6話

 —それを使えば、この状況を変えることができるかもしれないな。でも、なんだ?

『発動条件があってね、相手の身体に触れないといけないの。それと、詠唱もあるから難しいと思うんだ』

 —それしか手はないのだろう?なら…


 私は一度、矢桐織を見た。

(奴に意識を奪われている人間がいるのならば、放っておけるわけがない)


 —立ち向かうほか、なし!

『それでこそ、だね!詠唱をする時は私も一緒にするから任せてね』


「どこか決心した様子ですねぇ。ですが、それで勝てると思われては困ります、ね!」


 投げるスピードがますます速くなっていく。

 私に対して明確な殺意を持っていると感じる。

 威力の高いトランプばかりを投げられ、何度も竹刀が手から離れそうになる。

 瞬間、剣を持ったものに囲まれてしまった。


「くははっ、囲まれてしまいましたねぇ。どうするんですか?このままだと貴方…」


 死にますよ?そう言われてゾッとした。

 私が怖がっているのだと分かる。

(足が震えてしまうな…)


「だが、そう簡単に死んでたまるか!」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁー!」


 私は一枚ずつ対峙して倒していった。

 どれも手強くて時間がかかってしまったがな。


「おや、一枚倒し忘れていますよ?ほら!」

「なっ⁈」


 今度こそ斬られると思った。のだが…


粉壁パウダーウォール!」


 何かによって防がれた。


「これは粉、か?」


 私の前に立っている人物が頷いた。


「凛、大丈夫?さっきは助けてくれてありがとう。でも、私も戦えるから」

「怜?逃げろと言っただろう!」

「えぇ、そうね。あの後は逃げたわ。けれどエネルギーを蓄えるためよ。この技は何かを食べてからじゃないと使えないの。それに、友だちが戦っているのに黙って置いていけるわけないわ」


 逆の立場だったらと考えてみた。


「確かに、私も怜を置いて逃げるなどできぬな」

「でしょう?だから私も戻ってきたのよ。貴方の助けをするためにね」

「そうだったのだな。早速、協力して欲しいことがある。良いか?」

「もちろんよ。話を聞かせて?」


 彼女の能力ならば、奴に近づいていけるだろうと思い、作戦をたてた。

 その間に彼女が来た時に出した壁が消えてしまった。


「はぁ、本当に次から次に来て厄介ですねぇ。早く終わらせてしまいましょうか。ジョーカー‼︎」


 トランプの中から、矢桐織と似た紺色の長髪を後ろで束ねていて、目が紫色をした燕尾服の男が出てきた。


「どのような御用でしょうか?」


 男は右手を胸の前に当て、お辞儀をした。


「あの人達を倒してきてください」

御意イエス・マイロード


 瞬間、男が猛スピードで向かってきてガードが出来ていない状態で、掌底を喰らわせてきた。


「がはっ」

「凛っ、ゔっ」


 私達は反動で遠くに飛ばされた。


「くははっ、流石ですね。ジョーカー」

「貴方の意思に従ったまでです」


 私はよろけながら立ち上がった。


「くっ、ジョーカーとは、なんだ?」

「あれ、まだ意識があったんですか…そうですね、どんな姿にも変身できて僕の命令に応えてくれる存在ですよ」

「どんな姿にも、だと?」

「えぇ、ジョーカーなんでもいいので変身してください」


 そして男は怜と同じ黒髪のショートカットで、茶色の目をした女性になった。


「怜?」

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