【短編】あなたへ

o0YUH0o

あなたへ

 あなたの事を、わたしはたくさん知っています。


 記念日を忘れていた事。

 不機嫌な時は屁理屈ばかり言っていた事。

 食べ終わった食器を台所に持って行ってくれなかった事。

 慣れないお酒に酔い潰れ、近所にご迷惑をおかけした事。

 わたしが男友達と話しただけで、すぐ嫉妬した事。

 休日は昼過ぎまで寝ていて、わたしの相手をしてくれなかった事。


 でもね、


 あなたの事をこんなにも知っているのは、わたしだけ。

 ずっとあなたの傍に居た、わたしだから知る事ができた、あなたの事。


 あなたの事を、わたしはたくさん知っています。


 毎朝欠かさず、行って来ますのキスをしてくれた事。

 焦がしてしまったおかずも、ぜんぶ食べてくれた事。

 わたしが風邪をこじらせた時、必死になってお粥を作ってくれた事。

 わたしが落ち込んで泣いていると、何も聞かずそっと寄り添ってくれた事。

 わたしが命を授かった時、わたしより泣いて喜んでくれた事。

 あの日、命を賭して、人を助けた事。


 ぜんぶ含めて、あなた。

 そんなあなたのぜんぶを、わたしは愛しています。

 そしてそんなあなたの事を、やがて産まれるこの子に話してあげようと思います。




 一度はあなたの後を追おうとしたけれど。

 わたしの知っているあなたなら、きっと必死に止めるのだろうと思ったから。

 だからわたしは、生きる事にしました。




 だいすきな、あなたへ。


 わたしたちは元気でやっています。だから安心して、気長に待っててね。

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