即興小説集

柊 奏汰

過去作再掲分

1 5年越しの再会

過去に書いていたものの再掲。

お題:自分の中の朝日

必須要素:力士

制限時間:15分



高校を卒業して5年。

必死に勉強して入った大学を卒業し、社会人1年目となった今年、2年ぶりにクラスの同窓会というものに出てみようかと思い立った。

そもそも同窓会なんて40人いた学級の半分揃えばいい方だと思う。

うちのクラスは妙に仲がいいメンバーが揃っていたから毎年幹事が何かしら企画してくれているけれど、もう集まることも無くなったなんて話も他クラスではよく聞く。


「よぉ、久しぶり」


聞き慣れた声に顔を上げて驚愕した。

そこに居たのは、クラスの中でもスポーツマンでモテる、サッカー部のエースだった筈であろう男の姿。

密かに好意を寄せ今回は会えるのではないかと期待していた、自分の中では朝日のように人生に光を当ててくれるような存在だった彼の何に驚愕したかって、その変わり果てた体格で。

顔は丸くなり腹は太鼓腹、服を脱いでまわしを締めれば、力士と言われても納得出来るような大柄の男に成長していた。

…この5年で一体彼に何があったのか。


驚きに言葉が出ない俺に、彼は苦笑して隣に腰を降ろす。

聞けば、スポーツを辞め学科とバイトに明け暮れ、そこで出逢った人たちとの付き合いの外食、一人暮らしの不摂生、その他様々な要因が積もりに積もって、今の彼の体格が形成されたのだという。

俺も最近職場の付き合いでビール腹になってきたかと焦り始めていた矢先の出会い。


お互い大変なんだなぁと昔話や最近の苦労話に花を咲かせながら、少しほろ苦い過去の憧れに想いを寄せた。

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