第26話



 「嘘…でしょ…」



 ものすごい音が周囲に響き、地震のような振動が、公園の敷地内を襲う。


 的は外していた。


 万が一のことがあってはならない。


 驚かせるとは言え、怪我をさせようもんならサリエルにシゴキ倒される。


 だからかなり離れた位置に焦点を当てていた。


 なんなら、5mくらいは離して。



 拳を前に突き出すと同時に、迸る魔力。


 サンダルの紐がちぎれ、凹む地面。


 全身の筋肉が弾むのがわかった。


 重心を下げた拍子に空気が動き、草木が蹌踉めく。



 ザッ



 瞬間的に沸騰する熱。


 足元からよじ登ってくるエネルギーが、瞬く間に全身を駆け疾る。


 拳の先で解放された魔力は、自分の意識の遥か後方まで滑らかに飛び出していった。


 最小の動きの中にわずかな“回転”を加えただけだった。


 それがどうだ。


 魔力が放たれたと同時に周囲に衝撃波が伝播し、ケンスケたちの足が浮く。


 フワッと体ごと持ち上げられた後、尻餅をついていた。


 その後だ。


 公園の柵が粉々に吹き飛び、その先にある海面が、ミサイルを撃ち込んだように巨大な水飛沫を上げたのは。



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