第6話 普通に出せるな
「ふぅ……」
……出来たな。
何が?
オーラを出す事が、である。
地球にオーラなる物はない。そして俺は異世界人ではなく地球人だ。魔法が使えるとは言え、オーラまで扱えるかは未知数だった。だが爺さんにやり方を聞いてやってみたら、一発でオーラを発生させる事に成功した。
どうやら地球人でも、問題なくこの力を扱える様だ。これが使えないとこの世界では結構なハンデになる所だったので、助かる。
「「「「……」」」」
俺の姿を、4人がポカーンとした顔で見つめていた。
「ふ……普通なら短くとも数か月はかかると言うのに、一発で成功させるとは……お前さん天才か?」
はい、天才です。
まあ口には出さないが
「いや……さてはワシを担いでやがったな?」
爺さんはどうやら俺が元々オーラを使えたのにも拘らず、使えないふりをしてからかったと判断した様だ。そんな事は一切していないのだが、本来なら数か月かかる事を一瞬でやってのければそう思うのも、まあ無理はない。
「ははは、バレましたか」
俺は爺さんの間違った判断を敢えて肯定する。天才ってのは、どうしても無駄に目立ってしまうからな。教会の事もあるし、子供達の口から広がる事態は避けたい。
「やっぱりか。ワシを騙すのは10年早いぞ」
思いっきり口開いて驚いてたくせに、よくその台詞が出せる物である。
「あー、ビックリしました」
「うん」
「まあでも1段階までしか出来ないから、それ以降の方法はちゃんと教えて欲しい」
事前レクチャーで、オーラの習得には大きく分けて4段階あると爺さんから聞いている。一段階目はオーラの発生。子供達三人や今の俺の状態だ。
二段階目は只放出されているだけのオーラを全身に巡らせ、身体能力を上げる方法。発生しているだけの状態は耐久力が上がるだけで、二段階目になって初めて高いパフォーマンスを発揮できる様になるそうだ。
三段階目はオーラの効率的なコントロールを覚えた状態を指す。実はオーラが他人から見えてる状態は、エネルギーの無駄な垂れ流しが原因だそうだ。完全にコントロールできていれば、視覚的にオーラを見る事は出来なくなると爺さんは言っている。
召喚時に周りにいた奴らからオーラが見えなかったのは、全員この三段階目に達していたからだろう。
そして自分の肉体だけではなく、身に着けた武器防具なんかにオーラを宿らせる事が出来る様になれば4段階目だ。またこの段階に達すると、オーラを飛ばして遠距離攻撃なんかも可能らしい。
「たった100ボルで、習得方法全部教えろってのは少し虫が良すぎるとは思わねぇか?ああ、言っとくけど……一段階目が初めっからできてようが、情報は与えたんだからさっきの分は無かった事にはならねぇぞ」
そう言って爺さんは口の端を歪め、掌を俺の前に差し出す。業突く張りと言いたい所だが、まあ有用だからな。1000円で習得方法全部教えろって方が、厚かましいと言えばその通りではある。
「分かったよ。一段階につき100ボルでいいか?」
ぶっちゃけ、俺なら自力で4段階目に辿り着ける自信があった。それも比較的短期間で。何せ天才ですから。
じゃあなんで追加料金を払うのか?
天才とは言え、教えて貰った方が当然その効率は上がる。なので合計300ボル程度で済むのなら、爺さんに教え乞う方が手っ取り早いと思ったからだ。
異世界に来たばっかりで、俺にはやる事覚える事が無数に転がってるからな。少額で時短出来るのなら損はない。
「悪いけど……俺もそんなに金に余裕がある訳じゃないから、それ以上なら習うのは諦めるよ」
「ん……まあいいだろう」
爺さんが少々渋りつつも、俺の出した300ボルを受け取る。交渉成立だ。
「いいか、一度しか言わんからよく聞け……」
俺は爺さんから二段階目以降へ進むためのレクチャーを受けた。
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