気づいてしまったこと
「ここです!このお店前から来てみたかったんですよ……。」
そう言って大川が僕を連れてやって来たのはフローズンドリンクの出張販売店だった。
このエリアでは季節ごとにこの地域ではあまり見ることのない店舗が出張販売の形態で販売にくるのだ。
そして、この夏にはフローズンドリンクのお店がやって来ているようで、しかも大川が前に言ってみたいとずっと言っていたお店が来ているのだ。
「そういえばこのお店来てみたいって言ってたな……。」
「そうなんですよ!ここのお店は変わり種とかもあるらしくて……。ちょっと気になってるんです!」
いつもに増して興奮気味の大川に僕は引っ張られてお店へと入る。
どうやらここのお店は2種類のフレーバーを選んでミックスするタイプのフローズンドリンクのお店のようだ。
フレーバーの中には王道の果物系から変わり種のあんみつ風味などといったようなものまで多種多彩なものが揃っている。
お店の看板にも『組合せは100通り以上!』とまで書いてあったのはこう言うことかと実感をした。
「須井くんはどの組み合わせにしますか?私はもう決めましたよ。」
「うーん、一瞬だけ悩ませてほしい……。」
少し悩んだ後で、僕は王道のフルーツ同士のミックス、桃と林檎にした。
大川はというと、抹茶とバナナの組み合わせにしていた。
「大川……抹茶とバナナって合うのか?」
「ケーキなどでは結構相性が良かったりするんですよ。なのでおそらく合うんじゃないかなと思いまして……。」
「なるほどな……。」
僕のように冒険してみるのが怖いタイプはこう言うところでも王道系を頼んでしまうが、大川のようにある程度の料理知識がある人はこう言うところで冒険をしてみるのかもしれない。
「ん!思ったとおり美味しいです!一口いりますか?」
そう言って大川はドリンクの入ったカップのストローをこちらへ向けてくる。
「いいのか?じゃあ、遠慮なく……。」
そう言って飲んだ後で僕はあることに気づいてしまった。
ドリンクのおいしさも感じたが、それよりも重大なことに。
そう、これはいわゆる間接キス状態であると言うことだ。
急に僕はそのことに気づき、恥ずかしくなってくる。
「どうしたんですか?須井くん、顔が赤いですけど……。」
大川は気づいていないのか、それともわざとなのかは分からないがきょとんとした表情でこちらをみている。
「いや……その……あ、いや、なんでもない……。」
僕はこの事実を大川に言うのはどこか違う気がしてそのまま濁してしまった。
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