story5 死の価値観



ピーッピーッ

何だこの音...。

聞いたこと、あるよう...な。


きゃああああああああ‼

ピーポーピーポー...。

ピ―――――ッ


誰かの叫び声。

辺りに響く救急車のサイレン。

死ぬまぎわの音。


嫌だ嫌だ嫌だ‼

全身の衝撃と感覚がなくなったあのとき。

もう無理だと誰もから思われたあの場所。

はっきりと覚えている失われたものたち。

「いやああああああああああああっ‼」

これ以上考えるのが脳が破裂するくらい苦しくて。

いつの間にか叫びだしていた。

「っ...うるさ。目の前に人がいるくらいわからないの?」

うわっ...!聞かれてたんだ‼

てか、今気づいたけどここは...?

真っ白の壁と天井に、わたしは容器のようなものに入れられている。

他の人もそうだった。

「ここは......?」

彼の言うことを無視して問いかける。

「ここはねー。君が規則を守らなかったせいで、捨てなきゃいけないんだよー。

本当に規則くらい守ったらどうなの?こっちが困るんだよね」

「規則...?」

意味が分からないことで半ギレされて戸惑うことしかできない。

「無自覚なら別にいい。君はそんな乱暴そうじゃないし。

ってかー。過去を調べたとき、そんな大したことで死んでないじゃーん(笑)

まあ事実本当っしょ?だから教えなくても"未来は一緒"」

ピキッ

「大したこと...?どこが?」

「えー。また君?そんな話しかけないでくんな、」

「あなたにとっての"死ぬ"のとらえ方は?」

「はぁ...?」

「"死ぬ"。それが大したことと?痛み悲しみ苦しみ憎み。

その種類豊かな感情があなたにはないのかもしれない。

だからって、お前の"死"のとらえを他人に押し付けないでもらえる...?」

彼女は静かで爆発的に怒っていた。

家族、友人、そして大切なものたち。

それを侮辱されたような気がして、とても耐えきれなかったのだ。

「あーあー。うるさいうるさい。もうすぐ死ぬんだからねー。楽になれるよー」

そう言って彼は耳をふさぐ。

いやなんのなぐさめにもなってないんですけど。

「んま最後だけ。ここの仕組みをしえてあげるよー」

と、彼は耳をふさぎながら話し出した。

「まずねー。ここは転生者の記憶処理が不可能になった場合の

ゴミ処理場みたいなもんかなー」

は...?

人間をましてやゴミ扱いにした...?

「でー。転生者ごと切り刻んで、精神エネルギーだけを吸い取って

また新しい人間を作るのさ」

「その人の許可すら得ないで!?」

彼はそのことに対して何の反応もしなかった。

「ちょ眠いから別室で寝てくるわー。あ、いちよう脱出とか考えても意味ないから。

その容器どんな超人やら神様でも開けれないスーパ機械でできてるからねー」

そう言って彼は部屋の扉を閉じ、どこかへと向かってしまった。

ヘンテコがいなくなったおかげで、すこし心にゆとりができた。

さっき人間を作る、って言ってたよね...。

それって私自身の記憶もなくなるってことかな...。

「それだけは嫌だ...!」

何がダメだったんだろう。

あのおじさんと話したこと?

私自身の運が悪かっただけ?

でももう目の前には容器ごと切り刻む刃物が見える。

何がおかしかったの!?

目の前に一瞬で切り刻まれた人のエネルギーがキラキラと光る。

誰か教えてよ‼

考えるだけじゃわたしの怒りは収まらなかった。

ここの......ここの......


「ルールで人を殺めるなあああああああああああああああ」


胸を破裂させるような勢いでわたしは心から叫んだ。

そして丁度刃物が触れる瞬間。


ビィ―――ッ

その機械は汚い音を出して止まった。


"エラー...エラー...エネルギー取得及び記憶処理不可能..."

「警報。機械ノ故障ガ確認サレタ。警報。機械ノ故障ガ確認サレタ...」

エラー!?どうして丁度...!

想像の衝撃が来ないと思ったら、機械は何事もなかったかのように止まってた。

ってことは......。

今‼

バキンッ

わたしを閉じ込めていた容器は、屑となって消え散った。


今すぐレバーを下げなきゃ‼

ダッダッ

部屋を豪快に駆ける足音が響いた。

足に導かれるようにして、わたしはレバーを見つけた。

最初の場所ではないが、そんなこと考えている暇があったと思う?

わたしは思いっきりレバーを下げた。

バンッ‼




"転生者ノ逃走ガ確認...転生者ノ逃走ガ確認サレタ..."




コレヨリ、転生者ノ全面追跡ヲ開始スル。





















ビュン‼


「うっ......」

さっきの何もないような匂いから一変し、木々の匂いが辺りに広がっている。

自然の匂い過ぎて逆に鼻に来る......。

わたしは本当の本当のレバーを下げた。

だからここに転生してるというわけ...。

「え」

なんでわたし、"さっきの匂い"を覚えてるの?

しかも、死ぬ前の激痛だって覚えている。

転生したら、記憶を失うんじゃ?

もしかして、わたし......。




《 死ぬ前の記憶を持ったまま転生しちゃったのぉおお!? 》





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