第2話

「ん…ふぁぁ…」


大きな牛さんのお肉を沢山食べて、眠気が襲ってきた。

ボクは特に眠気に逆らわずに浮いたまま眠りにつこうとすると、鈴宮さんに止められる。


「ち、ちょっと、大丈夫なのは分かったけど流石に無防備じゃない…?」


「ん〜…それなりに強いモンスターなら感知スキルに反応すするので〜、大丈夫ですよ〜…」


眠たいから、語尾が弱々しくなっているけど、そんなことよりもとりあえず寝たい…


「それじゃあ、おやすみなさい〜」


「へ?

あ、ちょっ!?」


んふ〜、やっぱり眠るのは気持ちいい…




――――――


「えぇ…」


困惑の声を出す私の目の前で、無防備に眠る少女…カスミちゃん

確かにカスミちゃんは私が考えているよりも強いのかもしれない。

というよりも強いんだろう。


でも、強いからって心配にならないかって言われたらそんなわけが無いんだよ。

こんな小さな子が万が一にも危なくなる、と考えたら背筋が寒くなる。


「えーっと…とりあえず、心配だから見守っておこうかな…

視聴者の皆はそれで大丈夫?

戦闘あんまり無さそうだけど」


:異議なし

:異議なし!

:むしろゆっくり凛ちゃんとカスミちゃん見れるからばっちこい!

:それにしても、こんな小さい子があんなに強いなんて驚いたなぁ…

:ほんとそれなw

:強すぎて今でも実感湧かねぇもんw

:いやー、戦闘力云々はさておいても、二人とも顔整いすぎじゃね?

:それな?下手なアイドルよりも可愛い

:いや、俺は世界一可愛いと思うね!

:まぁどれだけ可愛いとかの話はおいておいて、とりあえず可愛い、これだけは確か


「ち、ちょっと?

そんなに可愛い可愛い言われると恥ずかしいんだけど?」


いつもはからかわれてばかりで可愛いって連呼されることはほとんど無いから、余計に恥ずかしくなり、自然と私は赤面する。


:いやいや、本当のことを言ってるだけだからね!

:そうそう!とりあえずすっげぇ可愛いのは確かやぞ

:オラァ!視聴者全員での褒め殺し攻撃を喰らえ!w

:可愛い!

:可愛い!

:可愛い!


「〜〜〜〜ッ!!!

そ、そんなことよりも!

カスミちゃん、こんな年齢でどうしてここまで強くなったんだろうね?」


褒められすぎて恥ずかしいため軽く咳払いをしてから話をそらす。

コメント欄では「話しそらしたw」「かわいw」といった物が多数見受けられたが、それでも皆気になっていたようで話はカスミちゃんに対することに変わる。


:まぁ、確かにどうやってこんな強くなったんだ?と言った疑問はある

:それとユニークスキルもなかなか謎だよね

:仮にも七つの大罪のうち、一つの名を冠しているにしてはスキル単純だったし、本人に隠すつもりはなくてもまだ何か効果ありそう

:ま、凛ちゃんが言ってたようにスキルの詮索はNGだよな!

:それはそう、まぁならスキルは置いといてあんなに強いんだからレベル凄い高そうw

:凛ちゃんも1200っていう探索者の中でも上位のはずなんだけど…凛ちゃんで1200って考えると軽く2000はありそうなのが怖い

:えっと、今世界最強って言われてるアメリカで最強の探索者でレベル2500だったよな?

:↑そう、だからもし2000もあるなら日本トップレベルって事だな!


ソロで下層クリア出来ると言われるレベルが1400なので、私はまだソロで下層クリアは厳しいんだよね。

今は1280まで上がってるけど、このレベルの場所だとモンスターの数も多くなるから連戦で体力がもたない


カスミちゃんは正直レベル2000は余裕で超えてると思う。

あのミノタウロスがレベル1500くらいのはずだから、それを瞬殺できるって考えるとまぁそのくらいのレベルはあるよねってところ。


実際今の世界最強が2500レベルって事を考えるとカスミちゃんの実力は異常って言うべきだね。

深層ソロクリア出来るって言われてるレベルが確か2000だったはず…

日本での最強はレベル1700だからカスミちゃんが日本最強?


こんな小さい子が日本最強の可能性あるの…?

当然のように深層で寝てるって言ってたし…

あれ?もしかして私、とんでもない子に会った?


「…起きたらレベル、聞いてみようかな?」


:お、正直ワイらも気になってたんよね

:でも正直怖い

:まぁ、それはそう

:深層モンスターを余裕で瞬殺出来るってだけで相当レベル高いはずだし…

:最低レベル2000って考えると怖いなぁ…

:怖いのと同時に楽しみ!


「まぁ楽しみなのは、分かるかも?」


くすくす、と笑いながら視聴者さんと雑談をして、一時間くらいしたかな?

流石にそろそろ帰らなくてもいいのかな、と思って一度起こすことになった。


「おーい、カスミちゃん?

もう地上は6時だけど、そろそろ帰らなくていいの?

ご両親が心配したりしない?」


このくらいの歳の子だと門限があると思い、大丈夫なのか聞いてみる。

すると、衝撃の返答が帰ってきた。


「んふぁぁ…

ボク、こんなんでも成人してるから〜、問題ないですよ〜」


凄く眠たそうな声で言うため、一瞬理解出来ずにフリーズしてしまう。




――――――


成人しているから大丈夫、そう告げた瞬間に鈴宮さんが固まった。

とうしたんだろう?大丈夫かな?


少し心配そうに鈴宮さんを見つめていると少しした後に動き始めた。


「え、成人してる、?

えっと…嘘つかなくてもいいんだよ?」


む…信用して貰えてないな…?

なら、証明しないと!


「ほら〜、これ見てください〜」


そう言うとボクは探索者カードを取り出す。

これは探索者になる時に絶対に作らないといけないもので、探索者である証明と同時に身分証の役割にもなるカード。

これにはボクの名前、顔写真、年齢が書いてある。

これの年齢は、どうやってるのか知らないけど誕生日になると自然と更新されている。


「………えっと、年上、だったんだ…ですね?」


驚いたような表情になったあと、数拍置いてから話し始める鈴宮さん。

何故か敬語を使い始めたことにボクは少し不思議そうな顔になる。


「敬語、なんて要らないですよ〜?」


「え、年上相手だと敬語を使った方がいいのかな…って思ったんだけど…いいの?」


「はい〜、ボクも敬語やめていいですか〜?」


「あ、うん、それはいいよ!

むしろ仲良くしたいから敬語ない方が嬉しいかな」


仲良くなりたいんだ、なんか、ちょっとだけ嬉しい…

でも、眠たい…


「くぁ…

ありがと〜、ん〜、友達になったので〜、一つだけ、どんな質問でも答えてあげるよ〜?」


ボクは自分で言うのもなんだけど、沢山聞きたいことがあると思うんだよね。

でも、沢山答えるのは、眠たいし面倒だから嫌。

だから、一つだけ答えるつもり


「えっと、特にカスミちゃんから何か聞きたいから友達になろうと思ったわけじゃないよ?」


「ん〜?

それは分かってる〜、嬉しいな〜

でも、ボクが一つだけ答えてあげたい気分なの〜」


あ、鈴宮さん…いや、凛さん、かな。

凛さんが少し呆れたような顔になった。

多分…「マイペースだね…」とでも思っているんだろう。

ボクはマイペースなのだ。


「んー…それじゃあ、レベルとか、聞いてもいい?」


れべる…?

あ、レベルって、あれか。


「えーっと、ごめんね〜?

ここ二年間くらい測ってないの〜」


だからわかんない、と謝ると慌てたように凛さんが


「あ、いや、大丈夫大丈夫!

カスミちゃん以外にも測るのが面倒だから測らないって人もいるしね!

なら、別の質問してもいい?」


別の質問?

なんだろう、と考えながら頷く。


「えっとね、その、浮いてるスキルについて聞いてもいいかな?」


浮いてるのが羨ましいのか、ずいっ!と顔を近付けてまで聞いてくる凛さんに、ボクは少し引きながらも答える。


「あ、えーっとね、ボクのスキルで浮いてるモンスターを倒した後に奪ったスキルだよ〜?

【浮遊】っていうスキルなんだけど、知ってる〜?」


「まって、浮かぶよりももっとヤバいこと聞こえた気がする。

モンスターからスキルを奪った、って言ってた気がするけど…聞き間違い?」


:モンスターから…?

:スキルを奪う…??

:…はぁぁぁぁ!?!?

:え、はぁ!?

:スキルを奪うスキル!?

:何それ!?そんなのあるの!?

:え?は?え?そんなスキル見たことも聞いたこともないんだけど!?

:もしかして、これもユニークスキル!?

:スキルを奪うユニークスキルとかヤバすぎだろ!?

:ユニークスキル何個持ってんの!?

:二個だよな!?流石にもうこれ以上は無いよな!?


「聞き間違いじゃないよ〜?

ほんと〜に〜、モンスターから奪ったスキルなの〜」


「………。

モンスターからスキルを奪うスキルって…はぁ、流石にそろそろ驚き疲れたよ…

スキル名聞いても大丈夫?」


スキル名?

そんなの聞いてどうするんだろう?

まぁ、言ったところで何が変わるわけじゃないし…いっか


「いいよ〜?

スキル名はね〜…


【強欲】


だよ〜

えっと、自分のスキルだけじゃなく、モンスターのスキルまで欲しいって考えること自体が強欲だから、こう言うスキル名になってるらしいの〜」


「…また七つの大罪…

もしかしてユニークスキル、七つの大罪全部あるんじゃないの…?

……まさか七つの大罪のスキルを全部所持してたり…するわけないよね?」


なんか小さい声でぶつぶつと呟いてる凛さんを見ながら、欠伸をしてそのまま眠りにつこうとする。

だけど、寝るのは凛さんによって止められてしまう。


「ちょっ!

一応ダンジョンなんだから寝てばかりはやめておいた方がいいよ!?

いくらカスミちゃんが強いって言ってもここはダンジョン、万が一があるんだよ!」


「むぅ…でも眠たいもん〜…」


こうして話している間にも…ねむたくて…寝そうに…


「ってこら!

言った傍から寝るなーー!!」


「んぇっ?

あ〜、ごめんなさい〜、つい、眠たくて〜」


むぅぅ…寝させてくれてもいいのに…

安全になれば寝ていいのかな…?

もしそうなら…”あれ”すれば安全って認めてくれるかな…?


「安全だなってなったら、寝てもいいの〜?

守ってくれる人でも居れば寝ていい、?」


「まぁ…すっごく強くて絶対に守れるってひとなら、安全になるし寝ていいよ?」


ふっふっふ、言ったね〜?

なら、”あの子”呼ぼうかな〜


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