第17話 暴力

防犯カメラの映像には音は入っていなかった。逐次上書きしていく方式で、クガ事件のあった日付の1日後まで記録が残っていたので最も古い記録から読み込んでいく。

店の主人らしき人物は既に置換されていたらしく、夜は店内で座り込み、明るくなると出ていくので店は開店休業状態だった。

クガ事件の3日後の13時、店のガラスが突然砕けちり、いくつかの壁掛け時計が粉をふく。銃撃だ。武装した兵士が自動小銃を店の外に向けながら入ってくる。体長190cm近い大男で、よく見ると先ほど駅前で雑踏を作ってた兵士の特徴がある。これはある種のスナッフフィルムだ。

口の動きから恐らく警告を叫んでおり、銃はマズルフラッシュを繰り返し発している。だが、銃口を向けられた体長160cmほどの肥満漢は平然とし、両手を広げ、手の平を下に向けて「落ち着け」のジェスチャーをしながら歩み寄ってくる。兵士は壁に追い詰められ、左手で肩を、右手で銃を掴まれた。銃口は最後まで光を発していたが、肥満漢が出血することはなく、もぎ取られた銃は画面から消えた。

画面外の店の奥へ190cmの軍人が全身の力で抵抗しているのに、160cmの太った中年に片手で引き摺られていく様は異様だ。画面外に消えて5分くらいすると、2人はのそのそと店の奥から出てきて、駅前へ向かった。

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