無理難題を吹っかけて婚約破棄をする方の心配する貴族の子弟達

山田 勝

無理難題を吹っかけて婚約破棄をする方の心配する貴族の子弟達

 今日、僕は婚約破棄をする。

 真実の愛を邪魔する憎いロザンナを、ここ、学園のパーティーで宣言するのさ。


 ロザンナは、我が伯爵家の窮乏につけ込み強引に婚約を結んだと聞く。


 全く、僕の美男子ぶりが恨めしい。幼馴染みのキャサリンと婚約するものばかりだと思っていたのに。


 え、大丈夫かって?


 大丈夫だ。


 我伯爵家は、ロザンナの商会からの上納金を元に事業を始め。持ち直した。


 それに、


 何故なら、僕は貴族、ロザンナは、平民だ!

 その違いは大きい。


 婚約破棄で、男が負ける例があったが、王妹殿下が王宮魔導師に、皇女殿下が騎士団長に、それぞれ、婚約破棄をされた。男の方は悲惨な末路をたどった。


 男の方の身分が低い場合は失敗する。


 今度は逆だ!


 貴族は平民に対しては何でもできるのさ。


 さあ、そろそろ言ってやりますか。


「ロザンナ!婚約破棄をする!真実の愛を邪魔するからだ!キャサリンを嫉妬のあまりいじめたと報告が上がっているぞ!」


「・・・あの、婚約破棄は承りました。伯爵様とお父様とのお話合いになります。キャサリン様については知りません。では・・」


 あれ、慌てない。憎たらしいな。すがれよ。いい見世物になったのに


「待て!」


 ここで、帰してはいけない。ここでケリをつける。平民は金、金、うるさいからな。


「平民のくせに、伯爵令嬢をいじめた罪、重いぞ!」

「キャサリ~ン、怖かったんだからぁ、ロザリン様から~睨まれたの~~」


「私はロザンナでございます。キャサリン様とは面識もございません」


 ・・・あの男とは、伯爵家が窮乏した時に、無理矢理、婚約を結ばされた。

 そして、散々、我が商会から援助金をむしり取ってきたのに、


「貴族を侮辱したな!キャサリン、どうする?」

「え~~、キャサリンは~ロザンロン様に、決闘を申し込む。エイ」


 キャサリンの投げた手袋が、ロザンナの前に落ちる。


「これは・・」


「決闘だ!キャサリンの代理人は私が務める!お前はどうする」


 手袋を拾わなければ、援助金の返還、違約金が帰って来ない。

 しかし、女の私が、この男と戦うのは無理だ。


 メイドのアンは、オロオロしている。目で合図よ。家に連絡よ。


 コクッと頷いたわ。分ってくれた・・


「キャ、おやめ下さい」

「「「ヒヒヒヒヒヒ、通さないぜ」」」


 アンが奴の取巻きたちに捕まった!


「決闘は、今、ここでだ。僕は剣術67位だ。ここにいる皆~、皆が証人だ!」


 ザワザワザワザワ~


 周りの学生たちはささやきあった。

「馬鹿な。何ていうことをしてくれたのだ」

「誰か、教えてやれよ。このパーティーには、婚約破棄されて傷心の王妹殿下と、そのご友人の帝国皇女殿下がいらっしゃるって」

「やだよ。巻き添えを食いたくない」


 ロザンナの悲壮な叫びが響く


「~どなたか~、どなたか~、決闘代理人をお願いします。お礼は、お父様がして下さいますわ~」


 お母様の協力のもと、お父様と商会の人達が、一生懸命に稼いだお金、何とかしなければ、今まで払ったお金と、違約金を何とかしても返してもらいたい。


「アハハハハハハハハハ、手袋も拾わないで、金で代理人捜しか。全く、金に浅ましいな!」


 そんな、お前こそ、友人の飲食代まで払わせたクセに、


『ロザンナ、これ、払っとけ』

『そんな。今日はデートのハズなのに、レストランに友人たちを大勢連れてきて・・どんちゃん騒ぎをするなんて』

『はあ?僕はおごられる世界線で生きてきたのよ。僕らは美青年だ!』

『そうだぞ。奢らないとモテないぞ』


 コジキめ!


「どなたか~お願いします・・・グスン、こうなったら私が・・」


 ロザンナは手袋を拾った。

 本人で戦うつもりだ。勿論、剣を習った事はない。


 その時、


 パラパラパラパラ~


 バラの花ビラが振ってきた。


「何故、パーティー会場で?」


 皆の視線が上に向いたとき。

「オ~ホホホホホホッホホホ~」


 女性の高笑いが聞こえて来た。


 視線を戻すと、


 メイドのアンを押さえていた取巻きたちがノビている。


 会場の真ん中に、蝶のアイマスクをつけた女性が二人いた。


「ロザンナ嬢の決闘代理人を受けましてよ」

「我も決闘代理人受けるのである!」


 紫のドレスに黒髪の女性と、身長190センチは超える大柄な女性、デブではない。体格が良い。


 蝶のアイマスクをつけて、謎の女性を演出している。

 しかし、この会場にいる者全員知っている人物である。


「あ、あの、グレース王妹殿下、婚約破棄された相手の王宮魔導師を幻覚魔法を廃人に追い込んだ魔法の天才にして、

 同じく、婚約破棄をされた騎士団長とガチケンカをして勝ってしまった帝国フローラ皇女殿下、何故、介入するのですか?

 王族、皇族は、決闘は御法度です!」


 しかし、二人はいけしゃしゃと口上を述べる。


「あら、私は麗しのグレース王妹殿下ではございませんわ。バラの妖精ですわ。乙女の涙に呼ばれてきましたの」


「我は華のフローラ皇女殿下ではない!好奇心旺盛な街娘である。イケ面を見たくて、学園に忍び込んだ!

 街娘は平民、同じ平民のロザンナを助太刀する!」


「何を言っているのですか!」

「キャサリンは~知らない~決闘や~めた!」


 スタコラサッサ


 と逃げるキャサリンに、グレースは扇子を向け魔法をかける。


「【エレガントドローン!】令嬢は溺れるときもエレガントよ。根性を見せなさい!」


 バラの花ビラがキャサリンを襲う


「ウゲ~、ゲホッ、溺れる~キャサリン溺れる~助けて」


「これは、許されません!貴族の決闘に、王族の介入など、僕は・・・ゲホ!」


 パンチ一発、飛ばされて、壁に激突した。


「フンハー、また、つまらぬものを殴ってしまった」


「そうね。婚約破棄をする者は、天地容れざる乙女の敵!王家、皇族は、貴族に対して何でも出来るのよ!覚えておきなさい!」


 二人は、校長に詰め寄り宣言をする。


「この決闘はロザンナ嬢の勝ちですわ。校長、貴方が証人ですわ。もし、いい加減な処置をしたら、知り合いの麗しのグレース王妹殿下に言いつけて、辺境のテラコヤに赴任させますわ」


「はい!勿論でございます!」


「この決闘は、ロザンナ嬢の勝ちである!違約金と援助金の返還の履行がいい加減だったら、知り合いの華のフローラ皇女殿下に言いつけて、殴る・・叱ってもらうぞ!皆で監視せよ!」


「「「「「はい!」」」」


「あの、有難うございます。おかげで助かりましたわ。フローラ皇女殿下、グレース王妹殿下、是非、お礼をさせて下さい」


(((うわ。言っちゃったよ。公然の秘密なのに)))


「我は華のフローラ皇女殿下ではない!殿下は部屋で刺繍をされておるわ!礼などいらん!同じ平民だ!困っている平民を助けるが良い!」


「麗しのグレース王妹殿下は、王城で、釣書が殺到して悩んでいますわ。私はバラの妖精、困っている乙女の相談に乗りなさい」


「はい!」


 二人は、仲良く王家の馬車に乗り。王城の方に向かって行った。

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