剣と魔法のファンタジー~未知と謎の大陸を探検して、世界の秘密を解き明かす!~

kenken

第1話 俺は旅立つことに決めた!

「ううぅ、……お腹空いたな」

 ユウトは、両親はいない。この広い世界で孤独だった。

「お母さん、あれ食べたい」

 母親は笑った。「はいはい。買ってあげましょうね」

 子どもは、嬉しそうに笑って、歩き去って行く。

 ユウトはその光景を見ながらうらやましく思う。自分には両親がいない。不慮ふりょの事故で両親を失って、幼いころからずっと一人だった。

 どうして俺は一人なんだろう。

 ユウトは、さみしくて、お腹が空いて食べ物屋に入って行き、思わず売り物に手を出してしまった。

「コラ、餓鬼がき!」

 ユウトは店主に見つかって、ひどい大目玉を食らった。顔をなぐられ、腹に二、三発、りを食らった。

 くやしくて、みじめで家に戻った……。






「あんた何やっているのよ?」

 カナミは言った。

「別に」ユウトはベッドに寝転がった。

「またなぐられているです!」

 ユウトは首をふった。「これは違う。ちょっとして手違いだ」

「またいつものように悪さして、殴られたんですね?」

「違うよ」ユウトは何も言えなくなった。

 さみしさのあまり、店の商品に手を出したなどとは口がけても言えなかった。

「それより、お前は何しに来たんだよ?」

 カナミは言った。「ご飯でも作ろうと思って」

「俺に同情か?」

「違うです。」カナミは言った。「確かに、ユウトさんには両親がいなくて、貧乏びんぼうで、その日暮らしだけど、同情したことはないです」

「お前に分かるかよ」

 ユウトは言った。カナミはこの村では裕福な娘だった。

「お前はお嬢様じょうさまだろ」

「だから何ですか!」

「お嬢様に、俺の苦労は分からねぇよ」

「分かるるです」カナミは言った。「ユウトさんには両親がいないから、いつも一人で戦っていたです。稼ぎもないからいつも盗みを働いていた。虐めっ子にも負けないように、気を張っていた。盗みをしていないときはいいです。山に行って、山菜でもとっているときは。だけど、人の家の家畜かちくを盗んだり、人の家の夕飯をくすねたりして、悪ばかりしているときは心配だったです」

 ユウトは窓から外を見た。が暮れて始めている。

「わたしはずっと見て来た」

「生きる為だ」

 カナミはポケットからお菓子の包みを出して、投げた。

「うまいな」

 ユウトは口をもごもご動かした。

「俺、この島を出る」

「はっ!? いつ?」

「明日だ」

「突然です!?」

「今決めた」ユウトは笑った。「ずっと、外に出ようと思っていた。この世界は、未知の世界におおわれている。なんてったて、世界の九十パーセントは未知と不思議におおわれた魔法の世界だ。じっとしている手はねぇだろ」

「危険も多いです」カナミは言った。「この世界は夢と希望に満ちているけど、その一方、一歩間違えば簡単に死ねるです」

「夢見た人間が死んだニュースはよく耳にする」

「私たちは、まだ子どもです」カナミは言った。

「そんなの関係ねぇ」ユウトは言った。「俺は、危険だろうが、村から出て行く」

「死ぬことが怖くないの?」

「怖いさ」ユウトは目を輝かせた。「それでも俺は、この村に居れば、ずっと親のいない可哀かいわいそうな子どもだ。でも、外の世界ではそんな事関係ない。俺をただ一人の人間として見てくれるはずだ!」

「それでも」

 ユウトは笑った。「俺が死んだら嫌か?」

「それは」

「なら、心配するな」

「本当のことというです」カナミは言った。「わたしずっと前から、ユウトさんのいこと気になっていたんです」

 ユウトは笑った。「そんな気していた。でも、俺、無理。俺、お前のようなバカ女嫌い!」

 二人は笑い合った。

「もう止めないです」

「ああ」ユウトは頷いた。

「だったら、私を連れて行って」

「あぶねぇからダメだ」

「ユウトさんは、いつだって計画性がないし、世界には食べたらすぐ死んでしまう食べ物だってあるです」

「誤って食べて死ぬかもな」

 カナミは睨みつけた。

「だから、私が必要です!」

「お前は、お嬢様だろうが」

「ユウトさんの面倒を見れるのはあたしだけです」

「家族が心配するだろ」

「わたしは私の道を行くです」

 ユウトは大笑いした。「お転婆てんばだな」

 二人は一しきり笑いってから見つめ合った。

「なら、行こう。世界は広いぞ」

「未知と、不思議が広がる魔法世界だ」

「のんびりしていたら、置いて行くからな」

「私を置いて行ったら、ぶっ飛ばすです」

 二人は、荷物をまとめ、旅の準備にとりかかった。

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