第17話 家族

 私……私……!

 正直、この1年間本当に家族として認められているのか不安だった。


 本当にお母さんとお父さんが亡くなったという記憶が無い。顔も上手く思い出せないくらいに無いんだ。


 だからこそ、グラディウスさんやラミリスさんが本当の両親にしか思えなかった。

 でも、不安だった。私はよそ者。乱入者。


 そんな私の誕生日を祝ってくれて、私の感情は溢れ出してしまった。この感情は安堵なのか、感動なのか、喜びなのか。そんなのは分からない。


 でも、分かることは、今の私は幸せものなんだということだけだった。

 家族として祝ってくれたみんなに私は、どう感謝してもしれなかった。


 私はみんなが……大好きなんだ。


 ──────


 俺はリューネをこっちこっち、と手招きをし、席に付かせた。そして俺は後ろからタスキをかけてあげる。


「ほんじつの……しゅやく?」


「そうだ。今日はリューネが主役だよ」


 そうしてみんな席に着いた。


「少し時間早いけど……今日はご馳走よ。みんなでリューネを祝いましょ」


「リューネ様! お誕生日おめでとうですよ!」


「リューネ。おめでとう」


 リューネは一人一人顔を見ていく。そして、お父さんがニコッ、と笑顔を見せた時、リューネは小さく震えていた。

 そして最後。


「リューネ。5歳のお誕生日おめでとう。これからも……よろしくね」


 俺が隣でそう伝えると、リューネの我慢していた物が爆発した。


「みんな……ありがとう……みんな……」


 泣きじゃくる彼女の背中を擦りながら「うんうん」と相槌をうつ。


「私……本当に家族として……認められてるのかなって……ずっと思ってて……でも……でも……!」


 静かにリューネの話を聞くお母さんやお父さん。エイミーはもらい泣きしそうになってた。


「こうやって……お祝いしてくれて……こういうの初めだから……私……私……!」


 その時、初めて彼女の言葉を遮るようにお父さんが声を出した。


「娘の誕生日を祝わない親がいるかバカ」


「うふふ。そうよ」


「リューネざま……もぢろんでず……よ……」


 俺まで泣きそうだ。リューネがここまで悩んでいたんて思ってもいなかった。でも、これで少しは晴れたかな。


「……うん! みんな……ありがとうございます」


「じゃあ……冷めちゃうし食べますか!」


「「「「「いただきます!!」」」」」


 それから、バルコット家でリューネの誕生日パーティーは一日中続いた。


 ──────


 パーティーもひと通り終わり、俺は部屋でリューネと二人でいた。


「プレゼント準備できなくてごめんね」


「ううん、いいの。こうやってお祝いしてくれただけで私はすごく嬉しかった」


 彼女は本当に5歳なのか。そう思わせるくらいにこの世界の成長速度は早い。俺がただただ転生者だから早いだけだと思っていたが、そうでは無いみたいだった。


「じゃあ……来年は好きな物買ってあげるよ」


「ほんと!? じゃあ……私も。お祝いくらいはしてあげるわ」


「なんかプレゼントくれるんじゃないのかよ!」


「私がお祝いしてあげるんだから喜びなさいよ」


 いつものリューネ。何も変わらないリューネだ。今日のサプライズは大成功だ。


 彼女の本当の気持ちも知ることが出来たし、解決することも出来た。我ながらいいサプライズだったんじゃないか?


「なんか……疲れちゃった。今日はもう寝ようかな」


「そうね。私も寝るわ」


「おやすみ」


「うん。おやすみなさい。今日は……ありがとね」


「何回言うんだよそれ」


 幸せ。こっちの世界に来てから幸せなことばかりだ。生前の俺を忘れるくらいに。


 でも、全てが全て上手くいく訳もなく。その時は静かに迫っていた。


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