第12話

俺はゼロスの言葉に信じられないという思いで満ちた。

レイラ姫が暗殺されたというのか?


レイラ姫は私にとって最も大切な人だった。


レイラ姫はどうして暗殺されたのだろうか?


ゼロスは詳細を説明した。


「レイラ姫はドラコニア王朝からエリオン王国に行っていました。彼女はエリオン八世と会って、あなたとの同盟を取り付けようとしていました。エリオン八世は温厚で寛容な人物ですが、敬虔なイリス教徒としても知られる人物です。レイラ姫はあなたをサポートしようとエリオンに向かったのでしょう。その場でどのようなことがあったのかわかりませんが、交渉は決裂したようです。その後、竜人であるレイラ姫を卑怯な手で暗殺したらしいです。全てはあなたと親しくしていたのが原因だそうです」


ゼロスは悲しみと怒りと憐れみという感情で言った。


「それは…俺の…俺のせいなのか」


「カイン王……」


ゼロスは同情の言葉を述べた。


「レイラ姫の遺体はどこにあるんだ?」


私は急いで尋ねた。


「レイラ姫の遺体はエリオン八世によって送り返されました。今、ドラコニアの王城の礼拝堂に安置されています」


ゼロスは答えた。


「そうか……」


涙が止まらなかった。


「カイン王、レイラ姫にお別れを言いましょう。私も同行します」


ゼロスは私に声をかけた。


「ゼロス…ありがとう」


俺は立ち上がって言った。



私とゼロスはドラコニアに向かった。


レイラ姫に会いに。


レイラ姫はドラコニアの王城の礼拝堂に安置されていた。


レイラ姫の遺体を見ると、涙が溢れて止まらなかった。

レイラ姫は美しく眠っていたが、その顔は毒の影響なのか黒くなり苦しみや悲しみが刻まれていた。

レイラ姫はエリオン八世との交渉中に暗殺されたと聞いていたが、その真相は毒をもられ複数人で囲まれ刺殺されたとの事だった。

レイラ姫は私をサポートしようとエリオンに向かったのだろうが、その場でどのようなことがあって殺されてしまったのか分からなかった。

全ては俺と親しくしていたのが原因だったのだろうか?


「レイラ……ごめん……俺は君を守れなかった……」


私はレイラ姫の手を握りながら、悔やんだ。


「カイン王……」


その時、声が聞こえた。


「ドラコニス一世……」


俺は振り返って、ドラコニアの王を見た。


「カイン王が来ると聞いて、迎えにきた」


ドラコニス一世は冷ややかな表情で言った。


「ドラコニス一世。娘さんの遺体を安置してくれて感謝します」


俺は礼儀正しく言った。


「感謝することはない。お前のせいで娘が死んだのだから」


ドラコニス一世は厳しい口調で言った。


「俺のせいで……」


「そうだ。お前のせいで娘が死んだ。お前がイリス教から離脱し、アルベルト帝国やエリオン王国に敵対したからだ。お前が娘と親しくして、彼女を巻き込んだからだ。お前が娘をエリオンに送り込んだからだ」


ドラコニス一世は憤りの言葉を述べた、歴戦の猛者であり冷徹で頑強という彼の目からは涙がこぼれた。


「それは違う……俺はレイラを愛している……俺はレイラを守りたかっただけだ……」


「愛している?守りたかっただけ?お前は娘を利用したに過ぎない。娘を自分の野望の道具にしたに過ぎないだろう。お前はむざむざと娘を殺したんだ」


ドラコニス一世は憎悪表情で言った。


「そんなことはない……俺はレイラを利用なんかしていない……俺はレイラを殺してない……」


俺は否定した。


「では、誰が娘を殺したというのだ?エリオン八世か?奴もまたお前の敵だ。奴がイリス教の敬虔な信者なのは知っていたな?奴は娘もお前と同じ異端者として糾弾したのだ。奴は娘を卑怯な手で暗殺したのだ。そしてミラージュ王国の同盟国になりうる我が国に攻め込もうとしている。我々竜人も武力では負けるつもりも無いが、エリオン王国は兵数が膨大だ。しかも一時的ではあるが、アルベルト帝国とエリオン王国はイリス教の魔王であるお前を倒すまでは停戦するという協定も結ばれておる。後方でのゴーラ平原の戦争が停戦し、ほぼ全ての兵力を使って我々ドラコニア王朝を滅ぼすつもりだろう、そして次はお前たちミラージュ王国をアルベルト帝国が滅ぼすだろう」


ドラコニス一世は苦痛に顔を歪めた。


「エリオン八世……」


「カイン王、お前には二つの選択肢がある」


ドラコニス一世は冷静に言った。


「二つの選択肢……?」


俺は疑問に思って言った。


「一つ目は、お前がイリス教に復帰し、アルベルト帝国やエリオン王国に全面降伏することだ。そうすれば、お前は娘の死に対する罪を償うことができる。そして、お前は娘の遺体を持ち帰ることがでる」


ドラコニス一世は最初の選択肢を示した。


「二つ目は、お前がイリス教から離脱し、アルベルト帝国やエリオン王国に敵対することだ。そうすれば、お前は娘の死に対する罪を背負い続けることになり。そして、お前は娘の遺体を持ち帰ることができん」


ドラコニス一世は次の選択肢を示した。


「どちらを選ぶ?」


ドラコニス一世は私に問いかけた。


俺は迷った。


私はイリス教に復帰し、アルベルト帝国やエリオン王国に降伏すべきだろうか?


それとも、私はイリス教から離脱し、アルベルト帝国やエリオン王国に敵対し続ける?


レイラの遺体を持ち帰りたかった。


レイラの遺体をミラージュ王国に埋葬したかった。


墓に花を添えたかった。


しかし、俺は自分の信じる道を捨てることができなかった。


「俺は、かたきを討つぞ、決して信念は曲げん。レイラの為にも彼女の信念の為にも屈する事は出来ない」


「そうか、ならばお前は俺の敵だ」


凄まじい覇気がドラコニス一世を包む。


ライオット・ドラコニス


レベル 284

剣術   S/S

炎竜術  A/A

竜人強化 A/A

竜変化  S/S


体力回復 極大 魔力回復 極大 竜力回復 極大


「お前の首が無ければ我が国が滅ぶ」


ドラコニス一世の身体が大きく膨れ上がると、強大なドラゴンへと変化したのだった。



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