圧倒的な才能

 都内一等地の、超高層ビル。

 ダンジョン配信者事務所「ギフテッド」が最上階に入っていた。


 金髪の女性が、宝星ぴかりの配信を見ている。


「ぴかりちゃん……この子、面白いわね」

「ええ……湊様は才能があります」

「あら、もう『様』づけで呼ぶのね……!」

「えっ……ごめんなさい!!」


 紅い髪の姫騎士、ぴかりは顔を赤くした。


「ふふふ。いいのよ。でも、この事務所は恋愛禁止だからね」

「はい……」


 ぴかりは少し落ち込んだ。

 

「ぴかりちゃん、あなたはこの事務所のトップ配信者なのよ。世界中のファンがぴかりちゃんに期待しているわ」

「わかってます」

「ならいいわ。で、ぴかりちゃんは謎の剣士、大葉湊くんをどう思う?」

「湊様は……将来、この事務所の、いえ、世界トップクラスの配信者になれるポテンシャルがあります」

「あたしも同じ意見よ。彼から圧倒的な才能を感じる。あたしが考えていること、わかるわね?」


 女性がワインをグラスに注いだ。


「はい、社長。湊様を……事務所にスカウトするのですね?」

「さすがぴかりちゃんね。契約金は大葉くんの言い値で構わないわ。大葉くんが手に入るなら、いくら出してもいい」

「わかりました……」


 ★


 なんで俺がネットニュースなんかに……?


 切り抜き動画はどんどん増えているし、つぶやきアプリYのトレンド1位に「♯謎の剣士、大葉湊」がきている。


 休み時間は隣のクラスからも生徒が来て、動画を取られまくるし、チャットアプリライインQRコードを無理やり交換させられるし。


 怒涛の勢いで、クラスメイトが話しかけてくる。


「大葉、これからきっと配信者事務所からスカウトくるぞ?」

「なんだよ、スカウトって……」

「バズりまくってるから、きっとスカウトが大量に来るって!」

「マジか……」


(スカウトはちょっと困る……俺はソロで、ダンジョン探索を楽しみたいのに)

 

 そんなこんなで、昼休みになる。


「おい、あれって……?」

「マジかよ! 本物のぴかりんじゃん!」


 教室がざわつく。


「湊様、やっと見つけました!」

 

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