依頼達成と復讐~ダンジョンマスターになれてよかった~
「兵団を二個壊滅してきました、今後こちらに頻繁にくるようにしますので、何かあったらお教え下さい」
「有り難うございます!」
「あとお願いしたいのですが……」
「何でしょう?」
「聖女の服を着ているのも嫌になってきましたので服があればいただければ……」
「なんだ、そんな事を気にしてたのかそれ」
クライノートが指を鳴らすと、黒いドレスに私の格好が変わった。
「ど、ドレス?」
「私を使役する存在にはふさわしいだろう」
「もう……、ともかく一端ダンジョンへ戻りましょう」
『はい、ご主人様』
『おう、ご主人様!』
私達は神樹から離れて、ダンジョンへ戻った。
『おかえりなさいませごしゅじんさまー』
「ライム、誰か来た?」
『こなかったよー!』
「それは良かった」
『お前、ライムって名前なのか?』
『そうだよ?』
『ずりぃ、ご主人様、俺達にも名前を』
「じゃあ、アクアレディはネロ、サラマンダーにはランド、でどう?」
『ネロ、いい響きです』
『やったぜ、名前だ!』
喜ぶ皆を見てから、私はまたダンジョンをいじり回す。
「ここにサラマンダーとイフリートを配置して、逃げた所で鉄球を転がして潰すと……」
ブツブツ言いながらトラップやモンスターを配置していく。
「こんなものかな?」
私はそう言って、一息つく。
そうだ、この箱とペットボトル片付けなきゃ。
クライノートが持っていたマジックバックからからのペットボトルと、段ボールを出す。
「ライム、お願いなんだけど……」
『ご主人、その燃やせそうな箱俺にくれねぇ?』
「え、いいけど」
『やったぜ』
そう言うとランドは段ボール箱を食べてしまった。
「えー⁈」
「サラマンダーは燃やせるものならなんでも喰うぞ」
「知らなかった……」
『ごしゅじんさま、とうめいなのたべたよ、かたづけたよ』
「有り難うライム」
『俺は?』
「ありがとう」
ピコン
『冒険者が現れました、配信しますか?』
私ははいを押した。
「此奴等、其方を突き落とした連中だな」
「え⁈」
「大方名声とか目当てだろう、どうする?」
「全滅させてやります」
私は即答した。
信じていて、裏切られたのだ。
許すつもりはない。
ダンジョンの端を進んでいく連中、さっき作ったばかりの場所。
『お、また配信かぁ』
『この配信見ながら酒飲むのが乙なんだよなぁ』
『毒コウモリからは逃げたみたいだが、新しい道に進んでるな』
『うわーサラマンダーと火の精霊っぽいのがいるエリアに入ったー!』
『前にいた奴焼死したな』
『お、逃げ出した』
『と其処にたたみかける鉄球ー! 三人潰れて生き残ったのは一人ー!』
『逃げ出すがおおーっとスライムの群れに押しつぶされて溶かされていくー‼』
『今日も全滅! すげぇぜダンジョンマスターさん!』
『よーし投げ銭しちゃうぞー』
『俺も俺もー!』
『この動画に投げ銭するとスカッとするの俺だけ?』
『俺も俺も』
『私もー』
私はなんかすかっとした気分になった。
が、ダンジョンマスターになれなかったらこんな気持ちになれなかっただろう、クライノートには感謝しかない。
「クライノート」
「何だ?」
「有り難う」
「礼を言われるようなことはない、寧ろ私が礼を言わねばならぬ」
「ありがとう、ダンジョンマスターになってくれて」
私達は笑い合った。
ピコン!
『ダンジョンマスターレベル20に到達、スキル獲得魔法、魔法トラップ』
『そしてお金が入ってきたため、スキルが開放できます』
一つは精霊の使い魔
二つ目は、何処でもダンジョンマスター
三つ目は、お取り寄せ拡大
私は精霊の使い魔と何処でもダンジョンマスターを選んだ。
そしてその後、神樹の所へ行った。
神樹は相変わらず美味しい水を欲しがったのであげた。
「ダンジョンマスター様!」
この間あったエルフの青年が声をかけて来て頭を下げた。
「助けてくれて有り難うございます!」
「いえいえ、まだやることは残ってますから」
「え?」
私とクライノートは顔を見合わせて、飛び立った。
目的地はメルトディアス王国。
人間至上主義なんて糞みたいな国の王都。
城が燃える。
教会が燃える。
「これで当分大丈夫でしょう?」
「そうだな」
私達はそれを見送ってエルフの里へ向かった。
「ようこそいらっしゃいました、ダンジョンマスター様! クライノート様」
「そのダンジョンマスター様というのは辞めて欲しいです……ソフィアという名前があるので」
「ではソフィア様、ようこそ我がエルフの里へ!」
エルフ達が私達を興味深そうに見ていた。
「わが主のソフィアだ。ダンジョンマスターで人間共を屠っている」
「ソフィア様は何故ダンジョンマスターに?」
「突き落とされたんです」
「え」
困ったように私が笑って言うとエルフの方達は驚いた顔をした。
「何も知らぬソフィアを突き落として余を封印しようとしたが、封印はそもそも自分の意思がなければ意味がないもの。それ故落ちてきた際にダンジョンマスターの枠が空白だったため認識された」
「裏切られたんです、仲間に。もう報復しちゃっていなくなりましたが」
「そういえば、ドワーフの連中も困りごとがあるみたいだぜ」
「あの穴掘り族か……仲は悪くないが良くもないからなぁ」
「向こうにも神樹がある、それに仲介してもらおう」
「ああ、それと先日は有り難うございます。メルトディアス王国は壊滅状態に陥り、我らを攻め入ることができなくなったようで……」
「お礼は後ほどさせていただきます」
「ええ、では」
そう言ってクライノートと共にエルフの里を後にした。
ドワーフの里の神樹と話をする。
『ところで美味い水はくれんかの?』
と同じ要望をされたので同じ水をあげた。
『美味い! ドワーフたちは泥水ばかりでな、こう言う水は久しいのぉ』
「なるほど」
「おい、ドワーフがいるぞ」
「え」
振り返ると、髭もじゃの小さいおじいさんがいた。
「まさか、く、クライノート様⁈ そのお隣の方はダンジョンマスター様⁈」
「その通りだ」
「皆の者──救世主がやってきたぞーい!」
「はい」
「此処でも問題があるようだな」
「ですね」
集まってきたドワーフさん達から私達は話を聞いた。
私の母国──カレイド国のとある領主がこのドワーフの里の鉱山を目当てに兵を出してきているらしい。
なら、やることは決まってます。
兵団の殲滅と、領主のお家焼き払いです!
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