第191話 堕天使vs悪魔の結末



 息が上がっているアルバドムにはもう余裕は完全に消え、怒りで震えながらヨミを睨んでいた。


「ふざけるな、僕の邪魔をするな! 何が目的だ! 王の地位か!?」


「あら? 今になって聞く?」


 目的は最初に聞くのが普通だが、アルバドムはヨミ達に興味を持っていなかったという理由から聞かれなかったのだ。

 ヨミには答えてあげる義理はないけど、面白い反応を見せてくれそうだったので答えてあげるのだった。




「別に王の地位には興味はないし、それから正義の為でもないわ。ただの暇潰しよ」




「は? ひ、暇潰しだと……?」


「えぇ、私は……いえ、プレイヤー達はゲームの為にこの世界へ遊びに来ているわ。楽しみ方は人によって違うけど、私は王城を落としたら面白いかなと思って、やっているわ」


「……頭がおかしいんじゃないのか?」


「うひひ、普通よ。ただ、周りに迷惑を掛けようが気にしないだけで」


 隅でジュンが小さな声でボソッと「普通は王城を落とそうとは言わないけどな」とぼやいていたが、ヨミの耳に届いていたので、視線を向けずに大量のナイフを投げたのだった。悲鳴を上げるジュンだったが、視線を向けられることはなかった。


「……お前は魔王様の覇王道で邪魔になる者だ。ここで絶対に消す!!」


「魔王? もしかして、貴方は魔王の部下?」


「そうだ。四天王の部下でしかないがな」


「へぇ……」


 面白い情報ね。転生前はレベル100のアルデュールよりも強かった筈。つまり、上司の四天王は更にレベルが高いと言えるわね。


「その四天王は誰?」


「言うかよ。…………もう、話は終わりだ! 時間を稼げたお陰で完成した!」


 アルバドムは時間稼ぎの為に、話を延ばしていた。体内で魔力を練り上げ、現在で使える最強の魔法を使う。




「死ね! 暗黒魔法『ヘルトライアル・ニュークリア』ぁぁぁぁぁ!!」




 暗黒魔法の最上である魔法、『ヘルブラック・フレア』、『ヘルブラック・ブリザード』、『ヘルブラック・スパーク』の3つを束ね合わせることで発動出来るのが、『ヘルトライアル・ニュークリア』だ。

 アルバドムにとっての最強である魔法だが、悪魔族だった頃と違って、人間の身体では狭い部屋で使うと巻き込まれて死ぬ可能性がある。しかし、魔王様の邪魔になると判断して、命を賭けたのだ。


「いいわ、まともに受けたらやられるでしょうね。でもねーーーー」


 ヨミはまだ見せていない能力がある。




「『黄泉写祀よみうつし』」




 右の片翼に浮かんでいる大量の瞳が光り出した瞬間に、ノータイムで同じ『ヘルトライアル・ニュークリア』が発射された。


「なぁっ!?」


「弱体化した貴方と、強化された私…………どっちが勝つかは言わなくてもわかるよね?」


「うぁ、く、クソがぁぁぁぁぁーーーー!!」


 『黄泉写祀よみうつし』は1日に3回しか使えないが、相手が使った放射系の魔法、スキルを真似ることが出来る。この能力は『堕天王ルシファー』の発動中だけで、自らの強化と相手の弱体化も同時に行われているから、相手は相殺も出来ずに…………


「ギャァァァァァ!!」


「楽しかったわ。バイバイ」


 アルバドムは|抗(あらが)うことも出来ず、真似された『ヘルトライアル・ニュークリア』によって消し飛ばされるのだったーーーー







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