探し物が見つからない

Mr.Six

第1話 探し物

 俺はかれこれ1時間以上探している。


「あれ~? さっきまであったのにどこにいったんだよ」


いつも布団のそばに置いてあったのに、


しばらくしたらすぐになくなる。


なんでこう無くなってしまうんだろう。


携帯って……


起きてから、携帯でLINEをチェック。


彼女からの『おはよう』や、


上司からのプライベートにくるLINEを確認して、


あくびをしながら、携帯を持ってトイレに行く。


朝のルーティンだ。


トイレで軽く用を足してから、うがいをしてから朝食をとる。


起床時の口の中には細菌やらばい菌がたくさんあるとニュースでしていたからな。


朝食が終われば、食器を片付けて歯磨き。


勿論、携帯は欠かさない。


歯磨きをしながら、毎日ニュースを確認。


「ふ~ん、ドルが160円ね」


どうも最近は円安が進んでいるらしい。


全く、こっちの身にもなってくれよ。


ただでさえ物価が上がって困っているのに、


旅行にも気軽に行けなくなったよ。


俺はざっとニュースを見終わると、


うがいをして、着替えをする。


着替えをするときは必ず音楽をかける。


朝の気分を上げるにはちょうどいいからな。


「今日は、J-Popかな」


昔懐かしの日本の曲は今聞いてもいい曲ばかりだ。


そして、着替えが終わり、髪の毛を整えて、髭をそる。


音楽はずっとかけてると、携帯の充電がなくなるから着替えが終われば切ることにしている。


「さてと、トイレもご飯も着替えも済ませたし、ちょっと時間があるな」


そう、俺は余裕をもって行動する人間なのだ。


ギリギリにやってたら何かあった時に対応できないからな。


俺はテレビの電源を付けて、リビングで横になる。


携帯を握りしめて彼女からの返信を待つ。


別に何か見たいわけじゃないから、


たまたま電源を付けた時のままのお笑い番組を見ることにした。


番組はお笑い番組から芸人の旅番組に変わる。


かれこれ30分ぐらい見ていただろうか。


「よし、そろそろ動き始めるか」


今日は彼女とのデート。


出る前にもう一度鏡でチェックをする。


「今日も問題なさそうだな、あとは連絡してそろそろ出るよって伝えるか」


そう思って携帯で連絡しようとする。


……


ない!


あれ? さっきまであったよな?


どうして?


俺はトイレを探した。


トイレにはない。


だよな、そのあと音楽聞くために携帯触ったもんな。


じゃあ、着替えしたときか?


自分の部屋に行き、くまなく探すが見当たらない。


自分の部屋でもないか。


まさか、ポケットか!


俺はズボンのポケットに手を突っ込んだ。


無い。


そんなことをもう1時間以上もしている。


俺は一度立ち止まり、冷静に今日の出来事を順序通りに整理した。


まず起きてLINEを見たな、間違いない。


そのあと食事をして、歯磨きするときにニュースを見たんだよな。


そして、着替えをするときに音楽を聴いて、


髪型をセットして、


リビングでお笑い番組を見てそして……


その先がわからなくなっている。


記憶が、欠落してるのか?


そんなことはないだろう、ついさっきの出来事だぞ!


全く人間の脳とは本当に当てにならんな。


ん?


ちょっと待てよ。


俺が、握りしめてるこれはなんだ?


やけに手に馴染んでる。


視線を向けるとそこには


「なんだよ、持ってるし」


本当、当てにならんな。

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