ダンジョンで姫騎士を助けてバスる

「へーこれがダンジョンか」

 

 放課後、俺は自転車で渋谷ダンジョンへ来た。

 10年前に突如出現したらしい。

 ダンジョンは難易度順に、SランクからFランクに分類されている。

 渋谷ダンジョンは、Sランクダンジョン。最難関ダンジョンだ。


 ……だったのだが。


「おーい! 逃げないでくれー!」


 ダンジョンと言えば、モンスターを倒してレベルアップする。

 それがダンジョン探索の醍醐味のはず……


「また逃げられた……」


 俺の強さを見て、モンスターがどんどん逃げていく。


「楽しいダンジョンライフを送りたいのに……」


 2階層目に行くと、


「きゃああああああ!」


 姫騎士がオーク軍団から逃げていた。


「む、オークが30匹か」


 オークは群れで人を襲う習性がある。


「誰か助けてー!」

 

 姫騎士が俺のほうへ走ってきた。

 とりあえず、俺はオーク軍団の前に出た。


「助けてくれますか……?」

「いいよ。ちょうど逃げないモンスターを探していた」


 俺はアイテムボックスから神剣デュランダルを取り出す。

 

「え? そのスキルは……?」


 アイテムボックスが珍しいのか、姫騎士が驚いている。

 俺がデュランダルを振り上げると、


「ぐわあおおおおおおん!」


 オーク軍団がすごい速さで逃げて行った。


「ありゃ、やっと戦えると思ったのに……」


 俺はがっかりした。


「ありがとうございます!」


 姫騎士が頭を下げてきた。

 

「俺は何もしてないけど」

「すっごくお強いのですね」

「ありがとう。ところで、あれは何です?」


 俺は宙に浮いている黒い物体を指差した。


「あれは配信用ドローンです」

「てことは、配信中だったんだね。邪魔して悪い」

「何かお礼を——」

「大したことないし別にいいよ。じゃあね!」


 深層に行けば戦ってくれるモンスターもいるかもしれない。

 俺はさらに奥に進むことにした。


 ——俺はこの時、気づかなかった。すでにバズりまくっていたことを。


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