああ」
黒キャップの子は軽く手を振って、走りながら去っていった。
「まあ、なんもなくてよかった」
熱い対戦を繰り広げてくれた黒キャップの女の子が無事でよかったと、一安心する千斗は、家に帰り、ベットで眠りにつくのであった。
ーーーーーーーーーー
1年ぶりぐらいにラブコメを書きました。
ボッチ高校生ゲーマー×美少女ゲーマーという二人のお話で、基本的には二人のイチャイチャ、そして二人のそれぞれの友人関係や人間関係を楽しんでもらえたら、嬉しいです。
少しでも『面白い』『続きが気になる』と思ったら『☆☆☆』評価お願いします!!(ページ下から三回ほど押していただけると幸いです)
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