侍転生、第二王子になったけど王も兄も隣国の傀儡になっていた

モロモロ

第1話

「ぐふぅう」


無数の槍が俺の身体を突き刺す。

俺は、死が迫るのを感じたが、目の前の敵も道連れにするために

天高く振り上げた剣を渾身の力で振り下ろした。


「きええええええええ!!!」


ザシュッ


同時に俺の意識は真っ白な空間に飛んでいた。

どこか懐かしい気持ちさえする。


「やあ、久しぶりだね」


眼の前で、光る球体が俺に話しかけてくる。

20年ぶりだろうか。


俺の名はカズヤ。

20年前に令和からトラックに突っ込まれて死にファンタジー世界へ転生するはずが、どういうわけか戦国の世界転生されたサラリーマンだ。


先程は捨て奸っていう、お家芸ってのでもいうのかね、俺たちの班は全滅しちゃったけどさ、仲間は親分は逃がすために最後まで死力を尽くして戦ったのよ。


まぁ、転生して足軽になった時点で関ケ原で死ぬことは覚悟してたし

マジでSNSもない、誹謗中傷もない、俺のことを尊敬して仲間として固い絆で結ばれた集団で20年間も過ごせた事でかなり人生観変わったわ。


死ぬのは分かってたけど、最後に捨て奸で死ねるなんて嬉しい最後だったね。

そのぐらいみんな良いやつなんだわ。

後に「日新公いろは歌」なんて言って伝わる事になる教育を転生直後から教え込まれたからね。

令和の時代に育った俺からしたら衝撃だったわ。

もちろん足軽としての班の規律も凄かったけどね。

班のみんなも転生出来てっかなぁ。

まぁ転生したら、普通は記憶も無くなるみたいだし、みんなの後世の幸せを祈ってるわ。


「君、おーい…おーい聴こえてる?」


「ん?」


光る球体が俺に話しかけてきてるようだ。


「いやー前回は悪かったね。私が操作ミスっちゃったのよ」


「問題ない」


「だから、普通は記憶引き継いで転生なんて1回が限界なんだけどさ、特別に2回目もしてあげちゃう。今度こそファンタジー世界で」


おお、遂にファンタジー世界か。


「まぁ、お詫びの気持ちでいくつか特典は用意したからさ」


「かたじけない」


「じゃぁ、レッツ転生」


そして、俺は転生した。


6年後。


俺はカインというある小国の第二王子になっていた。

自分の部屋の窓から外を眺めた。

隣国の帝国の旗が風になびいているのが見える。

それは自国の王宮にも掲げられている。

父は王様と呼ばれているが、実際には帝国の傀儡に過ぎない。

帝国に従属することで、平和と繁栄を得たと言っているが、俺はそう思わなかった。

自国の文化や歴史や誇りは、帝国によって徐々に侵食されている。

自国の人々は、帝国の言いなりになって、自分たちの意思や声を失っている。


廊下に出て、城内を歩くと向かいから歩いてくる兄ルシウスを見た。

ルシウスは9歳になったばかりだが、既に数人の貴族の娘を侍らせている。

ルシウスは皇后の子で、皇后は帝国の姫だった。

兄は母親から大事に育てられたが、そのせいで軟弱になった。

そして、女好きで、政治や軍事に興味がない。

兄は父から王位を継ぐことになっているが、俺はそれが不安だった。

兄は帝国の影響を受けすぎていて、自国のことを考えてくれるとは思えなかった。


鬱々とした気持ちで、俺は弟のエリックの部屋へと来た。

エリックは3歳で、カインと同じく第二妃の子だった。

第二妃は侯爵の長女で、自国の名門貴族だった。

弟はまだ幼くて、何も分かっていない。

エリックはカインに懐いていて、よく遊んでくれる。

弟はカインにとって唯一の味方だった。

カインは弟を守りたかった。

弟にも自国の未来を見せたかった。


自分も母親から愛されて育ったが、父や兄からは冷遇されている。

自分は王族としての教育を受けているが、それも形式的なものだった。

自分には何も期待されていないし、何も与えられていない。

自分はただ生きているだけだった。


俺は深く溜息をついた。

「このままではダメだな」

「自国が滅びる前に、何かしなくちゃ」


光る球が言っていた特典とはこの王子の地位なのだろうか?

貴族たちは今の平和を謳歌し、王に媚を売る者たちばかりだ。


我が国の貴族たちの行いを簡単にまとめて話す。

税金や賦役を不当に高く徴収し、農民や商人を苦しめる。

貧しい者や弱者を虐げたり、暴力や脅迫をふるったりする。

権力や金で法や道徳を無視し、自分の欲望のままに振る舞う。

裏切りや陰謀で他の貴族や王族を陥れたり、暗殺したりする。

女性や子供を拉致し奴隷にしたり、売買したり、性的に乱暴したりする。

魔法や呪術を悪用し、人や魔物を実験台にしたり、災厄や疫病を引き起こしたりする。


本当に碌なものではない、その筆頭が父である王なのだから呆れ果てる。

とはいっても、6歳の俺に出来る事は限られている。

一つ、この身分に産まれて良かった事といえば、王城の図書室に自由に出入り出来るし、禁書も観覧出来る。

そもそも、図書室が無人だ。勉学に励もうという気質が無い。堕落した生活をおくる者が多すぎる。


また、金だけはかなり自由に使えた。

剣術の師範ゴルディアと魔法の師匠モーフィアと一流の人間を金で雇えた。

先々代の時代に使えていたという彼らはかなり修練を積んで、戦場で何度も死線をくぐり抜けた猛者だったが、年老いて隠居している所を俺が金を積んで引っ張り出していた。

戦場で功績を得て先々代の時代に貴族になった2人は、ゴルディアは元伯爵、モーフィアは元子爵と今は隠居しているとはいえ、王族でもなければ引っ張り出してはこれなかったろう。


彼らは父の第二王子である俺に対して、最初はかなり距離のある教えというか、まるで腫れ物を触るような態度だった。

まぁ、それもそうだろう、もし俺が癇癪でも起こせば自分の子や孫たち、または領地の民にその癇癪の余波が飛びかねない。実際に第一王子の教師陣の一部では、兄の癇癪で領地がとんでもない事になってしまった例を貴族たちは良く知っていたからな。


俺は、二人に最大限の敬意を持って接し、また訓練もぶっ倒れるまでお願いしている。気づけばベットの中というのは訓練の常だ。来年からはエリックにも俺と一緒に師匠達に訓練してもらうつもりだ。


もちろん俺はお約束の「アイテムボックス」や「空間収納」など、特典探しに余念は無かったが、ストレージ的な機能はなかった。

師匠にも聞いたが、そんな話は聞いたことも無いとの事だった。


とはいえ、俺には鑑定の能力だけはあったので、特典としては充分だろう。

師匠に鑑定に関しても聞いたが、鑑定どころか、レベルという概念も無いらしい。

ただ、魔物や人を殺した際に力が湧く事は認識しているらしい。


ちなみに自分自身を鑑定した結果は


カイン・ミラージュ


レベル 1

剣術   F/S

水魔法  G/A

幻影魔法 G/A


経験値補正 特大

体力回復極小 気力回復極小 魔力回復極小


と自分の成長の方針が分かるだけでも嬉しい。

今のところレベルは1だが、まだ6歳だ。なんとでもなるだろう。

なによりも、大将となるとすれば、人の才覚が分かるというのは何よりだ。


ちなみに師範は剣術がAまで成長していた。

師匠も各種魔法が得意だったが水魔法Aとなっていた。

老齢の為に、レベルは高くとも、基盤となる体力や気力魔力は全盛期より下がっているのだろうが、彼らの経験を学べるのは非常にありがたい。


基本的に師範の修行は素振りと気力の向上を主とするものだった。


「魔物を倒すのが、気力の向上には一番の近道ですが、儂の剣友の中でもそればかりに頼る男たちは、どうしても気の使い方で一歩劣るのじゃ。それが戦場では命になる事しかと心得よ。気を練り上げ乾坤一擲じゃ」


毎日のように、城内を走りこみ、素振りをし、座禅を組み気を練り込む。

師範との鍛錬は、心身ともに練り上げられるような日々だった。



また師匠との魔法の鍛錬は座学と実践を重視した。

分厚い魔法書を読み、師匠の解説を聞く。

火・水・風・土を基本とし光と闇。そして回復・支援や精霊魔法・召喚。

炎・氷・雷など様々な魔法があるようだ。

もしかしたら空間魔法などもあるのかもしれない。


「カインよ。まずは自分の内なる魔力を感じるのじゃ。そして信じる。練り上げる。充分に練り上がった魔力を一瞬で解き放て」


訓練に終わりは無かった、俺が納得するまで師匠はいつまでも付き合ってくれた。





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