第10話 嫌な予感がするんだが?
女の子はウィズレットさんに任せておいた。
俺とアモネは聞いた住所へ向かい、ドアを
……なにか最悪なことが起きている。室内に入った瞬間そう理解した。
「デリータくん、これ!」
アモネが俺を呼び、視線を床へ
カーペットの一部に不思議な記号が刻まれていた。ちょうど
「この記号……」
そして俺もアモネも知っていた。それは
確かあの時、キャリーは……
必死になって会話と説明を思い出す。その結果、解読した暗号は、
「『東 三キロ 〇△×□』……他は読めそうにないな」
だが方角と距離さえわかれば、少なくとも行き先の検討はつく。
事態は差し迫っている。すぐに向かわないと。
「俺はすぐにキャリーの所に行く。アモネはどうする?」
「もちろん行くに決まってます!」
胸の前でぐーを作るアモネ。気合い十分なのは結構なことだが……。
「……忘れてそうだから言うけど、いま剣持ってないぞ?」
アモネはゆー……っくりと視線を
「……はい! ここは気合いとスキルで乗り切ろうと思いますっ!」
自信の力ってすごい。でも心強いな。
「わかった。俺も最大限守れるようにする。急ごう」
◇
「前がほとんど見えないな……」
ローヴェニカを出発して二〇分くらいだろうか。
ずっと東へ進んできた俺たちの前には、無限にも思える
五メートル先も危うい環境。ただの
俺の服の
「東に三キロならこの辺りになるかと思いますけど……見事に何もありませんね」
本当にそうだ。何もない。
……なんだか数分前の考えを疑いたくなってくるな。
本当に『東に三キロ』で合っていたのか。キャリーがあの暗号で伝えたかったことは居場所なのか――思わず思考が巡り始めた時。
ふいに、視界が明るくなっていくような感じがした。
「ちょっと霞がマシになってきたか?」
「そうみたいですね。この辺りだけ気象条件が変わっていたりするのでしょうか?」
この周辺だけがピンポイントで? ありえるか?
後ろをそれとなく見てみる。しかしそちらは
…………? 何やってるんだあの人?
三〇メートルほど前方。何もない空間をぼーっと眺める
その人影はしかし、俺たちに気がつくこともなく、更に奥の霞へと消えて行ってしまった。
人影が立っていた付近で立ち止ってみると、
「ここ、何か変だな」
アモネが何かってなんですか? と言いたそうな顔をしている。
だが、何かとしかいいようがない。
ま、ものは試しだ。やってみよう。
「消去」
「うわぁっ⁉」
アモネが
だが重要なのは、いきなり現れた廃れた屋敷のほうだろう。
赤い屋根と白い壁。外観こそ立派な二階建てではあるが、
「どうやら巧妙に隠されていたみたいだな。……にしても」
「なんだかイヤな想像をしてしまいますね……」
アモネも同じことを考えていたようだ。
「ああ。果たしてこんな場所を選んでこんなに上手に
「……、」
言い換えれば、モンスターに居場所を隠すような《スキル》が使えるのか? という決定的な疑問だ。
だが。
「今は考えても仕方ないな。キャリーが残した記号通りならアイツはここにいるはずだ」
「はい」
初めてアモネに緊張が現れた。引き結ばれた唇がへの字になっている。
なんだか妙に真剣なその顔が面白くなってしまった。
俺は
「そう
「……はい!」
キャリー救出、開始だ。
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