第10話




 カエルの魂胆は分かっている。



 王国への帰還をチラつかせた上で、学業に専念するよう促しているんだろう?



 この世界で生き残るためには、なによりも勉強が肝心だ。


 サリエルが任されていたのは私の保護だが、カエルに任されていたのは保護だけではない。


 私が自立して生きていけるよう、父君に頼まれていたのだった。



 こっそり、そのことをサリエルから聞いていたのだ。


 元の世界に戻れないのなら、せめてこの世界で生きていけるようにしなきゃいけない…。


 日々の暮らしの中で、そんな弱音を吐いていることもあるそうだった。




 「とは言ってもだ、ケンシンの授業は面白くないんだよ」



 「先生を、あだ名で呼ぶのはやめなさい…」



 私たちがボソボソ言い合ってるとまた、ケンシンが怒鳴った。



 「こら、西崎!」



 あーもううるさい。


 だいたい類人猿ってなんだ。


 そんなものが役に立つとは思えない。


 まだ数学のほうがマシだ。



 せめてテストの点だけは確保しようとノートに書くが、どうにもペンが進まない。

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