詩『書くの止めたときのこと』

くずき憂人

『書くの止めたときのこと』

手を止めたら書けなくなったよ。

脚を止めたら歩けなくなったよ。

口を止めたら語れなくなったよ。

体を止めたら動けなくなったよ。


頭を止めたら何もできなくなったよ。


何か大切なことを続けることは

とても幸せで大切なことだと知ったよ。


それでもふとした瞬間に

「あっ、あまり好きじゃなかったんだな」

って思って止めてしまうんだよ。


太陽みたいに熱く明るい光が、

静かな月を讃えるようになったよ。


一度全部止めてしまって、

幸せや楽しさを考えて、

ずっとしていたいことを考えて、

ある日考えることも止めたら、

何もできなくなったよ。


起きて、働いて、ご飯食べて、

そして眠ることだけは止めなかったよ。

少なくとも生き続けたいみたいだったよ。


うっすらとした心地よさと

漠然とした不安と

少しの淋しさ


心を支配するほどの感情なんて何もなくて、

風が身体をすり抜けるような日々を過ごしたよ。


それでも生きることは辞めてないよ。

辞めると止めるは違うんだよ。


「続きから始める」だけは、

ずっと止めないでおこうと思うよ。


だって、たまにあるんだ。

ずっと前に止めたことをまた始めたくなる瞬間が。


そのときにね。

夢中になった頃の気持ちが、

あのときとは少しだけ違う表情で、

昔の友人みたいに話しかけてくれるんだよ。


「止めるまでよろしく」って伝えるよ。

あくびしたから眠気が覚めたよ。

長く眠ると頭が痛くなるよ。


虚無感の中に、1日の終わりに、

少しだけ好きに手を伸ばしてみるんだ。

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詩『書くの止めたときのこと』 くずき憂人 @kuzuki_yuto

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