不思議探偵スリア&シロ

Li'l Hatter

探偵コンビ

みらーいみらいのとあるネオ道頓堀に、『不思議探偵事務所』を営むウサギ型ロボットの『シロ所長』と、その助手である少女型アンドロイドの『スリア』がいました。スリアは、シロ所長とともに数々の謎を解きながら、日々暮らしているのです。


「ふわ……おはよう、スリア〜」


シロ所長は、大きなあくびをしながら起きました。


「おはようございます! シロ組長! 今日もいい一日になりそうっすね!」


スリアは立ったまま両手をひざにつけて挨拶をしました。


「ああ、そうやな……って、ワイは組長ちゃうで! 所長や、所長〜」

「おっと、すみません! 以後気をつけるっす!」

「ハハッ、まぁええわ。朝ご飯にしようか」

「へいっ! お供いたします!」


シロ所長とスリアは朝食の『ナットまん🔩』を食べつつ、ホログラムテレビをつけます。


「スリア。もうそろそろ君がここに来て一年が経つな」


シロ所長は言いました。


「そうっすね……。でも、こんなに楽しい一年は初めてですよ!」


スリアは感慨深げに言います。

実は彼女、『元ハート組の構成員』だったのです。しかし、生みの親である『ハートの組長』の横暴な振る舞いに嫌気がさして脱走し、そして偶然行き着いた先がこの『不思議探偵事務所』でした。


「ハハハッ、それはよかったな〜。これからもよろしゅう頼むで!」

「うっす! こちらこそよろしくお願いします!」


そう言ってシロ所長とスリアは笑顔でグータッチしました。スリアとシロ所長が談笑していると、玄関のチャイムが鳴ります。


「はーい! どちらさまですかー?」


スリアがドアを開けると、そこには一人の女性型アンドロイドの姿がありました。何やら困ったような表情をしています。


「初めまして。私の名前は、『公爵令嬢』といいますわ」

「ご丁寧にどうもです。自分は不思議探偵の助手を担当しております、スリアと申します」

「ワイはここの所長を務めるシロです」


一人と一匹は揃って頭を下げました。


「それで、どういったご用件でしょうか?」


スリアが聞くと、公爵令嬢は答えます。


「実は私、『不思議探偵事務所』に依頼したいことがあって来ましたの」

「ふむ……ちなみにお伺いしたいのですが、どのような依頼内容なのでしょうか?」


シロ所長の問いに、彼女は答えます。


「ええ。実は、私の愛猫あいびょうが最近行方不明でして……。しかも、どこを探しても見つからないのです」

「なるほど……」


シロ所長は顎に手を当てて考え込みます。


「よし! スリア、この依頼受けるで。その猫の捜索をしてみよう!」

「了解っす! それで、公爵令嬢さん。その愛猫の容姿を教えてもらえますか?」


スリアが聞くと、彼女は鞄から写真を取り出します。そこには、可愛らしい『茶虎猫の姿』が映っていました。


「この子の名前は、『チェシア君』といいます。イタズラ好きだけど、とても賢くて可愛らしい子ですの」

「ふむ……。では、ワイたちはそのチェシア君を見つけ出せるように尽力いたします」


シロ所長は答えました。公爵令嬢はとても嬉しそうに微笑みます。


こうして、スリアとシロ所長の『チェシアの捜索』が幕を開けたのです。

シロ所長とスリアは、チェシアの写真を手掛かりに捜索を始めました。まずは猫が行きそうな場所を徹底的に調べます。

そして、次は聞き込み調査です。街のロボや宇宙人たちに聞き込みをしますが、なかなか有力な情報は得られません。それでも二人は諦めずに粘り強く頑張り続けました。


〜数時間後〜


「ごくごく……。なかなか見つからないっすね」


昼過ぎのネオとんぼりリバーウォークにて、スリアはベンチに座って『こめ油』を飲みながら言いました。隣にいるシロ所長も頷きます……『ごま油』を飲みながら。


「せやな。でも、諦めるのはまだ早いで。ワイらは絶対にチェシア君を見つけような!」

「へいっ!」


スリアはやる気に満ちた表情で返事をしました。それから二人はネオとんぼりリバーウォークを出て、再び街の中を捜索していたときのことです。


「おや? あの猫はもしかして……」


シロ所長は呟きました。視線の先には、『一匹の茶虎模様の猫』がいました。


「あっ!あれはきっと、公爵令嬢さんの愛猫、『チェシア君』ですよ!」

「しゃあ! はよ追いかけるで!」

「へいっ!」


チェシアの後を追って、二人は走り続けました。やがて、チェシアは人気のない路地裏に駆け込みます。


「ここに入って行ったみたいやな」

「そのようっすね」


二人は顔を見合わせ頷くと、路地裏へと足を踏み入れました。そして、奥へと進むと……。そこにはチェシアがいました。


「やぁ、チェシア君。いい子だからそのままじっとしといてや〜」


シロ所長が優しく話しかけますが、チェシアは怯えた様子で後ずさりをしていきます。


「怖がらなくても大丈夫っすよ。ほら、おいで」


スリアが手招きすると、チェシアは小さく鳴きました。そして、ゆっくりと彼女に近付いた直後のことです。

どこからともなく、数人の『チンピラ星人』が現れました。その数およそ10人くらいでしょうか……手には『タモ網』を持っています。


「よぉ、お二人さん。その猫をこっちに渡してくれねぇか?」


チンピラ星人の1人が言いました。


「なぜ?」


スリアが聞き返すと、チンピラ星人は答えます。


「いやぁ、実はその猫にはちょっとした因縁があってよぉ……うちの事務所に忍び込んだ挙句、『大事な書類に足跡をつけられて台無しにしやがったんだよ!』」


チンピラ星人はそう言って懐から『書類』を取り出し、スリアたちに突きつけました。そこには確かに『猫の足跡?』がついています。


「……」


シロ所長は無言でスリアと目を合わせました。


「どうした? さぁ、猫を早く渡せ。さもないと……」


チンピラ星人が言いかけた瞬間……。スリアは口を開きました。


「あれ〜? アンタの突きつけてる書類、よーく見てみると『足跡にくっきりと爪痕』も残っているんすね〜」

「は、はぁ? それがどうしたってんだよ……?」


スリアの言葉にチンピラ星人は動揺します。


「シラを切っても無駄やで! そもそも猫は狩りをするとき以外は『爪をしまって生活する生き物』や! だから仮に、書類の上を歩いたとしても足跡は残るが、爪痕なんかは一切つかへん!」

「「「「「「「ギクっっ!?」」」」」」」


シロ所長の指摘にチンピラ星人たちは思わず声が出てしまいました。そんな彼に対して、スリアは追い討ちをかけます。


「それをわざわざ『犬の足跡(爪痕)』で細工してまで、猫を捕まえようとするなんてね〜、お宅ら一体なにもんだ?」


スリアは問い詰めました。


「ちっ! バレちゃ仕方ねえ…… 。俺たちは、ネオ道頓堀を中心に活動する半グレ組織『反猫同盟』の構成員だ! 猫アレルギー持ちのボスの命令で、この街に生息する猫を一匹の残らず駆逐しろとのことだ!」

「はぁ……。あのな、お前らが今やるべきことは猫の駆逐やのうて、さっさと病院へ連れて行くようにボスを説得せなあかんやろが」

「へい、シロ組長の意見に同感っす」


スリアとシロ所長は呆れながら言いました。


「うるせぇ! ウチのボスはな……大の病院嫌いなんだよぉぉーーっ!!」


チンピラ星人の1人は叫びながら、ビーム刀を取り出しスリアに襲い掛かります。


「おっと!……子供かよ!」


スリアはそれを軽く避けました。


「シロ所長! チェシア君を安全なとこへお願いします!」

「わかった!」


シロ所長は、チェシアを抱きかかえて走っていきました。


「さて……探偵の底力、見せてやりますか」


スリアが拳を構えると、チンピラ星人たちは一斉に襲いかかってきました。しかし、彼女はそれらの攻撃を次々と受け流してからカウンターの一撃を叩き込みます。そのあまりの速さに彼らは怯んでしまいました。そして、最後に……


「おらぁぁーーっ!!」


── バシッッ!!


回し蹴りを放ち、全員を撃沈させました。


「ふぅ……。お掃除の後の一服はうめぇ〜」


スリアは『駄菓子ラムネシガレット』を食べてほっと一息つきました。その後、チェシアを抱きかかえたシロ所長が走って戻ってきました。


「スリア〜、警察署に連絡しといたで〜!」

「でかしたっす! シロ組長!……って、ここに戻って来たんすか!?」


スリアは驚いた表情で言いました。


「すまん、お前の実力は他の誰よりも知ってるんやが……どうしても心配でな」

「そうだったんですか……。ご心配をおかけして申し訳ねぇっす!」


スリアは申し訳なさそうな顔で立ったまま両手をひざにつけて頭を下げました。


「ハハッ、スリアが無事ならそれでええ。

それはそうと、数人のチンピラ相手に圧勝するとは、流石ウチの助手やな〜!」

「にゃ〜ん♪(吾輩の次にやるねぇ)」

「へへっ! お褒めいただき光栄っすよ〜!」


と、一人と二匹は笑顔でグータッチを交わします。


〜数分後〜


「ご協力感謝します! それでは、私たちはこれで!」


シロ所長の110番で駆けつけた警察ロボは敬礼をし、チンピラ星人たちを連行していきました。


「よし、ひとまず落着っすね!」

「せやな。あとはこのチェシア君を飼い主の公爵令嬢さんのところに連れて帰れば、今回の依頼は完了やな」

「そうっすね! では、早速事務所へ帰りましょう!」

「おう!」

「うにゃ〜♪」


こうして、スリアとシロ所長はチェシアを連れて事務所へと戻って行きました。その後、無事に公爵令嬢の元へと送り届けられたチェシアは、飼い主に抱き上げられて嬉しそうに鳴いていましたとさ。


……一方その頃、『反猫同盟』のアジトでは。


──ドンドンドン!! ドンドン!!


「ネオ大阪府警や! はよ玄関のドア開けんかい! ヴォケェ!」


ネオ大阪府警のマル暴ロボが事務所の玄関ドアを激しく叩いています。


「いやだぁぁーー!! 今開けたら『反猫同盟』の存続に関わるんだもん!!」


事務所の中では、『反猫同盟』のボスと構成員たちは頑なに拒否し続けていましたが、痺れを切らしたマル暴ロボが事務所の玄関ドアをハンマーで叩き壊したたため、あっさりと捕縛されたそうな。


おしまい🐾



☆おまけ【キャラプロフィール】


名前:スリア

年齢:2歳(外見は15歳)

種族:少女型アンドロイド

製作者:ハートの組長(サイボーグ女性)

身長:160cm

髪型:外ハネボブ(金髪)

職業:不思議探偵事務所

趣味:VR格闘技、ファッション、ホバーボード

好物:こめ油、ラムネシガレット、所長の料理

【概要】

本作の主人公。不思議探偵事務所の助手を務める少女型アンドロイド。服装はストリート系を着用している。元々は極道組織『ハート組』に所属していたが、スリアの生みの親であるハートの組長の横暴な振る舞いに嫌気がさして脱走する。その際に、偶然通りかかった『不思議探偵事務所』に助けを求めたことがきっかけで、現在はそこで探偵助手を務めている。性格は明るく活発であり、周りを和ませる力がある。普段は事務所に訪れる依頼者たちのトラブルを解決するために奮闘している。また戦闘スタイルは、『VR格闘技』で習得した技を得意としており、護身用に実戦使用している。


名前:シロ

年齢:35歳

種族:ウサギ型ロボット

製作者:ルイス博士(海外出張中)

身長:50cm

職業:不思議探偵事務所

趣味:謎解き、推理小説、料理

好物:ごま油、ナット、野菜

【概要】

もう1人の主人公。不思議探偵事務所の所長を務めるうさぎ型ロボット。服装はインバネスコートを着用。普段はスリアの所長として、彼女と一緒に依頼を解決している。性格は冷静沈着で頭脳明晰。トラブルが起きたらすぐに推理をすることで有名である。一方で運動能力は低いため、戦闘能力は基本的にない(※ただし逃げ足だけは早い)。また料理が得意であり、自作の料理などをスリアによく振る舞う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

不思議探偵スリア&シロ Li'l Hatter @lilhatter

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ