15 新聞とステータス
前回のあらすじ
シドはゴブリン討伐クエストを無事完了し、ゴブリンロードという強力な影霊を仲間にすることに成功するのだった。
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――翌日。
――吸血鬼との愉快な共同生活3日目。
ゴブリンロードを討伐&仲間にした翌日。
今日もてきとうなクエストを探そうと冒険者協会を訪れると、受付嬢のエミリーさんに声をかけられる。
「シドさん――今日はシドさんの実力を見越して、お願いがあるのですが」
「俺に……?」
「はい、冒険者協会から、シドさんへ個人的なクエストの依頼が来ているのです」
「(どういう事だ……?)」
『(ソロでミノタウロスやゴブリンロードを討伐する冒険者はそうそうおらぬ。おぬしの実力が評価されてきているという訳じゃな。受けてみてはどうかのゥ)』
エミリーさんから詳しい話を聞くと、王都近辺に乱立するダンジョンの1つ――B級ダンジョン【
「そのダンジョンは王都が管理しているダンジョンの中で最も遠い位置にあり、また等級もBと高めのため、攻略されることなく半年が経過しておりまして、協会の調査員によると近々ダンジョン崩壊の兆しが見られるとのことなのです」
ダンジョン崩壊――文字通りダンジョンが消滅する現象だ。
厄介なのはダンジョン崩壊が発生すると内部の魔物が外に溢れかえるという点だ。
それを食い止めるにはその前にダンジョンを攻略するしかない――具体的に言えば、ダンジョン最深部のボスを討伐し、ダンジョンコアと呼ばれる特別な魔石を抜き取る必要がある。
するとダンジョンは消滅し、しばらくすると別の新しいダンジョンが出現するという仕組みだ。
エミリーさんが先ほど言ったような、ダンジョンの等級が高かったり、王都からのアクセスが悪かったりして放置されている人気のないダンジョンは、協会がクエストを発行して報酬をエサにして冒険者にダンジョンを攻略させる。
だが――クエストを発行してもなお、件のB級ダンジョン【黒首塚】を攻略する冒険者が現れないので、俺にお鉢が回ってきたという訳らしい。
「普段であれば崩壊の兆しがあるダンジョンは、S級冒険者であるアルムガルド・エルドラドさんが率先して対応に当たって下さるのですが、今あの方は別の領からの依頼で、昨日から遠方におりまして頼れる冒険者が他にいないのです」
人類最強が王都を出た直後のタイミングで、ダンジョン崩壊の報告。
他に頼れる冒険者もおらず、新人の俺にお鉢が回ってきたということか。
「どうかお願い致します!」
エミリーさんは両手を合わせ、懇願するように俺を見つめてくる。
彼女の顔を見るに、かなり緊迫した状態のようだ。
「分かりました。そういう事なら引き受けましょう」
「ッ! 本当ですか! ありがとうございますッ!」
エミリーさんは弾けるような笑みを浮かべ、「お願いします!」と俺の手を握った。
俺の肉体には既に血が巡っていないからか、その手はとても温かかった。
***
――そんな訳で……。
俺は王都近辺のダンジョンを順番に巡回する、冒険者用乗り合い馬車に揺られていた。
金に余裕があるので、馬車での移動中の暇つぶしにと新聞を購入したのでそれを読む。
『勇者パーティシルヴァン、S級ダンジョン【
王都の冒険者協会には冒険者が数多く所属しており、有名パーティの活躍は国民の関心の的であった。
1面は勇者パーティがミノタウロスを倒したという記事――めちゃくちゃ嘘じゃねェか。
ミノタウロス倒したの俺だし(正確にはエカルラートだが)。
畜生、自分たちの手柄にしやがって。
シルヴァンは王族だ、新聞屋に都合のいい記事を書けと言われれば書かざるを得ないだろう。
誰だって失業したくはない。
気分がよくないので新聞をくしゃくしゃに丸めて馬車から捨てる。
『また着かぬのか……退屈じゃのうゥ』
「(移動時間は金が稼げない、遠い場所にあるダンジョンが攻略されずに放置され続けるのも納得だな)」
エカルラートと一緒にあくびを漏らす。
一緒に乗り合わせている冒険者は皆パーティを組んでいるので、仲間と談笑して時間をつぶしており、ソロの俺はアウェイだ。
新聞を捨てたのは失敗だった。
「(暇だしステータスの再確認でもしておくか)」
脳内で念じると、俺にしか見えない板が出現。
エカルラートはステータスウィンドウと言っていたな。
そのステータスウィンドウの文字を追っていく。
名前:シド・ラノルス
クラス:
レベル:38
HP:760/760
MP:825/825
筋力:133
防御:117
速力:145
器用:151
魔力:94
運値:76
スキル:【
状態:【不死】
俺が不死になってから更にレベルが3あがった。
不死になってS級ダンジョンから帰還したばかりのステータスと比較してみるとこんな感じか。
名前:シド・ラノルス
クラス:
レベル:34→38
HP:680→760
MP:750→825
筋力:120→133
防御:105→117
速力:130→145
器用:135→151
魔力:85→94
運値:71→76
スキル:【
状態:【不死】
ステータスの伸びも悪くないように思える。
これに加えて不死の肉体に、配下にした
しかし――ただ殺してもつまらない。
可能な限り屈辱的な敗北を味合わせて、死んだ方がマシだと思える程の苦痛を与えてやりたい。
そのためには圧倒的な戦力差が必要になる。
更にレベルをあげ、更に影霊を集めたい。
「(影霊の能力も確認しておこう)」
自身のステータスウィンドウを閉じ、影霊達のステータスウィンドウを出すよう指示を出す。
名前:ミノタウロス
ランク【A】
総合戦闘力5000
名前:オーク
ランク【C】
総合戦闘力1000
名前:ガーゴイル
ランク【C+】
総合戦闘力1100
名前:ゴブリンロード
ランク【B】
総合戦闘力3100
名前:ゴブリンウォーリアー
ランク【D】
総合戦闘力360
名前:ゴブリンシャーマン
ランク【D-】
総合戦闘力310
個体数:2
名前:ゴブリン
ランク【E-】
総合戦闘力50
個体数:240
影霊のステータスは随分と簡易化されているな……。
まあ、全ての影霊の詳細なステータスを表示されても覚えきれないから、簡潔に総合戦闘力で表示してくれるのはありがたいが。
ついでなので俺の総合戦闘力も教えてもらった所、2700とのことだった。
ゴブリンロードよりも若干低い数値。
昨晩俺がゴブリンロードに勝てたのは、不死の能力のおかげだ。
単純な腕力勝負なら負けていたので、この数値にも納得がいく。
「(ちなみにエカルラートはどうなっているんだ?)」
名前:エカルラート・ドレッド
ランク【SSS】
総合戦闘力60000
……1人だけ規格外だな。
もうお前1人でいいじゃん。
『最終的には妾より強くなって貰わんと、使役者として示しがつかんじゃろ、精進せよ』
簡単に言ってくれるぜ…………。
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あとがき
・ステータスウィンドウについて
ステータスを確認する能力。
シドは板と表現しているが実際はPCウィンドウのようなもの。
世界の理を見通すエカルラート・ドレッドをネクロマンスしたことで身に着けた。
シドにしか見ることが出来ず、ウィンドウに触れることも出来ない。
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