第34話 味方は強い方が良い
シグムント帝国首都であるミレニアム。その少し南側――
「ここがヒーローアカデミーか……」
馬車内から遠く見える建物群。その周囲は白い堀に囲まれており、かなりの敷地面積である事が伺えた。あそここそが、俺がこれから訓練を受けるために行く事になるヒーローアカデミーだ。
本来、そこは帝国の精鋭を鍛える場所だった。だがこれから魔王襲来までの期間、国内外から集められた選ばれし若年のエリート達が訓練する場となっている。
「他の国の奴らは、兄貴の
王宮での勝負のあと、ネルガンはあっさりと掌を返した。今ではパワーで勝る俺の事を兄貴呼ばわりしてくる始末。分かりやすい奴である。流石脳筋。
あ、因みにこいつは俺と同い年だったりする。見た目が厳めしいため、てっきり二十代半ばは超えてると思っていたんだが……まあいわゆるふけ顔って奴だな。技術面が未熟だったのも、10代ならまあ何となく頷けるという物。
「入学試験も兄貴ならトップ間違いなしですよ」
アカデミー入学には試験が設けられている。この場にやって来るのは各国の精鋭な訳だが、想定する相手が
何せ、弱いと全くダメージが全く通らないからな。役に立つ所か、居ても邪魔になるだけである。
「もしそうなら……俺は逆に嘆く事になるがな」
「はぇ?何故ですか?」
俺の言葉に、ネルガンが不思議そうに聞き返して来る。聞かなくとも理由なんて簡単に気付きそうな物だが、戦闘スタイル同様脳筋の彼にそれを期待するのは酷か。
「なあネルガン。俺達の目的はなんだ?」
「もちろん!強くなって魔王を討伐する事です!」
「ああ、そうだ。で、だ……その際、仲間は強い方が良いと思わないか?」
「もちろんです!安心してください!このネルガン・オギュ、必ずや兄貴の期待に応えて見せます!!」
ネルガンは大声でそう宣言すると、自分の胸を力強く叩いた。質問の意図がまるで通じていない。少し迂遠に説明しすぎたか。
「そいつは有難い。で、話を戻すぞ。俺がトップって事は……それはつまり、味方は全て俺以下って事になる訳だ」
そう、俺がトップになるって事は、周りは全員俺以下という事になる。もちろん、現段階での話なので、将来的に抜かされる可能性もあるだろうが(俺は成長率増しマシだから、余程の事がない限りありえないけど)。
「とんでもない強敵と戦うのに、周りは全部自分以下。それよりも、自分より強い奴がいっぱいいた方が頼もしくないか?少なくとも俺はそうだ。だからアカデミーに入る奴らは、無能より優秀な方が遥かに有難い」
自分一人で勝てない以上、仲間は強ければ強い程良いに決まっている。
まあ出来れば、師匠の仇はこの手で取りたいと所ではあるが……だからと言って、何が何でも自分が戦いの中心に居たいとまでは思っていない。魔王を倒す事。それが全てにおいて最優先である。そのためなら、俺は脇役で結構だ。
「ああ、成程……ライバルが強ければ強い程、燃えるって奴ですね。さっすが兄貴!」
ネルガンが納得した様に、俺の言葉に頷いて見せた。
いや全然分かってないんだが?流石脳筋。さすのうである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます