グンマーにあって群馬にあらず

見渡す限り藁

 スマホのアラームが鳴って、僕はいつものように目を擦りながら身体を起こした。

 寝起きはいい方だ。明け方近くまでオンラインゲームをしていて起きられないこともあったけど、基本的にはアラームですぐに反応できる。

 あー、今日も学校だ。だけど金曜日だから、今日を乗り越えれば休み。がっつりと夜更かしできる。

 あと一日頑張るぞ、という意気込みを込めて軽く伸びをし、目を見開くと。


「ふえ……?」


 思わず一昔前の萌えキャラみたいな呟きが洩れてしまった。いや、僕は至って普通の高二の男子学生なんだけども。

 だって目前に広がるのは藁。そして、なぜか僕が今座っているのは地べただ。


「もしかして起きれてない……? 夢かな」


 昨日ももちろん自分の部屋で寝たのに、ここは明らかに僕の部屋じゃない。キャンプ場に張ってある、テントみたいだ。

 いや、テントだって今はビニールだ。藁ってなんだよふざけてんのか。

 僕は夢から覚めるためもう一度横になったけど、地面の感触はやたら生々しかった。

 地べたに寝るとかいやだ!

 そう感じてしまうほど。

 ベタな方法だけど、とりあえず頬っぺたをつねってみる。

 ……普通に痛い。


「もしかして僕、誘拐された?」


 そうだとしても、藁ってなんだ。藁を屋根に使ってる建物ってイマドキある?


「ドッキリ?」


 こんな手の込んだドッキリを仕掛けられる知り合いなんていない。

 そうこうしているうちに、スヌーズモードにしてあったアラームが再び鳴った。とりあえずそれを止める。

 時刻は七時五分。うん、いつもセットしてる時間にアラームは鳴っている。

 僕は起き上がり、とりあえず周りを囲む藁の壁を見渡した。一ヶ所に出入口と思われる、スペースが一つ。

 ちょっと身体を屈めれば一人通れるくらいの幅のそこから外を見渡し、僕は驚愕した。


「な、な、ええ!?」


 外は草と木しかない草原。そしてそこを行き交う人たちは、上半身裸で腰箕(こしみの)を巻いた、テレビとかでたまに見る妙に肌の黒いどこかの民族みたいな人たちだった。


「ここ、どこおおおお!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る